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世紀の恋 ②


ラファエル殿下の生国トールは、銀河連邦加盟惑星間、最強の宇宙軍・宇宙艦隊組織を誇る軍事惑星である。



城主のサイン入りで現在の状況を、戦争勝者大王への特殊回線にて送付したところすぐさま反応があった。


「大王閣下の息子である恋人が貴女に是非会いたい」と、それも通常ありえない手法〜


一般的な音声や文字の通信ではない、発狂しそうなほど発信者側に莫大な銀河通信料金が要求されるというホログラム映像通信で直接、城主にコンタクトを取って来たという、これまた異常事態である。


本体「城」には不文律としてその国のトップしか通信でも面会でも機会が権利として与えられない、許されていない特殊施設である。


「それを逆手にとってこうした訳なのねーーー」

城主は呆れ果ててフゥとため息をつく。


確かに惑星トール大王リーズ陛下が主体となってメインに交渉の場に立てば公布の規律に違反しない。


ただその脇に偶然、たまたま、映像の端に、撮影時の不具合にて大王以外の人物がちょろっとミステイクで写り込んでしまっただけである。


文字でも音声でも、もし為政者それ以外からであるならば完全無視されて終了、以前にもそういったことが多数あった。


城には拒否する権限がある。

絶対的主導権は常に城、城主にあるのだ。



つまりラファエル王子は、息子に激甘な父を知恵を働かせて口説き落としたのである。



「ーーーーヤレヤレよねぇ!

どうやら自ら情熱的に、多忙極まる父を強引に説得したって事?!」


 

しかも連絡後、幾らも経たない内の、大人の隙を見事に突くこの見事な行動力と規約違反スレスレの作戦は、なかなかに凄いとも思うのだ。



城主は迅速な対応はいかにも20歳の初々しい恋する若者といった風情、真っ直ぐで素直な王子の性質に強く好感を持った。


「まぁ一本!!という事で今回だけは特別に見逃してあげる事にしましょうか」



現在惑星トールの王家、大王の孫は存在しない。


息子や娘には、誰も子をなした者はいなかった。


なぜ直系の3代目を一人も授かる事が出来ないのかの理由はわからない。


ここまで医療技術、科学が発展した時代においてこれは異常事態である。


血が濃すぎるせいなのか?

宇宙派兵で”宇宙線”を浴びすぎ、蓄積量が他の王家住人よりも多いというせいなのか?


ーーー種族としての衰退期に入っているという証明なのか〜



そういった、やむにやまれぬ事情が王家に存在していた。


だからこそ、収監された年若い姫君に新しい生命が宿っているとわかると、今までの処分、人間以下の扱いから180度処遇が転換した。


血を注ぐ後継者をどうあっても得ることが不可能だった大王側としては


「何がなんでも彼女が欲しい!」



ーーーーしかし「そうはさせじ!!」


末の王子・ラファエル殿下の異母兄弟姉妹達。


父親、現トール大王が婚姻を結ぶ数多の夫人達、姻戚外戚関係。


フレイヤの夫となる継承権順で言ったら最末端の、正直モノの数ではなかった王子。


大勢の異母達が産んだ兄弟・姉妹間で壮絶な権力闘争ーーー

”死闘”、バトルが今後行われるか、それは誰の目にも火を見るよりも明らか。


この先どの様に惑星トールの末の王子、及び、亡国フレイ第5王女と、まだこの世に産まれてもいない胎児。


ーーーお腹に宿る、銀河最強軍事惑星と謳われるトール王家の玉座を得る未来の正当な後継者であるベビー。


以後、後継者を巡り、どれ程の新たな争乱が起きるかは正直想像に難くない。



フレイヤ姫とラファエル王子、彼らの恋愛は銀河中を驚かせた「世紀の恋」〜


それも誰にも一切知られずに、密かに事情を知る関係者だけで交わされたというロミオとジュリエット的極秘の関係、秘密の恋だった。


 

惑星トール王国による惑星フレイ王国への突然の奇襲攻撃ーーーー


実質銀河最強と言わしめるトール宇宙軍は驚くべき事に新技術ワームホールを自在に使い偵察軍、間髪を容れず宇宙艦隊を転送し、富める王国、惑星フレイに攻め入った。


大きな星間戦争が勃発。


しかも間が悪い事に惑星フレイの最も精鋭とされる優秀な空挺部隊の艦隊は、流刑〜

ワープ航法を肉体における後遺症の危険を犯し使用しまくったとしても三日の辺境に、王宮における政治闘争に敗北し左遷。


政争に勝利した王都を守るフレイ軍実力は、多くは外戚子弟による親衛隊レベル、そんな彼らが激突するは散々銀河のあちらこちらで死線を潜り抜けて来た、言ってみれば叩き上げ、練度を上げた最強の軍隊である。


しかも天才と他惑星で山ほど陰口を叩かれているトール大王自ら戦略構想を練ったらしき作戦を、彼の国最高の英雄と謳われる気心の知れたスレイプニルが実際の戦術の総指揮を執ったのである。


