城主の突然の休暇 ③
巡洋艦のあの状態ならば、樹海ではなくて市街地で墜落し、街がいくつか一瞬で破壊され焼け野原になることは充分あり得ることだった。
ーーーー城側事故調、調査員による極秘調査レポートには…
全員のクルーが団結し、王太子クリストファー王太子をお守りする為に。
正に死力を尽くし暴漢達と自らの命を賭し、軍人として最後まで果敢に職務を全うしたと記載されている、
そればかりではなく艦長や乗艦の宇宙航海士達はーーーー
ジャパンの地の上空で、自分達の艦が引き起こす墜落爆発炎上事故による
「取り返しがつかない大きな悲劇」
二次被害を誘発せぬ為にも、死にものぐるい、其方方面も全身全霊で活動していたことが確認されている。
彼等は皆勇敢に戦い散っていった。
襲撃の真っ最中にもかかわらず、全力でコックピット眼下に広がる広大な市街地を避けた。
樹木と岩肌のうっそうとした「樹海」に宇宙巡洋艦の航路の進路を必死で向け、命懸けで舵を切ったのだ。
「よくぞあの満身創痍の状態で艦が最後まで持った」と、生々しい当時の状況が克明にレポートには記載されていた。
ーーーしかし、まさかのまさか、コロニー人の彼らは……!
墜落現場のそこがよりにもよって銀河でも極秘重要施設である極秘収容施設……
”「城」中央正面玄関” 〜に該当する場所。
「高次元入り口付近」とは夢にも思わなかっただろう。
だが幸か不幸か、その為に、「城」への直接テロ攻撃か?!との疑いが払拭出来ず結果、制空権保持の迅速なスクランブル発進がかけられたのだから本当に皮肉すぎる話である。
墜落方位が少しズレていたらダミーのための国防の演習地も兼ねるゆえ、ここまで迅速に救援活動が行われずに、クルーらの努力は全部塵芥となり、挙句に犬死にとなったろう。
クリストファー王太子殿下の暗殺も確実に成功していた。
しかしそうなならずーーーーー
結果論ではあるが、クリストファーが乗船した小さな飛行シャトルの船影が、発進した実験機の緊急レーダーに反応。
それだけではなく、富士の軽石状の火山岩への落下衝撃でちょうど良い感じで分離を果たしていた。
またギッシリ生い茂る木々のたわみが、彼の致命的な怪我を防ぐ奇跡のクッションとなる。
広大な天然の迷路迷宮とも言える恐るべき樹海に放り出された、極小さな「緊急避難用カプセル」。
最初から飛行シャトル船影が捕捉されていたが故に、早期場所特定が成功、発見に大いに役立ったのである。
衛星からの探査と、無人偵察機によるレーザー方式による特殊レーダー探査方法で、実際直ぐ側まで最初から地上部隊として配置されたと思われる様子の暗殺集団暴漢達がジリジリ、王太子に迫っていたのが確認されていた。
信繁班以外にもいる連携を取った、地上班の土地勘のある特殊部隊隊員は、ゆうゆうと訓練通りのフォーメーションで彼らを制圧・排除することに成功した。
しかしーーーー敵も強かった……!
よって奇跡としか言いようがない、ほんの僅かなタッチの差、総力戦により王太子救出に成功したと言っても過言で無かったのである。
宇宙巡洋艦乗員・乗組員達の持つ恐ろしいまでの強運と、冷静な咄嗟の判断が多くの何も知らない、のんびり平和に日常を暮らすジャパンの数多の市民を救った
命を賭した勇気が、かけがえのない彼らの宝、王太子の生命だけでなく、無辜のジャパン市民の、生命財産を守ったのだ。
……
レポートには他に、襲撃されたクルーのいまわの際の最期の行動と状況までもが 正確な状況証拠と共に調査、再現記録されている。
どっしりとした体躯の巡洋艦機関長は、クリストファー王太子が脱出するまで持ち場を守り粘りに粘った。
部下を指揮し自らの職場を死守、艦にとって最重要な機関部……
心臓と言って良いエンジン、動力部を守り切った。
しかも宇宙巡洋艦搭載の、万が一、もしもの時の為の自爆スイッチが押されない様、勇猛果敢に奮戦した。
彼の最後はまるで「伝説の弁慶の最期」そのものだったとある。
優秀な技術を保持する宇宙航海士達はーーーー全員、一等航海士以下……
目の前の操作レバーや操縦桿を、両手でしっかり強く握りしめたまま事切れた。
巡洋艦を指揮した艦長は、自らの艦長席を最後まで死守していた。
それは何故か?
