姉妹達の想い
コロニー都市D-01宰相の3人の娘達。
指折りの美しき姉妹は、”どうした訳か”ーーー
誰も、政治の道に進む事も、また、父の仲間である名門家・有名派閥議員子息からの「熱烈なプロポーズ」も、総て自分から断った。
独身女性垂涎の貴公子からの、華やかで素晴らしき求婚。
何故かこれら一切、頑として受ける事は無かったのだ。
「あれ程の名門家のお嬢様なのにーーー!?」
「それにだ、優れた美女の彼女達ならすぐさま議員としても当選確実だのに?」
「うむーーーお嬢様達は皆残らず、特に若者層に絶大な人気があるんだ」
「大きな票田は堅いのに、ぁあ勿体ない事よのぉーーー!!」
しかしーー如何なる、どんな「甘い誘い」にも3姉妹の結束は固く、申し合わせたかに誰1人として頸を縦に振らなかったのである。
〜誰もその理由はわからない〜
皆「どうしてなのだろうか??」と首を傾げるばかり。
ウィンストンの行方不明後、世間で最も「後継者として相応しき者」として、多大な関心を持って有望視されていた”長子”である「長女」
彼女は、ライフワークとして、医学の道を選択したのだ。
そして「夫」にはーーー同窓生の医師を選ぶ。
彼と結ばれ、現在、温かで笑いに包まれた幸せな結婚生活を送っているとの事である。
夫となった彼は、子どもの痛ましい外傷を専門とする医学博士。
ウィンストンの姉〜彼女自身も。
幼い子ども達の異常体験や恐怖体験から来るPTSD(精神的外傷)を研究する精神科医の道を歩んでいる。
「心」を守る存在〜コロニーD-01第1人者として、守護神として。
彼等を見えない精神的暴力から守り、力の限り生涯闘うことを決めたのだった。
目下、小さな患者や〜その保護者、兄弟姉妹からの絶大な支持と尊敬を受け日々精力的に忙しく活躍している。
「次女」 ウィンストンの妹は、新進気鋭服飾デザイナーとして人気を博し、コロニー新青年国王時代の輝ける寵児となる。
次女の提案する生活スタイルやアパレルに国内の、コロニーの若者は夢中。
そしていまや、コロニー外部である他惑星、大国のセレブ達も
「この斬新さが興味深い!」
熱視線を送っている。
歌が大好きだった「三女」は芸術ーーー声楽の道に邁進している。
オペラ歌手として、奇跡の超絶技法を持つ「コロラトゥーラ ソプラノ」として
三女は住み慣れた故郷ーーーー
コロニーD-01に留まらず活動拠点を他に移し銀河連邦加盟惑星内で華々しく華麗に活躍中である。
彼女が……
「モーツァルト『魔笛』〜夜の女王のアリア〜」にて大成功を収めたのは記憶に新しい。
地球の歴史ある、巨大オペラ劇場での三女の公演。
全ての”斬新なデザイン”を、次女が経営するデザイン事務所が視覚・音響素材、舞台美術、衣装等を全て1から全部手がけた。
彼女達姉妹が心血を注いで作り上げた舞台は評判が評判を呼び、かの国で大喝采を受ける。
その功績と芸術性を認められ、銀河連邦本部より、文化・芸術部門における「銀河最優秀賞」を姉妹は授与された。
莫大な 今後の芸術探求への助成金ーーーー賞金が贈られる。
3姉妹は、共同で教育の支援団体を立ち上げる。
長女は自身の、医療精神分野における大きな賞を受賞した、論文の懸賞金を。
2人の姉妹は新しく得た賞金を元手に。
そして〜
仲のよい姉妹達は「魔笛」収益金、その経費以外〜を
「全額コロニーで教育を受けられない少年少女達への奨学金の為の基金として充てます」
「電脳ジャーナル」配信記事内〜 話題の3姉妹インタビューにて発表。
団体名は、いまだに生死不明ーーー
「ブラックホールに飲み込まれた」と”噂”の、行方知れずの愛する「弟」、最愛の優しい「兄」を偲び、「ウィンストン奨学金」と名命した。
しかし実は、過去
”弟”〜あるいは”兄”の身に「何が起こったのか?」を、彼女ら姉妹は、総てを知っていたのである。
最愛の彼が、自らを犠牲にして母や自分達姉妹を父の毒牙より守り抜いた事を。
あの日ーーーーもう再び 姉妹思いのウィンストンが決して自分達の側に戻ることが無い事を。
思いやり深き弟が、兄が、自分達に微笑む事はこの先2度と無いのだと知った運命の日。
泣いた涙も涸れ果てた姉妹達は固く約束したのだ。
**************
「ちょっとーーーいいかしら?」
「なぁに?お姉様???家中のものが寝静まったこんな深夜に改まって?」
「宵っぱりの私達ならともかく珍しいわね、一体全体どうなさったの?」
「〜〜〜〜貴女達良い加減に早く寝なければダメよ、全く。
喉に悪いわよ?!絵も荒れるし。
でも今夜だけは都合がいいわ、お父様もクリストファー陛下に会う為に王宮に出かけているし。
実はウィンストンのことでーーー少し。
絶対に誰にも聞かれたくない話なの、私達以外にね?」
「「お兄様の事?!」」
ある夜の深夜ーーー
長女は残された妹達に総ての事実を告げた
優しい兄想いの2人の妹が、今後無駄な望みを抱かぬ為に。
『私以外ーーー本当の真実を言える人間はいないんだわ!』
姉は唇を嚙み締め 覚悟を決めた。
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「ーーーーーそういう事があって。
事件は隕石墜落にして、王家も国内状況が状況だからって、暗殺事件ごと、丸ごと隠蔽を図ったんだけども。
お父様は息子を〜ウィンストンを切り捨てたのよ。
我が身かわいさ、ご自身を守る為にね!」
「じゃあじゃぁ〜〜〜!お兄様は!!