そんな有り得ない、すわ恐ろしい組み合わせで最新型宇宙艦隊をズラリ揃えた総攻撃ではひとたまりも無かった。

 

というか、実力差がありすぎて、戦いにもならなかったろう。


 

王家末姫フレイヤは若干20歳という女性だったが父王と共に、姫を艦長と仰ぐ忠実な部下と共に戦闘艦の指揮を執り、王宮の防衛戦にも積極的に参加。


そして「とある事情」で、自ら囮となって唯1艦のみにて圧倒的な実力差を知りつつ襲いくるトール軍大艦隊に立ち向かって激闘した。


僅かたった2日ーーーー

銀河でも有数の古都、連綿と永きに渡る栄光の歴史を持つ文化都市惑星、古式ゆかしい王家は消滅、敗戦。


風雲急を告げる母国の窮状を聞き、それでも三日で辺境地よりからくも駆けつけたフレイ軍精鋭艦隊は、そのまま戦う事すら出来ずにトール軍による武装解除ののち拘束。


突如仕掛けられた急襲により惨めに攻め滅ぼされたフレイ王家の中、戦闘後皮肉な事に、第一線で戦い哀れに撃沈され拿捕されたこの末姫だけが生き残った。




姫は戦闘終結後、トール軍に捕らえられた後、反逆者、殺人者だと軍事法廷で厳しく糾弾された。

 

結果は、有罪。


本来は見せしめの為、銀河ライブ中継による「公開処刑」の身の上だった。

 


しかしこの動乱は、出だしの、そもそも最初から謎めいている。


それぞれの格式と伝統の有名王家には、古より”それなりに”交流があるのだ。


まるで、遠い親戚同士の様な血の濃い、言ってみれば双子に似た両王家と流布されていた。


ーーーー全く理由がわからない。


「どうして?」と。



ーーーしかもである。


各王家には「末子」として悲劇的戦争を避ける絆となれる王子と姫が、丁度良い政略結婚の駒として実に扱いやすい適齢期年頃の子どもとしている。


なぜ彼らをローコストな戦略の道具にしなかったのか?


誰が考えてもその方が明らかにイメージが良く、おまけに資金も労力も悪い方に掛からないのである。



共に末の王女、王子だった彼らは将来を堅く約束した熱い恋人同士、ならば余計に統治者としては楽で、都合が良いはずである。


姫君の意思表示は公に伝えられていず推察するしかないが〜少なくとも夫になる筈の美男子の王子はフレイヤ姫に夢中。


つまり時系列順に言えば、最初から戦争は避けられない憎悪で緊迫した状態、その陰で純愛が公にされず密やかに生まれ育っていた事になる。


また何故、フレイ軍精鋭部隊がトール軍急襲直前になって、自殺行為的にそれほど遠い辺境地への追放が決定されたのか?


なおこの精鋭部隊は、原型は戦死のフレイ国王と直接の血縁関係を持つ実弟が、一から天塩にかけて育て上げたスペシャリスト集団である。


宮廷社交嫌いでも知られたこの王弟殿下は、遠き日に反乱鎮圧遠征中、廃棄されたコロニー謎の大爆発事故に巻き込まれて旗艦船ごと蒸発、逝去している。


現在の精鋭空挺軍は、偶然体調不良で医療船にて休養中だった優秀な副官(幼馴染の女性)が、亡き上官の意志を汲み、自分と同じくたまたま外周に展開し爆発に巻き込まれず残存した部下を必死にまとめ上げ新たに育てた増強した部隊である。


 

銀河連邦加盟惑星各自は、この突如起こった惑星間の戦争について当然激しい非難を表明する。


銀河を股にかける最強の報道集団と自負するマスメディア、電脳ジャーナルもこの理不尽な戦闘に異議を唱え、批判と追及を恐れず負けてはいなかった。


 

惑星国家間における絶対のルールである「平和協定」、その他違反〜


数えきれぬ程の条約破りだという、公式批難声明をおこなった。


彼らの熱いジャーナリズム魂が、人海戦術で行った王女開放運動は、各界の人々を動かした。


また父王に溺愛されている末の王子、王女との恋に落ちたラファエル殿下が必死でフレイヤ姫の命の処遇について父王に助命嘆願を行った。


 

こうした様々な方面からの運動が実を結ぶ。



銀河を揺るがした公開処刑が撤廃〜

回避出来た際、草の根運動に参加した人々の歓声は 計り知れないものだったという。



そんな背景の状況下で。

惑星フレイ王国、いにしえから連綿と継承されて来た王家ただ1人の生き残り。


末の王女様は、ジャパン極秘収容施設「城」へと護送されて来たのである。




「旗印は困るのですよ」


〜類稀な優秀な頭脳と俊敏な行動様式から (ウォルフ)と渾名された男〜



陥落作戦を計画されたとされるトール軍・最高軍事参謀長官 ロームルスは、城主に顔色ひとつ変えず、にべもなくそう語った。


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