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ウィンストンの初恋 ②

キャサリン様の最愛のご両親は、惑星デメテルで探査中に起きた、不幸な事故によりお亡くなりになられました。


小学部の、まだご両親に甘えたがりで恋い慕う年齢のーーーお小さい頃に。


ーーーー ”同時に”ーーーー……でした。



先にも申し上げましたが、御両親は王族の一員とはいえ、議会では地質額気象学の観点から〜

 

それは強く、情熱的に環境保護を訴える優秀な学者であられました。


つまり、「惑星開発推進派」の筆頭であった当時の父上の最大の政敵・一番のライバルでした。


ですので、確かにーーーー

何もかも、現在に至るまで、あの御方がお言いになった通りなのです。


私の父は実質上、D-01を中心に機能する……星系内コロニー政府の支配者!


である故、誰もがーーーー……

私と親しくなりたがって近づいてきました。


でもそれは、父上と私の家名が持つ強大な権力のお陰です。

そんな事は、子どもと言えど、すっかりわかっておりました。


私も、幼児の頃から彼女の事は良く存じています。


活発な裏表のない性格の良さを、好ましく思ってはいましたが、しかしそれは、あくまでもそれは「王太子様の許嫁」という視点です。

 

”1人の女性”

魅力的な異性、としては今までずっと考えた事も無かったのです……


チヤホヤする私の周囲の様に「下心」を抱かない、キャサリン様のようなタイプの女性と初めて接しました。



ーーー次の日、又あの展示物の前にコッソリ1人で行きました。


私に邪魔された為、再びあの場所に改めて”来る”

ーーーーそんな不思議な予感がしていた為です。


『居た!……』



嬉しい事に、”予想”は当たりました。


「!!」


「……」



驚くキャサリン様の様子にーーーーー何も言わずに



先にソファーに座っていた彼女の隣に、私もストンと座りました。

 


「……」


「もうーーーー知らないから」


キャサリン様は極小声で言うと、また小さな諦観の溜息をつきました。


そしてぽつぽつと……

「寂しかったりするとここに来るの」と言いました。



「そうですか……」


「ウィンストン様はどうして?」


「……」



私はーーー……

キャサリン様は亡くなられたご両親と、一人で対話に来たのだと感じました。


ですが余りにも心細そうで、ほおってはおけませんでした。


だから誰か知り合い、気心が知れた友人が隣にいれば、少しは心が紛れるかもとそう思ったんです。

 

ご両親が大好きだったあの方の、少しでも孤独を埋める支えになれたらと。



で、「もし自分だったら同じ事をするだろうか?」

自問自答し、それは有り得ないと思いました。


ええ、特に父の為には。



キャサリン様の質問に


「んーーーー君と喋りたかったからかなぁ」


ポロッと口から溢れた言葉に、思わずボボーーッと顔が赤くなりました。


いやいやいやいやーーーー……!!

何言ってるんだ自分!!


もう少し何かロマンティックな事を言おうと、実はちょっとばかり。


いえ本当は、昨夜寝られない程、必死に考えに考えたのに!



ーーーーーうわぁーーーーー!!


本番で出た言葉の、馬鹿っぽい平凡さに思わず絶叫〜叫びだしそうで。


『絶対軽蔑されたよな……!』


 

しかしおそるおそる隣を見ると〜キャサリン様は真っ赤になって俯いていました

 

綺麗な頬も、御耳も、細い首までパァッと薔薇色に染めてーーー!!


「ーーーーーー」


「ーーーーーーー」


2人揃って無言で、ただただ真っ赤な赤い顔で……!


お互い顔を見合わせて、最終的に、ププッと笑い出しました。



以後 

ーーーー……時々、教室以外で。


プラネタリウム施設の、そのソファーで座ってーーー


”2人きりで会う”という、デメテルのキラキラ回転して廻る立体映像の前の場所は、私達だけの秘密の場所になりました。


私も、エキセントリックな父に絶対に密会がばれたくなかったので、念には念を入れて、細心の注意をはらいました。


で〜

学校への提出の公共施設における、防犯に関するレポートの一助にしたいと、館長に特別に警備室を見せて貰いーーー


その場所には防犯カメラが無い事を知りました。


多分ホログラムの光源が強すぎて、他とは防犯用特殊暗視カメラの映像調整が極めて難しかったせいでしょうね……!


仮にそこに有ったとしても、撮影映像は真っ白になり、何にも画面に映らなかった筈です。


全くーーーー”願ったり叶ったり”でした。



プラネタリウムで学園内の様々な話をし、いつしか〜

……

 

堅苦しい敬語や尊称を外して語り合う、心からの友となりました。



もぅ、ワクワク夢見心地で、もっともっと、1晩中でもこうして、いつまでも喋っていたいと思いました。


楽しい時間は本当に経つのが早いものなのですね……!

