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フレイヤ王女の考察 ①

 

その日の訓練での仕事をひとくぎりつけた後、信繁は改めてフレイヤ王女に関する再生カードで読んだ履歴を頭の中で反芻してみる。


「今後の交渉における、何か重大なヒントがあるかもしれないよなぁ」


 

『彼女との最初の面会はなるべく今日中に済ませて、対処療法的に子龍らと対策を練った方がいいだろう、やっぱり』


なにしろプロが総出で挑んだにもかかわらず、誰ひとり説得に成功しなかったというのは実際、相当な事だと思うのだ。


ーーー自分だけでは到底手におえない気がした。

 


惑星フレイ王家・第5王女フレイヤ姫。


フレイヤ姫は兄弟姉妹の中でも極めて活発、ジャパンの古い言い回しで言うところの「じゃじゃ馬」「おてんば姫」。


父母の必死の「おしとやかに」〜の願いもむなしく自ら「王立宇宙軍 幼年学校」に進学。

 

長じては王立宇宙軍の中でも特に精鋭無比、何もかもが過激だと定評のある空挺団にぶっちぎりの優等な成績で採用される。


当然、姫君自らも豊富な宇宙戦闘艦や飛行艇・航空機の搭乗、指揮、操縦経験のキャリアを持っている。


それで父王から卒業後の祝いの品として、姫専用に新造された王家の紋章が堂々ペイントされた、小型戦闘宇宙艦も生国の宇宙空港に整備されていたという。


記録チップには、実際の艦のホログラム映像付きで、他にも在りし日の鑑の性能等も詳細が添付されていた。


「凄いな」

頭の中で図表を再現させ、ついヒューッと口笛を吹く。


信繁も現在そっち方面の資格試験の猛勉強中だからリアルにわかるのだ、彼女の与えられた鑑のポテンシャルが。


確かに巨象のような巨大戦艦と比べたら色々性能は軽いのだが、その分機動力が半端なく、というよりもよくこのサイズにここまでの能力を詰め込めたなぁというか、鳥類で言えば猛禽類、それも高速で飛行可能な(ハヤブサ)だ。


実際、鷹匠である子龍のオオタカの訓練飛行を見たことがあるが、本当にびっくりする。


オオタカは近くで見ると意外に細身で小さく、シュッとしている猛禽類だ。


だが放物線を描き一息に飛び立ったのち、重力から自由に身を翻し、軽々とひらりひらりと風を切り凄まじい速度でおそれ知らずに飛行する姿の美しさは、一度見たら忘れられない。


彼女の艦長として操舵する小型艦はきっとそんな風にトール軍のデカ物の大型艦を翻弄したと、頭の中で引き比べて思うのだ。


そんなこんなで、全く色々な意味で信繁から見ても驚くべき事だった。


資料の行間をじっくり考えれば考える程、フレイヤ姫の人となりを強くイメージ出来、相当誇り高い人物だと感じた。




城主から見せられた細かな内容の資料には、実際の王都攻略戦の情景や臨場感溢れる当時の戦乱の現場の様子。


主観ではない、状況の時系列順、俯瞰的科学的検証が余す所なく克明に記載されている。



それによるとトール軍が誇る銀河最強の宇宙艦隊〜戦闘艦に今にも王都が攻め落とされそうな時。


フレイ側王立宇宙軍精鋭の空挺団、団長と隊長は一旦退却、作戦を練り直す為に撃墜されずに残った戦闘艦を結集させ、全艦成層圏に撤退を命じたのだ。


フレイヤ王女は自らの艦を持つ、小さいながらも足の速い戦闘艦の新人艦長だった。


首都防衛の為 王都守備・艦長として王都上空で最前線で指揮を執っていた。


当時、艦に動力源のエネルギー燃料も、武器である弾薬、砲弾も申し分ない程残存していた。


だからそのまま命令通り撤退し、新たに首都である王都、宮殿を守護するために体制を整え再び出撃するか?


又は最悪、王族として他惑星にそのまま亡命するか?


