↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/135

心理戦の行方と恋バナについて

城主は言う

「そんなこんなで、私にもしみじみとしたそれなりに楽しき思い出がありました。


何だか、あの懐かしいキラキラする日々に戻ったようなお気持ちがします。

 

でもーーー……

お祖父様と貴方とは、未来の政治家としての野心、野望を生きがいとする意思のところは近くても別人です。


ーーーー今までどんなに苦難に遭っても、お間違いを認め、人の心を無くさなかった部分だけが全く異なっております」



「〜そうなんーーーですか?」


「はい。

明るく人当たり良く〜社交的でもーーー……

 

どこか、非人間的感性を巧みに上手く隠し通していたお祖父様とは……ね?


私は気を許さず そこを常に警戒していました。

 

告白をお受けしなかったのはそれがあったからです」



「……!」


「でもウィンストン様はーーー貴方には人間臭い温かみがございます。

 

政治の世界に身を投じる方には、稀少な珍しいタイプですね?


……おまけに孤独で、心の優しいところが魅力的です」


 

「ーーーーそれは褒められているんですか?」



怪訝そうな表情の首をかしげるウィンストンに城主は密やかな、謎めいた微笑みを返す。



「さあ? どうでしょうね」



そう、キャサリン様はーーー……多分ーーーね?

 


貴方のそこを誰よりも理解し、心の底から真剣に恋したのよ?


貴方のする事なら、何でも ……丸ごと全部受け入れ、許してしまう程に……



でもキャサリン様が決して恋心を告白しなかった以上



〜私が無遠慮に言うべきではない飛び切りの……



ーーーー極上の”秘密”……




だからバイアスをかけて、わざわざ”代行”して 言って差し上げました。


まったく!、お節介極まる余計な事だけどもーーー!



ようやく緊張を解き、にっこりと花の様に笑った


正にそれは花のかんばせーーーで……、真正面からじっと見つめるウィンストンの顔を一瞬で再び赤くした




「ーーーそれにしても!

恋する人間の馬鹿な思い込みには誰も勝てません事!


貴方ほどの方でも陥る、真剣な『恋』と真の『友情』って、そんなに麻薬的によいものなのでしょうか?」



「……私にとっては。


ぇえ……初めてこの世に生きる喜びを知りました。


事あるごとに父に殴られるばかりの、砂をかむ日常が、光と輝きで 世界の隅々まで暖かく満たされました。


色鮮やかにーーー……目にする総てが明るく耀き、私をときめきと希望で柔らかに癒やしてくれました」


ウィンストンは微かに微笑み蕩ける様に語る。


城主は天井を仰ぐ。

 

力なくハァ~と息を吐く。



「『恋をすればどなたも詩人』ーーーー


全くもってその通りですね。


ぁーーーー今回は貴方に『1本!!』、と、私からいったところでしょうか?」



「ではこれで”1対1”、ドロー ……『引き分け』ですね?」


ウィンストンは嬉しげに照れくさそうに笑う。




『こんな風に元々は、自然に優しく笑う事も出来る青年だったのだ』


城主はフッと苦笑し、そんな事を改めて思う。


「その事」をーーー本当の友人と、彼を密やかに見つめて愛した方だけが知っていたのだ。

 

胸の中がチクチクした。



『前回は意図的に彼は負けを認めたのだから、結局は”私の負け”……!


ーーーー今思い返してみてもあれは様式美で出来すぎていた。

それもカウントすると2敗だわ?』



一敗でな無く、その様に城主は感じている。



クリストファー王太子殿下のいう様に、ウィンストンは掛け値無しに最高に本物の秀才だった。



その優秀な策士の彼は、自分を多分疑ってかかっている事を想定に入れていたのだろう。


それも全て判っていて、先に手柄をしっかり相手に持たせた形で、先ず先に自らが屈し「完敗」ーーーと負けを認めた。


〜これが彼流の独特の流儀、優しさなのだろう……


 

でなければ次に仕掛ける大本命の、交渉時の対人エネルギーのバランスが悪くなってしまうからだ。


全てに勝ち逃げのやり方は 場に確実に怒りを生む。


そしてーーー次回は絶対に「彼にとって勝たなければいけない」戦いだった。



認めたくは無いが、やっぱりあの心優しい王太子が大親友と認めただけある見事な才能を持つご学友だ。



『本当は今回決して”引き分け”ではなかった、私には”判る”わ!』


ーーーーー意図的な負け……



『だったら?、その「貸し」をーーーー

 

今度は 私しか出来ない流儀で”お望み通り”、全力で今からお返ししてさしあげますわ!


