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恋愛の神様 ③


武闘派の隊員達は〜


『はーー何でこんな生粋の『王子様』みたいな奴がよりにもよって、バリバリの体育会系の特殊部隊班にいるんだよ〜!』


(まっっマジで御曹司だけどさコイツは確かに)

ブーブー心の中で毒づく。



『ここで無いセレブだらけの所に行けよゴラァ』


毎度の事とはいえガクーーッと脱力しそうである。


神様はどうしてこうも不公平なんだ!

つい僻まずにいられないじゃないかっー!!


隊員らが『恋の意見』を聞こうと側によると、ほんの仄かに信繁お気に入りのジャパン産・蜜柑の花の清々しい香りがした。


ーーー生憎、何の品種かまでは、わからなかったが



彼らの気配を敏感に察した信繁は少し長くなった前髪の間からジロリと剣呑に視線で容赦なく侵入者を威嚇した。

 

びしっっっ、言葉より先


びびびびびと一瞬で空気が凍りつく


信繁の本気の冷ややかな眼差しだけで殺されるかと震える。




『ヒーーーーーーーー!!』


普段は悪戯っぽくクルクル動く、本当に優しげな人なつっこい茶色の目がハーフリムのフレーム越しに胡散臭げに見上げて睨む。


信繁の目がスゥッと『俺の邪魔をするな』

スローモーションかの如く、ゆっくり細められた。


迫力満点オーラ全開、完全に戦闘態勢モードである。


コールドケースとなった家族全員を失った強盗殺人事件後の、高校生時の信繁のアダナは手負いの虎だった。


現在は敵対側からは「悪魔」「グール」


これぞ優しい家猫が虎に変貌した瞬間だ。






「何?」






『コッワ〜〜〜〜〜〜〜……!!』



ひぃぃぃぃぃぃいぃイイイイ〜〜!!



全員思わず後ずさりして全力疾走全面退避〜



ドビューーーン!!

撤退したい気分に襲われたがひたすら耐え抜く。


ここで引き下がる訳には行かない。



「なるほどねーーー……」


信繁はふ〜んと事情を全て聞くと、急に雰囲気が劇的に柔らかに変わる。


先程の人食い虎かと怯えた、ほとばしるおぞましい暗く異様なオーラは今や微塵も無い。


と、すらり長い腕をおもむろに組む。


何をやっても羨ましくなるほど所作がキラキラで美しく決まっている。

 

嫌みが無いところが逆に凄い、実に天晴れだと男達は思わずボヤッと見惚れる。



『やっぱりどっかにいる神様は依怙贔屓しすぎだ!』


ーーーいや居ないかも?!



ふぬぅぅぅぅ、その場の隊員達全員もれなく醜い嫉妬の嵐、心で泣いた。


なのに

なのになのになのに!!


ーーーー当の信繁はつれなくこうぶった切るのだ。



「今は俺はそんなことに興味はないぜ?」


フンとぷいっ〜ッッ、あさっての方角にそっぽを向くではないかッッ!!



『ぅっコノヤロ〜〜〜!!』


許すまじ。

しばいたろか?


クッソどついたるねん……と言う言葉が喉元に出かかった、が〜


今自分達が目の前にしている信繁という男は高校生の時代、全ジャパン学生連 某武道、部を3年連続チャンピオンに堂々導いた伝説の強豪校の中核選手、男子キャプテンであった。


やさぐれし時代の喧嘩三昧の逸話は、ちょろっと聞いただけでガクブルで恐ろしすぎる。


スポーツでも実践でも任侠道を極めし信繁を相手に、堂々勝てる気がするメンバーは誰もいない。


〜ぶっ飛ばそうにも、ヒヤヒヤ命が惜しかったから必死に耐える。


だからーーーーこう思うことにした。



『フフッきょーの事は大人だからさ?一応勘弁したる!』


『覚えてろ信繁っ!』


『ふっふっふっふ〜

なーに大勢対一人だなんて卑怯な勝負を紳士な俺達は先送りしただけさ!

 

良かったなっっ、お前を見ているギャラリー前で無様な負けっぷり〜

信繁も幻滅されたくないだろう?』



所謂”酸っぱい葡萄”ーーー

心の中で全員が全員、まるでハンコでペタペタ押したかの似たような事を呟く。


 

特殊部隊精鋭、誉れ高き「信繁班」を率いるリーダー

しかも現職場においての特別武術教師〜


今や100名以上の名だたるつよつよ優秀な弟子を持つ師範、れっきとした流派支部長・正規資格の肩書き付き。


正直ピラミッド最高頂点に立つ信繁にとって、この程度の自分達の人数における負荷など子どものお遊戯会。


しかも作戦におけるテロリスト殲滅現場での、彼のおそろしいまでの武闘派ぶりを知らないメンバーは少なくともここには居なかった。



「まぁまぁそんな事言わず!信繁君〜〜〜!」

 

アルカイックスマイルを見せながらズリズリにじり寄る同僚達

 

そうーーーここで圧に怯みウマウマ逃げられる訳にはいかない。


すささささ……!

決して何処かに立ち去らないよう人海戦術でグルリ四方退路を断った。


本能的な『発想』は、流石戦闘集団の隊員達である。

本気度を察した信繁はひょいと肩をすくめる。


「〜見りゃあわかるだろ、仕事と勉強で手一杯なんだよ」  


信繁は立ち上がらず気配を察し、シッシと軽く手を振り五月蠅そうに言った。


「そんな事言わずに〜〜〜!」


ーーーだから最後の究極の必殺技〜〜

「秘技・泣き落とし」を発動する。


彼への最も有効的と思われる絶妙な伝統的効果戦法に賭けたのだ。



隊員達は両手を握りしめ摺り合わせ、全員一斉にウルウルと耀くびっしょり雨に濡れた子犬のような目で訴える。


なんてったって、テキは正義の味方!!

日の本一のモノノフ、真田丸で有名な武将・真田幸村の本名は、真田信繁だ。


信繁は勇者の名を冠する男、弱き者に対する正統派絶対的ヒーローなのだから間違いなく見捨てるはずも無い


まぁ少々情けなくエゲツナイが仕方が無い、しょうが無いだろう。

最早プライドなんかくそ食らえだ。

 



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