いかなる選択肢の可能性も選べる立場、充分に余力を残した状況だった。


いずれも彼女の1存で出来る状態、しかしそんな撤退の途中で思わぬ出来事に遭遇する。


王宮近くの幼年学校校庭に運悪く逃げ遅れ、恐怖で怯えて固まっている大勢の小さな生徒達、声限り励ます教師達の一団がいることを彼女は艦内モニタースクリーンで知ったのだ。


艦搭載の「目」〜人体生命反応の探知機にひっかかったのだ。 


続々とトール軍敵艦隊が集結しつつ進行するという、フレイ側にしてみたら圧倒的不利、最悪の、恐怖の陣形の下にその学校施設はあった。



「止めろっっ!!」

 

「お前が行くことは無い!」


 

「どうしてですか?

私が時間を稼ぎに行きます!


微弱ながら盾に位なれるでしょう


私は王家の人間です。

 

今まで永らくお世話になりました!!」



フレイヤ王女はその通信を最後に、空挺団団長や隊長の必死の制止をも振り切って、ただ1艦のみで艦首をヒラリ反転させ、王家の人間の尊い職務を全うする。



確かに小さいとは言え最新鋭の美しいピカピカの、しかも一際目立つ王家の紋章が横腹に麗々しく輝く新造戦闘艦だった。


当然一気にトール宇宙軍の嵐のような容赦ない弾幕、雨あられの集中砲火を受けた。 


その後、王女はモニター映像で下界の状況を正確に確認後、小さな戦闘艦で有りながら実に勇敢に、本当に新人とは思えぬ度胸で果敢に相対してゆく。


血のような紅蓮の炎をそこかしこに吹き上げる、もくもくと炎上する王都。


煮えたぎり赤く黒く燃える上空を、ぎっしり埋め尽くす巨大な艦ばかりの大艦隊に一切怯むこと無く、囮としての自分の役割を果たすべく立ち向かった。


「敵ながら天晴れ 見上げたものだ』」

 

トール側の某名艦長、歴戦の闘将が実際に語ったとされる記録。

彼女から受けた印象が、そのように記載されていた。 



フレイヤ王女の乗船する戦闘艦は、雲霞ウンカのように押し寄せる巨大戦闘艦相手に、巧みな操舵で応戦〜善戦。


最大の目的だった事柄、生徒及び教師が逃げるに充分な時間を稼ぐ。


積載していたエネルギーを使いはたし、備蓄の弾薬・砲弾の全弾全てを打ちつくし、有能なクルー達と共に知略の限り奮闘した。


そしてーーーとうとうそれも終わりを迎える。

 

矢尽き刀折れた、ズタズタの状態で撃墜された。


しかし命と引き替えに救助しようと試みた、教師と幼年学校生徒の子ども達は皆無事に駆け足で安全な避難所まで逃げ切る事が出来た。


引率の大人や年長の生徒により、安全なシェルターに誘導され全員無事避難完了した。


王女が助けた彼ら、幼年学校の生徒達、または彼等を保護しようと奮闘した大人達は、明らかに自分達の盾になって自らが犠牲に散っていった王女の戦艦を、外部カメラから転送された、シェルター内部のモニターにて見送った。 


真っ赤な燃え盛る炎に包まれ、それでも最後の最後まで住民が誰も住んでいない市街地外れの彼方を終焉の地に選び操舵。


激しい火炎と煙を吹き上げ役目を果たし墜落していくフレイヤ王女の艦の最後。



全員 見届ける目をーーー

 

溢れ零れる涙でいっぱいにして敬礼したという。



拿捕された後も、フレイヤ王女は自らに最後まで付き従い辛くも生き残った乗船クルーの生命を助けることに、その後も全力で抗い達成させる。


交渉として、自身の公開処刑を条件に粘りに粘り、艦長として部下の命を助ける事を最終的に勝ち取ったのである。


そういった経緯で惑星フレイ 第5王女フレイヤ王女は銀河中に放映される〜


”ライブ中継による「公開処刑」” に決定したのだ。




ところがーーーーその頃から、予想外、大人が思わぬことが起き始める。


銀河を又にかけて活動する硬派マスメディア、電脳ジャーナル本部に、一際小さな読者からのレターメールがポツポツと、届き始めたのだ。



一通一通はメッセージは極々短いものの、それこそあっという間に膨大な数に及んだ。


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