オムライス事件 ①
仮想現実の世界は、装置と時空を守る厳格な安全基準により規定の一定時間はクールダウンタイムとされている。
明けて数分後に、完全に仮想現実空間は閉じられた。
さて、転送移植装置接続のカプセルの側。
ひと段落経過で気持ちが落ち着いたとはいえ、普段は冷静だが今現在はそうでもない信繁が待機していた。
そうーーー全身で怒りの空気をしゅうしゅう陰気に発散させている不穏な状態なのである。
でーーー諸悪の根源という見方も出来るウィンストンが「還る」のを熱く冷たくいまや遅しとジックリと腰を据えて気長に待ち構えていた。
ウィンストンはギリギリ「後3分!!」という奇跡的展開にて現実世界に生還。
〜しかもモニタリング計測によれば、ここでも幸運さを発揮、なんとまぁ意識障害もなくヘラっともどることに無事成功した。
けれど事実、今回たまたま運が良かっただけで、本当に危うい所だった。
仮想現実の世界から分離、意識と肉体が安定、精神の安全が確認されるまで若干の時間差がある。
ーーーつまり直ぐには装置内部より出ては来れない。
要するに寝ぼけた状態〜半覚醒なのである。
「さぁて、馬鹿様を。
甘ちゃんの我儘な坊っちゃんをはてさてどうしてくれようか〜?」
これだけテロやなんやら、ジャパンでメチャクチャやらかし放題、前代未聞、大迷惑を掛けておいて、しかも更にこのザマはなんだ?!
腹がたつにも程がある。
さぁーーーーどうしてくれよう??
流石にこの肉体的精神的疲労がピーク時での状態、よれっよれボロッボロなウィンストンを、戦闘無敵の信繁に力一杯ーーー
そうでなくとも例え裏拳で軽くなぶられただけでも冗談ではなく本当に死んでしまうだろう
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時間差で少し遅れてカプセルから出た城主は、正義感が強く、プリプリ激怒りまくる「上司思いの優しい部下」
ーーー信繁から既にノックダウン
ノシイカ以上にグダーーーーーーっと長々、床に伸びているウィンストンから何とかベリっと引き剥がした。
特殊部隊信繁班における子龍、雅以下その他同僚部下達が
「まぁまぁ〜信繁さん、お怒りはご無理ごもっともーーだけどさー、今回も皆無事だったからまー、良かったんじゃないっすかー?」
「そうそう!! 終わりよければすべてよしってってね、よく俺のばーちゃんが口癖みたく言ってますって〜
ボケてとっくに死ぬこと忘れた年長者の言うことですから確かですよー!」
「んねぇここは一つ! お大尽に立派に大人になりましょーや♪」
笑う門には福来る。
明るく楽しく苦笑しながら仲裁に入ってくれたので彼女的には本当に助かったのである。
さて、城主はその日の「3時のおやつ」、ティータイムの時間に今回の救出劇に関わり尽力した全職員に対し、多大な感謝と慰労も兼ねて、形として表すことを計画している。
「こう言う場合って、やっぱり消え物がいいかしらね?」
施設収監の情報提供者「親父さん」に作って以降、すっかり得意料理のレパートリーになった「オムライス」。
特にケチャップイラスト付き〜は、相手からのリクエストで、細かい図解入りテキストまでもらった事により、今やすっかり達人の域である。
今回習得した技法の新たなお披露目には絶好の嬉しいチャンスでもあった。
〜幸い、調理の道具や材料は未だたっぷりと残っている。
食堂の調理師らも、今回の貸切案について快く賛成、賛同してくれた。
「いいよいいよ、どーせこの時間は我々も休憩中ですので好きに使っていいですよー」
「いつもみたく後片付けだけキチンとしてくれれば、ナーンも問題ないでーす」
〜と言う事で、食品ロスの観点からも盛大に華やかに振る舞う事に決めたのだ。
「親父さん」からの進呈品、オムライス制作の衣裳装備品一式。
折角のご厚意でいただいたからと、今回も感謝しながらありがたく再び身につける。
別の「親父さん」からのタンゴの衣装類一式における記録映像は、ウィンストンのサルベージに多大な威力満点な貢献をもたらし正にGJ!、感謝しかないし。
「うーん、職員女性共通の備品にして皆で後々まで大切に使っていこうかしら」
登録された寄付物品ーーー
勿論、一旦そうした以上、もしも品物が紛失欠品した場合、今度は「すわ横領横流しか?」と大騒ぎになり、それはそれで管理取扱いが中々面倒になると言うものの、こう言う事柄は出来るだけ筋を通す公正な可視化が望ましい。
少なくとも贈収賄疑惑で決して後々揉めないであろうと城主は真面目に考えたのである。
「それにしてもーーーーー今の若い人達のセンスってよくわかんないわ?」
ジャパンのJKそのものの雰囲気で「うーん??」細い首を傾げるのである。
改めて身につけたのは、猫耳付きレースとおリボンがふんだんに盛りっ盛りにこんもり飾られたヘッドドレスならぬフリフリ防炎三角巾だ。
これ一枚でどうやら「衣装は完結」の半袖付きドレス型、スイートなピンクのチェック柄の防炎エプロン。
〜同じくレースとサテンリボンてんこ盛り〜
あっまーい、甘々デザインスイート飾り付き超超超超ふるりんフレアーミニミニミニ、ミニ丈である。
なお上部のエプロン生地がふわんと甘ーーーく広がるように綿飴?マシュマロ?な、全円サーキュラーポンポンフリフリタイプのミニミニミニミニ丈防炎アンダースカート付き。
こちらもどうやら依頼者がポリシーをもって、衣装テーマを揃えたのか?
ーーーはたまた真の猫愛好家なのか??
