城主の考察
ウィンストンの顔色が明らかに変わった
そこに城主は畳み掛ける
『サァ引っかかるか?ーーーどう出る?』
「実はーーーーー
一番最初にそう考えたのは決して私ではありません。
私はただの後追いに過ぎません。
…
事件当事者であられます元王太子ヘルヴィム様が、最初にまずそう『推理』いたしました。
どういう方法かは私は存じあげませんが、まぁ時間だけはございますので。
溢れる行動力で、真相をお知りになる為、それはもう必死で情報を集められました。
どうやら彼自身には……!
コロニーを追放され王宮から完全失脚した後々も、彼だけの命に一途に付き従う信奉者が本当に数多く居まして。
現在でも、活発な隠密的活動や活躍を、暗部で積極的に繰り広げていらっしゃるようです。
その点は貴方のお父上と、何もかも同じなのですよ。
どこもーーー変わりません。
オマケに此処には、銀河で一番その様な事に適する能力、知力、資産、技術的に精通されたその分野における特殊な才能の塊の様な、ある種の天才達が。
素晴らしい方々が、施設内に綺羅星の如く、それはもう一杯おられますからね!
『城』の生活に随分落ちつかれ、冷静になられると多少の交流で、能力的に自分以上のキレッキレの曲者に薫陶を受け刺激をもらった様です。
ご存知の様にここに来る様な人物は、皆自分が帝王とか王様と強烈に自認しておりまたその通りですので。
ヘルヴィム様は、まぁ、彼らに比べれば、大道で普通で真面目なお育ちの良いおぼっちゃまの部類なのですよ。
ですから平凡故にーーー
しかし優秀な頭脳を持つ彼は皆に可愛がられ、有り余る時間を使い、熟考を重ねられたようです。
そして〜”ある点”で、大変に不思議がっておられました。
『エネルギー銃』は特注品ーーーー…
『某ヴィンテージワイン』……これに至っては、そもそも、既に、銀河連邦オークションでしか絶対に入手困難。
いいえそれどころか、手にいれる事などそもそも不可能。
一生に一度出会えたら奇跡〜という程の、好事家ですら『いつかは〜!』と夢見る幻の本物の貴重なワインでした。
ああした人生で2度と出会えないワインを本当にもしもきこめす場合〜
最後の一滴までしかも香りすら堪能するのが普通。
最後はボトルにシャンパンをたっぷりと注ぎ入れ、芳醇な気配の余韻を味わいきるまでが作法です。
王宮が数多くの入札者を蹴散らし、運良く落札、購入権を得たとしても、コロニー議会の予算委員会で追求は免れない品です。
ーーーー買える訳が無いのです。
ただし例外として、王家がいわゆる資産ーーー
必ず値上がりが見込まれ、多大な益をコロニーにもたらす幸運の骨董品的価値のある動産として。
厳重な温度管理された専用保管所に値上がりを期待し、先々への転売を目的に所持するなら許しが出るかもしれません。
つまり高価な宝石、絵画と同じカテゴリーです。
しかし”本来の活用方法”〜
栓を抜いて『中身を飲む』だなんて、そんな事、金を出す側の政府は絶対に赦しはしません。
『贅沢だ!』というよりも無責任と判断。
ーーーー何を考えてるんだと間違いなく非難囂々で糾弾され、下手をしたら即日退位です。
確実に、贅沢を越える贅沢だと〜清廉な真面な議会だったら大問題になる程の兎に角途轍もない高額品でした。
そんな紛糾の火種になり兼ねない曰く付きの、恐ろしい呪われたような物品が〜
『何故あの日にあったのか?』
仮に〜王室に好意をお寄せになられる一般国民の方々から寄贈された、有りがたき贈答品にせよ
そんな政府高官ですら目を回す程、途轍もなき高価な品がしかも複数本も。
あの当時、お仕事を〜
”お父様に成り代わり”、しなければならなくなった〜
ーーー特に神経を使う財務管理迄も、いつの間にやら兼任させられていたという元王太子殿下でした。
そこまで深く国の財政基盤にも深く関わっていた、税の適切な運用を望み、汚職を激しく嫌う彼自身のチェックを綺麗に突破。
そんな都合の良い事が果たして出来るとでも???
”ああも易々、あんな大物が我が目をすり抜ける筈など有り得ない!”