 

毎回時間が経過するのが〜いつも……本当にあっという間でした。


素晴らしく楽しい〜私にとって、宝物の、かけがえの無い時間でした。



そんなある時、悪戯心ーーーというか?

 

「全力で試験の主席を賭けた戦いがしたい」と申し出ました


と……!、彼女の顔色が明らかに暗く変わりました。



「それだけはーーー……ダメよ」


キャサリン様は、絶対にやめておけと言いました。


「何でどうして?!」


愚かな事に私は、その言葉が意味することを軽んじて、ついムッとしてしまいました。


ええ……子どもっぽい、小さなつまらないプライドが勝ってしまったのです。


本気で嫌がる彼女を、何とか私は説き伏せ、学園のそれから最も近い時期に訪れた大きな試験で自信満々勝負をしたんです。


で……結果はーーー……惨敗でした。


キャサリン様は、学園内で開催された過去、同時期同テスト、同じ学年でのその考査試験で、未だかつて誰も取った事がない強烈な凄いスコアの成績記録を樹立、打ち立てました。


精神のストッパーを外し学業への本気の気持ち、燃える意欲を噴出させた彼女の完全勝利ーーーでした。




**************



「少し……私から質問しても宜しいでしょうか?」城主が怖い顔をする。


「ええ構いません」


城主はウィンストンの顔を瞬きをせずに、厳しく暫く見つめてこう言う。



「明らかに最悪の悪手ーーーー

聞いていて今の所、ヒヤヒヤする不穏さしか感じられないんですが。


貴方の……成績面だけは息子を溺愛するお父様は、この後どう反応したの?


そこまで政敵の遺児にやられてしまって面子を潰され、絶対に黙ってるはずが無いと思うけど?


……それに幾ら防犯カメラの存在が無いとしても、危険すぎやしない?


息子の貴方に其所まで酷い暴力をするというのは、相当な執着を対象人物〜


……つまり貴方に感じていると言う、すざましくおぞましい事ですよ?


どうしてお父様が濃厚な、”ある種の依存”をしたのかは、本人から直接聞いていないんですか?


ああいった手合いの輩は概ね……


『愛してるから躾でこうするんだ』

『こうするのがお前の為なんだ』


ーーー随分と勝手な事を言い、言葉でも支配します。


自己の単なる我が儘、を言い散らし、その上ーーー自分でも都合良く完全にその気になって舞い上がります。


まぁ認知の歪みなんですが、得意げに唾棄すべき暴力の正当化を高らかにピヨピヨ囀るケースが殆どですが。


言いなりになる相手を、手前勝手な理屈で。


”言葉”か”暴力行為”……か、もしくはその”両方”で自らに屈服させる


要は、心の弱い自分と、決して向き合わずに済ませる方便にしているだけです。



ーーーーはぁ、それにしても


アナターーー……大概な、大変な親を持ちましたね?」



城主は「言いたい放題」に聞こえそうな中にも、”ウィンストンが悪い”とは全く言わなかった。


キツイ物言いでも、それなりに注意深く言葉を選びながら、問うていたのだ。


ウィンストンもそれに気がつき、首をすくめる。



「仰るとおりです。


”お前を愛してるからこうするんだ”

”愛してるのに何故解らないんだ”


拳で殴られ、鞭でぶたれる度ーーー決まってその様に言われてきましたよ」



「……そう」


「ーーーー……不気味な事にあの時、次席になった事においては何も言わず。

 

何も触れず、ぶたれも、酷い事もされませんでした。


で……そろそろ良いかと考え、相変わらず全く人気の無い不人気なプラネタリウム施設で落ち合いました……


ふたりきりでどうしても会いたくて……



会いたくって……


気が狂いそうで、もぅ我慢の限界だったのです。

 

キャサリン様とテストの事をあれこれ検証し話し合い

 

……


たわいない事で小声を使い盛り上がっていた時、急に嗅ぎなれたシガーの強い香りがしました。


しまった!!……と思いました」


 

ウィンストンはそれから何も言わずーーーーー


下向きに顔を伏せ、唇を噛み長い間俯いていた。


机に置いた両腕どころか……身体全身が細かくカタカタと震えて尋常ではない。

 


『やっぱりね……息子を”泳がせていた”って訳ね。


ったく!あの泣き虫大嘘つき屑宰相〜〜〜〜!!


〜ああいう手合いの男が企みそうな事よねぇ……!



でもーーーこれってこの状態ってーー最早ただ事では無いわ?

 

一体ーーー……その時、何があったって言うの??』



城主はじぃっと男の様子を見つめ、決して急かさず急がずに長い時間、待った。


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