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心理戦


城主はユラリと体を動かした。

 

そしてウィンストンの瞳を覗き込むーーーー!


思わず吞まれた様な彼に、彼女はハッキリと言い切った。



 

「この 『平和主義』を唱えるジャパン領域でーーー


今回の本格的銃火器の装備品を、あの厳しい税関などのチェック機関でも見とがめられず。

 

ソモソモーーーー

易々誰にも気づかれず準備出来た事が、既に怪しい事なのです。


まぁそうは言っても?


この潔癖さ融通がきかなさはちょっとまぁ、外国のコロニー人の貴方がたには確かに理解出来にくい事かとは存じ上げますが。


何しろ共産圏の国の方々に、”実はジャパンは資本主義の仮面を被った、社会主義の国だ!!”


ーーーーー呆れて揶揄される位ですからね?


そんな難しい側面を持つ我が国の国内で、あのような物騒な物が購入、移動出来るわけもありません」


「……」


「確かに、我が国は周囲全面総て海洋に囲まれた、一見隙だらけの国家です。


しかしーーーーそれだけに防衛ラインも独特。


どう、その様なのか?は、機密保持故に言えませんが。


 

どの国家よりも厳しく法律で規制され、今回の様な武力衝突に、どの国家・王国よりも神経を尖らせているのですよ、我がジャパンの内閣府は。



『城』はーーー例外中の例外〜。

言ってみれば治外法権の場だからこそ軍事的な諸々の事象が 特例的に政府〜

 

そして他国にも大目に見られて、暗黙の了解として認可されているにすぎないのですよ?


我が国の防衛施設および、古来からのジャパン駐留ネオアメリカ軍装備品、飛行艇も。


〜事件当日から遡ってーーーーー数日間の間。


同一の型式と思われる現物が大量に欠けたり移動した記録・形跡は衛星画像でも地球中、一切無かったのですよ?


そんな事が、”どうしてわかるのか”ですって?

ーーー私の権限を甘く見ないで戴きたいですね」


「!!」


思わずーーー心の中を読まれた如く鋭く図星をさされたウィンストンはドキリと体が震えた。


城主は艶然と微笑み返し、相変わらず片時も視線をそらさない。

その上で更にトドメを刺す。



「因みにーーー他の地球外連邦国の国々も”同様”です


では、だれがどこからあんな目立つ代物を、仮に『違法行為』〜

 

無理とは思いますが『密輸』にせよどうやって何処から調達したのでしょうか?


それは違うでしょ?

ねぇーーー”ウィンストン坊ちゃま”


そうでは無く私は、誰も彼も絶対に他人が信じられないーーー『誰か』が


そう、例えば!


宇宙銀河における、ワームホールなど未成熟の、命懸けとなる危険なルートで、無理を押し。


ーーー貴男に、”最初から、当然の様に命を掛けさせ”


直接どこかからか、大量の兵器を時空を折り曲げ、私どもの この国、ジャパンに転送、襲撃の為に送り込んだと考えております。



厳しい言い方ですがーーーー



ここまでの政治、科学、財源的に大がかりな作戦の、指揮権限を、それも個人で持ち、成功に導く為の、立案達成がお出来になられるのは。


間違っても、まだ20代半ばにすらなられていない貴方ーーー

お若い、ウィンストン様とは思われません。



ーーーーー簡単な推理です。


こうした『消去法』で考えますと、全ての条件を満たし、今回の計画、謀略が実現可能なのは、間違っても貴方じゃ無い。


ぇえ、出来るのは、この世で唯1人


ウィンストン様



ーーーーーーー貴方のお父様だけです」



「ーーーー…」



ウィンストンはガックリと項垂れる。


城主はその様子にハァーーーッと深い溜息をついた

 

不毛の勝利…

彼に確かに『勝った』が、彼女は何故か少しも嬉しいとは感じなかった。


それどころかーーーー逆に

言い負かした事が唯々空しいだけなのはどうしてなんだろう?と、砂を咬む思いがした。


彼はーーー

目の前に居るウィンストンは、父親にだけは逆らう事が、強迫観念的に出来無い。


それは何故か……?