さあこれで 本当にドローですね?


ーーーもぅ文句は無いでしょう?


あなたと出会えて楽しかった』




城主は1呼吸置くと、「では」、穏やかだが、毅然とした口調で話し始める。



先ほどと様子のガラリと変化した真っ直ぐで真面目な彼女の表情に、キリッと真顔になる。



『本当にこの人は幾つ貌を持って居るんだろうか……?』


ウィンストンは心の中でひっそりと切なく想うのだ。



話す度ーーー言葉を交わせば交わす程、時間が立つ程にどんどん目の前で美しく変容し、印象が華麗に理知的に好ましく変わってゆく女性。


胸の奥に曰く言いがたき熱い塊が生まれ育ってゆくのだ。


コレは一体何のマジックーーー奇跡だろうか…?

 

しかも”この科学的心理変化”は、決して不快では無かった。



『貴女と出会えた事は本当に嬉しく光栄でした。心からそう誓います……』




そう幼き昔ーーー


あの時より、あの特別の子どもだけの世界の部屋から、ずっと貴女を目指して永き時を追いかけて来た事は、決して間違いじゃ無かったーーーと。



ーーーと


「1つお伺いをしたいのですが??」

 

ウィンストンは 城主に突然語りかける。

 

ビシッと変に真面目な顔に城主は正直驚く。


『この方は今真剣ね??』

 

でも此処に至ってワザワザ、一体全体新しく何を聞きたいことがあるのだろう?


「どうぞ?何でしょう?」

 

「こちらの当該施設に、貴女の恋人はいらっしゃらないのですか?

ーーーー例えばーー」


「ーーー例えば?」



「あの背の高い方とか?」



ーーーー彼が指すのは、言わずと知れた誰かさんの事である。



「??ーーーえーっと、ここのスタッフ殆ど男女とも背が高いから。

貴方が誰の事を言ってるか全然わかんないわね?」



「司令部突入の時ーーー貴女のガードを勤めた高身長の方です」


「??余計わかんないわ?、皆守ってくれたし特殊部隊の人員は皆瀬が高いし。

あ、もしかしてあの漆黒のクリーチャーの事?」


「……」


何だかはぐらかしてるのか?馬鹿にしてるのか?

それとも本気でわからないのかーーーー


兎に角つかみ所が無い。

彼は ちょっとイラッとする。


「クリーチャーで無くて人間で、1番背の高い方ですよ!」

 

「アーーーーーわかった彼女?!

お父様がロシア系だから背が高くって色が白くって正統派美人よね〜」


「違いますっっ!!」



『普通 恋人は異性でしょう?何なんだこの人は!!』

 


「スラッと姿勢の良い、我が部下の中でも近接戦闘が特に優れたヨンですら秒殺した程の凄腕の方でーーー!

 

確か瞳が、ちょっと茶色っぽい方で!!


バネのようなしなやかな戦闘能力が美しい、全身で凄まじい怒れるオーラを放っていた『男性』です!」

 

 

「あぁ……」


城主は流石に漸くわかった様子に見えた。


ウィンストンはドキッとする。

ーーーー彼女は果たしてどう答えるのだろうか?!


 

が〜ーーーー

ぷっくりと綺麗な魅力ある唇から飛び出した言葉は、聞いていて辛い、男としてつれないものだった。



「まさか? 冗談ぽっくりこだわ?」



「・・・・・・・・・・・・」



ーーー思わず相手が可哀想になる、あんまりな返しである



『それとも誤魔化し?? ワザとこう言ってるのか?』


わからない、わからないーーーーーが。


あの 見るからに生真面目そうな『彼』が、自分の上司に自ら恋心のアプローチを 積極的にどうこうするとは思えない。


いや〜ーーー”していて” もだ。


この人が果たして気がついているかどうか?


『おそらく彼は、この人の事が好きだろう』ーーーそうだ、自分と同じ位に。


ーーーー彼はきっと本気だろう。


どうしてだか? 「それがわかる」のだ、自分には。



『ヤレヤレーーーー』

 

ウィンストンは信繁の報われない心情を思い、心の中で密かに深い溜息をついたのである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。