〜キッパリと断言、仰っていました」
「ーーー」
「エネルギー銃の方は、注文と購入記録すら、端的に言えば偽物。
国王様だったお父上の筆跡を、それはもぅ巧妙に真似てサインされた『偽造電子書類』、公文書偽造だったそうです。
それぞれの品が〜……
同日同時に 著しく判断力を欠いた誘惑に弱い父王様の手に渡ったのは果たして偶然か?
〜どうしてこの日に!!〜
登場人物は、父・自分達兄弟〜
3名の時間的、肉体的、精神的条件が、ぴったりと偶々そろった??
”そんなわけあるか!!”ーーー仰られました。
私の目から見たって、そりゃそうです」
「ーーーっ!」
「…ぇえ…
私が思うに、『傀儡の国王』はともかくーーー
段々言う事を素直に聞かなくなって来た、意思が強くプライドも高い生意気で。
オマケに正論を吐きたがる傾向が、性格が生真面目さ故に散見する、優秀な元王太子ヘルヴィム様は、当時宰相職の『お祖父様』にとって
ーーー決してーーー
今後の家門の繁栄の事を考えると、とてもではありませんが見過ごせない、困った大きな驚異だった事でしょう。
つまりです?
最強最大の政敵に変貌しつつあった、とこの際、言い換えた方が宜しいかと思われます。
そうーーー『似てませんか?』
この状況はまるでキャサリン様のご両親と全く、『同じ』なのですよ?
”彼等”を、生涯最強の政敵を。
あくまでも『正確なデータ』に裏付けられた、理論武装の非の打ち所の無い、正しい論理的知識と正論。
これでグイグイーーー
何所までも鬱陶しく攻めあげて来る、厄介な融通が利かぬ彼等を、貴方のお父様はどう遇されましたでしょうか?」
「〜〜〜〜〜〜!」
ウィンストンは余りの驚愕な事実を突きつけられ、口から泡を吹かんばかりの表情を見せる。
城主は、なおもスラスラ、つまらなそうに話し続けた。
「まぁーーーね?
『私は宰相として国を守る為に、少々、ほんの少しの誘導をしただけですが何か?』
あの抜け目がない、野心的な人物でしたらば、そう言って確実にゲラゲラ大笑いするでしょうね。
『政敵』を追い落とす為にそこまで非情に罪悪感を抱かずーーー
互いが持つ劣等感や愛憎を利用し、見事に綺麗に全く手を汚さず始末しているというのは、もはや芸術的というか何というか……!」
そこまで一息に考察を披露すると、一旦、一息入れるかに言葉をパタンと切る。
「さてーーーー」
唇を歪め、総身をガタガタ震わせるウィンストンに向かい、グイッと上半身を椅子から乗り出し
ーーーー意地悪く、頸を伸ばして耳元で囁きかける。
「いいですか?ウィンストン様のお父様はその恐るべき『薫陶』を。
子どもの頃から、お父上のーーー
宰相様の御側で、十二分に受けた純粋な『帝王学』
一撃必殺ーーーー!!
ああした場所で確実に勝者になり得る悍ましい英才教育を、生き残りの成功者から直に授かり、スクスクとお育ちになられたご子息なのですよ?」
クスッと悪魔的な微笑みを浮かべて、城主はニコニコ更に先を話し始める。
「ヘルヴィム様がお調べになったデータをお借りし、私も独自に時間をかけ様々に推理検証致しました。
『父王謀殺計画』と仮定するならばーーーーー
”その場合”ーーー
現国王様の通われていた学園の日々の諸々の事情に、一通り細やかに通じた人物も絶対に『どなたか』が必要でした。
年齢的に
ウィンストン様のお父様も何らかの形で 1枚かんでおられたかも知れません
ーーーーというか、この事件を〜もしも私が『計画』したとするならば?〜
けしからぬ、怪しげな空の視点で俯瞰して考察すると、何処か壮年の人間の感性とは全く別の個性、独特の若いセンスが感じられるのです。
ーーーー勿論、”証拠は何一つございません” 〜が??
お祖父様とお父上様は、ありとあらゆる意味で、『最高のパートナー』でした事でしょうね。
こう言っては何ですが?
真面目で多分お母様似、の、お優しいお心を持つ貴方が少々『逆らって』も、まともにやり合ってかなう相手ではございません。
面白がられるばかりーーー事実そうだったでしょ?」
「……」
苦しげにウィンストンの頭部がガクンと前に倒れる。
はぁ〜〜〜〜〜〜〜っっっ
大きく長く深い溜息を零した城主は、若かりし頃のヘルヴィム元王太子を思い出していた。
ーーーーそう、ヘルヴィム元王太子は実際、監房で様々に推察している。