ドドーンとモフモフにゃんこのマイクロボアのおしっぽ付き(防炎)。
かわゆすにゃんにゃん♡
ピンクと水色レースと大人気グログラン製おリボンと、キランキランピンククリスタル特注ハート型ラインストーンのポイントチャームがとってもお洒落〜
眩いきらんきらんレインボーラメ刺繍のニャンコがうーんとラブリー♡
ふんわりパステルカラーガーゼ素材全面に、コロコロ何匹も表情を変えて縫い込められた通気性抜群、防炎特殊素材ガーゼマスク。
ふーーーーーん?
こんなのが今流行ってるのね〜 ああもぅ勉強になるわー♡
残念ながら 「んなわけないだろ〜〜〜(怒)!!」
城主に突っ込む人間はいなかった。
「本日開店・1日限り
城主主宰 限定
〜救出にあたった全隊員・職員対象〜
所長より多大な感謝と慰労もかねたお食事会
現在すっかり得意料理のレパートリー
全部所長奢りの『オムライス』
特別参加企画・ケチャップふぁんしぃイラスト付き
~盛大に振る舞うので、召・し・上・が・れ!」
城主〜紫が自ら実に手際よく、くっつかないフライパンでそれはそれは美しく丁寧かつ迅速に焼き上げたオムライス。
黄金色にピカッと光輝き形よく、大層見目麗しいアーモンド型ふんわりふわふわのほっかほか、ナイフでサクッと中心を割ればとろっとろの中身がジュワー
口に運べば即感涙、ホッペが落ちそう超美味、みんながとっても大好き、ラブリーオッムラッイスーーー!
城主は器用にしゅぴっっと手際の良い中にも繊細かつ丁寧な手捌きで。
ケチャップ入り絞り袋でテキスト通り、うっとりする程ベリーキュートな可愛らしいイラストをジャンジャンさくっと描きあげてゆく。
実際いざトライしてみれば案外適性、しかも結構絵心があった。
絞り袋で描くイラストの様々な描き方の手法、テクニックを短期間ですっかりマスターし今や自由自在である。
「へーーーー楽しい! やってみると結構面白いものなのねー!!」
これも予想外の発見である。
何事も見聞きするのと、自分で実際に手を動かして行ってみるのとは雲泥の差、天と地の開きがあるものだ。
随分他人よりも永く生きている身としても、こうした新たな発見があると言うのは嬉しい限りで、心がポカポカうきうきしてしまうものだ。
何事も夢中でトライアンドトライ〜!!
そして何よりも、たまには童心にかえって手軽に楽しめるのがいい♪
絵柄はニャンコ、ラブ&ハートや定番のニコニコマーク等々
その他、注文に応じて様々なリクエストされるイラストを描いてみる余裕すら生まれたのだ。
艶々な濃厚有機ケチャップで描かれた城主特製 イラスト付き手作りオムライス
軽量型小型フライパンで セッセと焼き上げ創作した
美味しいチキンライスは既に予め大型炊飯ジャーに調理済み(紫自作)のものがタップリホカホカ用意されているので後はしゃもじですくって盛ればいいのだ。
オレンジ色に染まる見るからにゴクリと美味しそう〜〜!
ゴロゴロ大きめな具入りチキンライスは既に何もせず、それだけでも丸ごといっくらでもいけそうな感じである。
事実、数多くのケチャップライス大好きラブラブ職員〜
「くっそぅ〜俺はジャー事腕で抱きかかえて食いたいぜっ!」
〜危険な欲望に塗れまくり、ゴクっとフンワリ甘い誘惑の香りを振りまくヤバヤバな対象から視線が外せない。
とにかくそんな美味に決まってる中身の上には、産みたて新鮮玉子に極上生クリームを足して益々トロットロに〜
希望者にはとろけるチーズまで新たに追加されたオムレツ卵がかけられた物が不味かろう筈が無い。
「うぉおおおおおおおおおおお〜〜〜!ァザーーーッす!!」
「ではいただきます♡」
「ホントにありがとうございます♪」
皆目をキラキラさせて
次々に綺麗に焼き上げる彼女を嬉しげに至近距離でうっとり見つめながらお行儀良く一列に並び〜
各自自分で直接カフェテリア型セルフ方式、盆やスプーンなど取って、静々順番を交代していった。
だから給仕係は必要無かったのだ。
「悪いわね」
「!!〜〜いいえ寧ろこの方が!!」
城主は「ふぅん?」と思ったが、皆口々にアワアワ慌てるようにそう言うので多少の罪悪感はあるものの良しとする。
救出活動に従事した職員達は自分の好みの席に着席すると皆「カワイイカワイイ」と言いながら
実に不思議な事に、人によっては涙まで流しながら、美味い美味いとモリモリぺろり食べ尽くしてゆく。
城主は色々と『??』……
赤いケチャップでお絵かきされただけの食品の 何がどう凄いのか?ーーー
『?? わからない』
多少ーー『ハテ?』と何だか変な気もしたが、にっこりと極上の優しい笑みを浮かべて取りあえず一律に
「ありがとう♡」
ふんわり優しくそう流してゆく。
……さて
漸く後片付け終了、仕事終わりの信繁が、おくばせながら食堂にやって来た。
「よーーー万能班長、この後必ず食堂に来いや?」
〜子龍に言われたからである。
『!!!!!!!』
なんだこれは〜〜〜〜〜〜〜〜!!
見た瞬間、信繁は心の中で大絶叫、ドックドクの冷や汗をかいた。
『こいつらがーーーーーー!!
カワイイ』といっているのは〜〜〜〜!
断じて絶対このイラスト”だけじゃない”っつーンだよっ〜!』
心の中で激しく猛烈に突っ込んだ。




