コロニー都市D-01、政党の解体について
コロニー都市D-01。
現国王クリストファー青年王が王太子時代から、コロニーD-01政府を支え続けてきた名宰相閣下が厳しく辛い闘病生活の後、逝去した。
キャンサーが原因で病巣の進行が早く、気がついた時には既に全身に転移、病魔に冒されていたのである。
「どうして検診でわからなかったのか?!」
「それがこの病の厄介なところです。
閣下の病巣の位置は”機器の死角”〜
臓器の裏側の非常にわかりにくい箇所にございました。
加えてまだ年齢はお若く、それ故に困難な状況におなりになられたのです」
コロニーで「神の手を持つ」と言われた程の有名外科医であっても、もはや手の施しようも無かった。
「彼程の意志のお強い方だったからこそ、此処までお体が保ったのでしょう」
主治医の改めての見解が葬儀〜
コロニー上げての国葬の日ーーー厳かに発表された。
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ウィンストンの父親である宰相閣下は、ただ1人の直系男子であった神童と呼ばれた子息が乗船した宇宙探査船が行方不明になって以来〜
自慢の手塩にかけて教育した子息を、優秀な「事実上の後継者」を事故で喪失した哀しみからか、それこそ一気に輝く若々しさを失った。
10歳も20歳も、この僅かな数年で激しく年を取ったよう周囲には見えていた。
彼の「病」はーーー
取り返しがつかない人生の激しい心の苦しみと、厳しいストレスから来たのだろうと民は心を痛め語り合った。
宰相閣下は彼の御尊父と同じく、名宰相の名を欲しい侭にした偉大な政治家で、国外の他惑星〜
超大国から王国の独立を、生涯身を挺して守り続けたと、死後彼の業績を国民は讃えた。
国民の教育に熱心であったその死を 皆惜しんだ。
名を冠した公園や図書館、学校、病院が、新たに多数建設された。
コロニー都市D-01、宰相閣下のたった1人の直系男子であった、かつて神童と呼ばれた優秀な子息ウィンストン。
研究者と側近と共に乗船した宇宙探査船が悲劇的に、広大な宇宙空間でいきなり消息を絶ち何処へか謎の「行方不明」になって以来、コロニー群内部で 様々な勝手な憶測と下馬評が蔓延した。
それは、名門派閥を いつか誰が手綱を握るか?
そうーーー「後継者問題」である。
「優しく賢い坊ちゃまが、今此処にいらっしゃいましたら…ッッッ!」
全員の総意であったが しかし”見果てぬ夢”ーーー
「航路中に、宇宙空間に存在する悪名高きブラックホールに吸い込まれたのだ」
「ウィンストン若様は宇宙嵐にて、もしくはワープ航法の失敗にて時空の狭間に堕ちてお亡くなりになられたのだ」
既に どうしようもないのだ。
それにーーー
「ご子息の船団は2度とこの国に戻られることは無いでしょう」と、あの忌々しき宇宙科学者達はマスコミ報道で口を揃えて言ったでは無いか!
ただの名も無き庶民にはひっくり返せないあまりにも苦い現実だった。
だが人々は諦めきれず、それでもあちこちで嘆きの囁きをかわすのだ。
閣下の御前では、厳しい禁句であったから、政党の重鎮ですら誰も面と向かっては言わなかったが。
「待望論」は ヒタヒタとーーーー
救世主を求むる希望の願いはコロニー内部をゆっくりと浸し、深く広く浸透していったのである。
宰相閣下の死後ーーーーーー
カリスマ性による求心力で何代にも渡り営々と続いてきた政治の名門派閥は、この後継者争いに端を発した、激烈な内部闘争へと突入してゆく。
連綿とコロニー創世の昔から続いて来たと言われる歴史有る政党は、血みどろの武器を伴う凄惨な内部抗争、暗殺に発展。
その醜い争いには、今や、これまで宰相閣下が掲げて来た政治的崇高さや理念は欠片も見られなかった。
急速にーーーー
D-01内における国民の支持を失って行く。
求心力を失い、幾つにも分裂、ちりぢりに分離し、事実上の「消滅」となる。
ーーーーー名高い名門派閥は解体した。
解体したその翌新年、コロニーの議会で或る重要な法案が可決される。
法案では現青年国王 クリストファー国王崩御後ーーー
大人も子どもも参加の、総ての国民が投票の前代未聞の第1回目の総選挙を行いコロニー統治者を、全国民の新たな総意により選出する事。
近未来、つまり「王制」は廃止されるのである。
D-01にはーーー新生 民主主義国家が誕生する事になった。