激しい暴力は 人の心を縛るのだ


思考力を奪い、加虐者の行う意図的な、理不尽で意味不明の理由無き体罰は、奴隷の意識を内部に植え付ける。


恒常的に刷り込まれる『精神と肉体』、両輪への虐待。


彼の『恐怖』が如何に強かったか、ちょっと突っ込んだ会話するだけでそれが忍ばれる。



『可哀相にーーー…』流石の城主も心が痛む。


ウィンストンは元王太子の秘密を知っていると言った。


大義名分として教えたのは父親だろう、おそらくこう息子に言い聞かせた。


ーーー城主はその様に推理している。




例えばこの様に。


「穏やかな顔をして実は腹黒い性悪な現国王。

無実の世継ぎに全ての重罪をかぶせ、病弱だと世間の同情をかい、今現在のうのうと、玉座で甘い汁を吸っている。


しかもあろうことか、他の外戚を推挙せず、息子までも地盤を盤石にせんと世継ぎに据える事を画策している。


その様な不正をおまえは許すのか?」



心の弱点の父親が、敢えて「正しい事をいう」


その理由は彼の中、別にソレが有るせいでは無い。


息子の精神、嗜好、性分を知り尽くす父親は、総てを見抜いていた


自分を強烈に恐れ憎みながらも、それでも父を ”愛している”

 



ーーーーそんな肉親の情すらも、トコトン清濁、悪も善も。

 

息子の精神総てを利用し、一方でエゴイスティックに一欠片も残さず支配掌握する心積もりがあったからに他ならない。


つまりーーーー父親はしっかり見抜いていた。


『っったくーーーア〜〜アだわね』



きっと、「お前の吸っている空気も俺の物だっっ」

ーーーー位は。

ゲラゲラ嗤いながら好んでポンポン言いそうなタイプだと城主は小さく首をすくめる。



おそらく「わかっている」、その上で、父は彼の僅かに残る最後の正しい事を尊ぶプライド〜


義侠心をくすぐる様に、精神に残った、既に唯一と言って良い自我の砦を崩す為に。


ウィンストンの善なる心。良心に向かって言ったのだ。


当然ーーー

「自分は正しい」

「いいや本当に正しかったのか?」


親友殺害の事後の、彼の心に矛盾をはらむ想い〜…


苦しい心を焦がす悪夢的トラウマ、深い無意識の罪悪感を植え付ける為である。


”この鎖が有る限り、息子は永遠に自分に縛られるだろう……”


絶対にそう睨んだに違いない。


ーーーーいくら何でもあざとすぎる。


城主には考え抜かれた悪魔の計略の話術、父親が行ったレトリックが、全く手に取るように想像出来た。


由緒ある名家の金看板と、自身の保身をアメとムチで煽り籠絡した事も。



おまけにウィンストンは現在、苦しい脇見が出来ない片恋をしている。


誰だって心に隙が出来、判断力が鈍るものだ。



『これで冷静な判断を求める方が酷という物だわ?』

城主は心の中だけでコッソリと呟く。




方法論は容易に想像がつく。


悪どく容赦なく、渋る息子に父親は大鉈を振るった。


本当の『悪党』は、ターゲット自身も気がつかない精神状態の一瞬の隙を自在に操るもの。


操っていること自体 気がつかれない様に……


自らの手を絶対に汚さず、首尾良く目標を仕留める。


確かにーーーその『事実』に関し。

 

”そう言う見方”も、一方で視点を変えれば出来る事は自分とて否定しない。


宰相がとりたてて、意図的な嘘をついている訳でも無い。


ーーーーでも正しいわけでも無い。


だからこそタチが悪いのだ



説明が明らかに偏向しており、本来与えられるべき情報が与えられていない。


つまり”一方通行過ぎる”上、それぞれの人が持つ事情、環境〜

 

心ーーーー言い分がすっぱり抜け落ちているからだ。



言葉というのは時に鋭い凶器だ。


彼女はそれを誰よりも よく知っていた。



ウィンストンは城主の追求に言葉も無く黙り込み、貝になってしまう。


城主はその様子を暫くジロジロ観察した後、自ら問いかける事にした。

 

そうでもしなければラチがあかない。


放っておいたら一晩中でも一日中でも、完全黙秘をすることだろう。


ーーーー少し質問の方向を変える



「貴方は、どの様に元王太子ヘルヴィム様の事件をお聞きしていますか?」


「……」

 

相変わらず彼は貝の侭だ。


そんなウィンストンの表情を見て、城主はつまらなそうな表情をワザと作り、しかもヒョイと頸をすくめた。



そしてーーー言葉を使う”挑発行為”にも出る。



「私はーーーーー

元王太子ヘルヴィム様の起こされたとされる『父王射殺事件』も…

 



『実態』は……




貴方のお祖父様が、実は裏で仕組んだ策謀なのだと考えております」





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