この先ーーーどうなってしまわれるの?」
「これはね、お父様の側近の方からの情報じゃ無いからね、誰にも話さないで。
破ったら最後、貴女達確実に殺されるわ、それくらいの国家機密の重い話だから漏洩には絶対に気をつけて。
天才と呼ばれていた私の医学仲間、某施設に勤めてる彼の伝手でね、密かに教えてもらう事が出来た情報よ。
その就職施設の中にある『フヤジョウ』って言うところにね?
姉様の、とんでもないメチャクチャな天才の仲間が就職〜古くからの博士仲間の、某男性医学博士が奉職してるのよ。
見たこと無いほどすごく賢かった彼はね、紛争地帯、戦地をずっと渡り歩いてきた医師でね。
頭脳明晰なだけでなく『強運の変わり者』故のヘンテコ経験をかわれて高額で雇用されてるのよ。
内勤勤め、そこの医療班にいるから収監者の体調管理を行う業務上、ウィンストンとも偶々接点があった。
『これは本当は誰にも喋る事が出来ない極秘事項なんだけどさ、彼は探していた君の弟さんなんだろ?』って。
あの子ウィンストンと 弟の護衛役だったガード達はね、クリストファー王太子殿下の巡洋艦に対しテロ襲撃事件を起こした後に、その某施設に収容されたの」
「兄様ーーー無事?!」
「今お健やかでお元気なの?!」
「彼経由〜何とか掴んだ話では、ウィンストンは確かに生きては居るの。
ーーーー裁判無しの処刑は、幸運にも何とかみんな免れた。
でもねーーー
した事がジャパン国内におけるテロ行為だから、もう絶対会えないわ?
だって収容された施設は、普通の、ただの場所じゃない。
私達の誰かが、何処かの国の『女王様』『大統領』にならなけりゃ、本当にもう絶対無理なのよ」
「??どうして?」
「どんな牢屋だって家族の面会なら申請すれば可能でしょ?!」
「それはーーーそれについてもいつか詳しく話してあげる。
「『フヤジョウ』にいるの?ーーーお兄様は」
「違うわ。
だからーーーー本当にもう金輪際会うことは駄目なのよ。
流石に諦めるしか無いの」
「!!嫌っっ、絶対に嫌!!」
「酷い〜〜〜姉様嫌い!!嫌嫌、嫌よっっそんなの!!」
「私の力でも、もう、姉様にもどうしようも無いのよ……だから諦めて!!」
ーーーーー重苦しい沈黙が降りる。
「お姉様ーーーそれってーーーーー、一体何処なのよ?」
おそるおそる尋ねた妹に、しっかりした姉は酷く疲れ切った表情で答えた。
「キャッスルーーー『シロ』ーーーよ。
ナニーから毎晩、私達が寝なかったり悪戯する度に聞かされた恐ろしい場所よ。
あの最悪最強の絶対に脱獄不可能ーーー
銀河のどこかにある、場所すら極秘の、この世の究極の監獄よ」
「!!」
「そんなーーー……っっつ!!」
「でもね、私達の気持ちを伝える術が、無いわけじゃないわ?」
「「どんな?!」」
スゥーーーーッと息を大きく吸い、長女は 自身がたてた達成不可能とも思える 遠大な計画を話し始める。
「いい?3人だけの、”秘密の結束”ーーー約束なのよ??」
姉妹は大きく頷く。
それ以後はーーー涙を見せず、辛いときはいつもこのーーーー
深夜の3人の約束を、心に浮かべて頑張ってきた。
「約束」ーーーーーは。
コロニーの歴史に公的な理由で、何かで永遠に優しい兄上の名を誇らしく刻む事
そうすれば”いつの日か”
自分達の切ない感謝の想いが
間接的に
故郷コロニーから遠く離れた、2度と会えない「彼」に伝わるかも知れない。
ウィンストン奨学金 設立。
姉の永きにわたる執念ーーーー苦闘の戦いの歴史
健気な妹達にとってみれば、10代半ばの子どもの頃から、ただひたすらに。
切ないまでに兄様を想い続けた感謝の気持ちが
悲願が叶った瞬間だった