様々な艦内最重要プログラムシステムが構築されていたのだ
本丸の此処を押さえられては艦防衛システムは丸裸で取り返しがつかない。
彼は躊躇うこと無く、メイン操作パネルが誰にも以後操作できぬ様、自らの手でシステムそのものを破壊し艦を守ったのである。
その後、暴力で拘束された彼は、拷問されたが復旧を断固拒否、銃で蜂の巣にされていた。
ズタズタになりながらも偶然かろうじて生きていた、艦内カメラ防犯システムにより事件当時、艦内で何があったのか?
城の誇るコンピュータールームスタッフで全データをサルベージ解析、映像再現……
つなぎ合わせた結果、状況が全てわかったのである。
飛行シャトル格納庫に通ずる非常ドアは、どこも固く施錠され閉鎖されていた。
襲撃者は、高温のレーザー熔解バーナーで頑丈に分厚くふさがれた通路をぶち当たったその都度ご丁寧にも決して諦めず、恐るべき執念で超金属製ドアの扉を破壊して進んでいた。
大穴を開けながら脱出用カプセルに向かう王太子を追撃したのだ。
全ての非常ドアの脇には、新ロックコードナンバーを手動で入力、王太子を逃がす為、扉の内側に「生きた壁」
〜盾として勇敢に留まった、まだ新兵の様に若くあどけない顔立ちの乗務員の亡骸が必ず無残な状態で横たわっていた。
キャサリン王太子妃を含むーーー彼ら達は全員が全員、我が身を犠牲にし恐れずに迫り来る恐怖を冷静に撥ね除け戦い抜いた。
キャサリン王太子妃も、自分が生き残る術は考えても居なかった。
全てはクリストファー王太子生存の為に、そうして途轍もない尊い犠牲と引き替えで
「代償」として得た……僅かな時間稼ぎ
”時”が功を奏し
クリストファー王太子は、荒れ狂う凶行真っ最中であった宇宙巡洋艦内部からただ1人、辛くも脱出することが可能だった。
「この美しいーーー大きな菊花は……
勇気ある貴方方が救って下さった、この街の地元の方々が丹精込めて、ここまで育て上げた名花です。
どうかお受け取り下さい。
富士の聖地でーーー安らかにお眠り下さい。
このご恩をーーーー
私は生涯 決して忘れる事は無いでしょう。
城主は 深々と一礼した。
1度も会った事は無い 遠い異国の軍人達だが、艦と、自らの命運を共にした、誇り高い乗務員としての矜持に尊敬の念を抱いた。
命を賭してまで職務に殉じた彼らの願い。
いかに無念だったかの胸の内を思うとーーーーーー
……今から遂行するーーーーー
営々と創設以来、私の手で連綿と続行されてきた職務を
私は 安い情に流され甘い顔で、安易に進めるわけにはいかない。
さて どうしたものかしらーーーーーー
深い苦悩と煩悩〜迷いが……
何度振り切ろうとしても重苦しく、心に押し寄せるばかりだった。
胸が苦しい
心が痛い
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城主は再び白龍に騎乗し、光学迷彩を発動させ富士の裾野の某、白龍お気に入りの美しい水質抜群の湖に到着すると装置を解除、優しく声がけする。
「ちょっと待っててね?白龍…!
貴方の背中の邪魔な鞍、外して上げるから〜」
城主はポケットから小さな装置を出してピッ!!ーーーとあるボタンを押す。
スルリッと白龍の背中から……
人間が騎乗する時専用の特殊な鞍が緩んだのが見て取れる。
「よっこいしょっ〜っと…っ」
『〜やれやれ、もう少し軽量化を図らないと重くてしょうが無いわ!
帰ったら不夜城のスタッフ〜
瑠架が良いかしらーーー?に、重量問題について相談しなきゃだわ?」
彼女の言う「不夜城」〜は、城を支える特殊兵器や医療機器その他を専門で研究開発するセクションの隠語である。
瑠架というのはその中で若手エースの研究主任の事。
城自体が丸々秘密機関であるのだが、そのまたさらに上を行く極秘研究所である




