城主の突然の休暇 ②
「おたくねぇ、使用しすぎですので、サーバーはともかく後、色々と注意していただかないと!!」
様々な拡張工事(亜空間仕様の)必要だと話し合いが持たれていたのだが、業務の確実な中断を考えると迷いが出ていた。
で、騙し騙しなんとか使っていたのだが、最悪な事に最近とみに反応が鈍くなり弱っていた「旧式人工知能」、そっちも連動してパーン!!
……あえなくクラッシュしてしまったのだ
ーーーー全くヤレヤレである。
セキュリティーシステムが厳しすぎる設定の為……
今日1日は回線の復旧(安全確認含む)は恐らく叶わないという事だった。
人工知能回路回線も新型にこの際交換するので、クッタクタな海藻みたいに老朽化したアナログなオンボロオールドケーブルも取り替え、メンテナンスと操作実験もいると言う。
そんなこんなの色々なブラックボックス箇所がガパッと、総取っ替えとなり、内蔵の特殊チップの調達に、1日程こちらも時間がかかると言う事だった。
膨大な予算が新規でたっぷりつけられているので、資金的に全く問題がないと言うことで、この際あちらこちらを順次、修理保守点検に入る事になった。
とりあえずの修理第一号が城主の執務室。
そう言うことで、どうやら今日は丸一日仕事になりそうもない。
仕方が無いので……たまりまくって、人事部から再三改善命令要求が来ている有給休暇を、仕方なく1日分、消化することにした。
「大体仕事しすぎです!!」
ーーーと秘書課 大ベテラン秘書及び、偶々電脳書類の確認に朝も早くから来ていた忠実すぎる男「信繁」
「こんな時に限って何故居るんだろうか?」
〜な、いざとなれば理詰めと正論でどこまでも追求し出す、喧しい信繁にも捕まってしまう。
双方で結託され、諸手を挙げて執務室をシッシと追い出され、偶々巡ってきた有給休暇の今日。
降って湧いた休日故、取り立ててする事も無い。
「まぁ確かに戦闘中にその部分……!
お○○(自主規制)にビーム砲や火器、ぼすっと空対空ミサイルでぐりぐり集中攻撃されたら流石に痛そうで可哀想だわね〜」
強面の龍の彼らだって痛いものは痛いのだ。
それじゃあーーーと、久しぶりに白龍と樹海に出かける事にしたのだ。
それが今朝方の騒々しい出来事である。
彼女が 白龍の元を訪れることが出来た理由は、以上の通りであった。
**************
『おねいさま方 恐るべし!』
ニンマリ得意そうに微笑みかけてきた仕掛け人の彼女らを思い出し、城主はブルッと震えた。
『あの方々には負けるーーー永遠に勝てる気がしないわ!』
ーーーーー何のことはない。
結局そのーーーーーようやく訪れた休暇も、とどのつまり・・・・・・仕事。
最後まで ほおっておいた宿題ーーーーー
白龍のお世話で丸々潰れたのであった。
城主は非番、休日だったので、いつもの制服姿では無く珍しい私服姿である。
白龍とのデートなので髪はいわゆる「くるりんぱ」で軽く整え、メイクもサバサバしたアウトドア系日焼け止めをメインに考えた、香りを嫌う龍のために最低限の味も素っ気もないものにした。
コーディネートも特にコレと言った華美な格好では無く、ブラックの膝下までのストレッチパンツにホワイトのトップス、馴染みの良いブラックチュール、レース素材のロングジレを組み合わせた軽装である。
無彩色系でまとめ、足下は艶のある踵が低いアンクルブーツでしめる。
「後は白龍に乗る時は専用のコートを着ればいいーーーと」
城主とすれ違う皆が見とれた。
超軽量上空飛行用防寒具と私物荷物ーーー……
お弁当と、樹脂製ボトル飲料。
もっとも この2つは自分でセレクトした物では無いのだが。
今朝方、執務室を追い出され『しょうが無いわね』
購買部で適当に見繕い、ガサガサ持っていくつもりだったのだが!
「ちょっとどこへ行くんです?!」
全然そつが無い〜異様に目敏い信繁にここでもとっ捕まったのである。
手際の良い優秀な信繁は、どうやら自分の仕事は既に終えたらしい。
予定を聞き出し、大真面目な顔でフンフンと頷いた信繁は怪訝そうな顔をする。
「ところで……城主はちゃんと用意しましたか?
〜自分用お昼ご飯??
ーーー白龍のオヤツだけでなく」
完全に疑わしげな瞳を向ける信繁に、待ってましたと言わんばかりに城主はフフンッと自慢げに肩をそびやかす。
「全部ここで買っていくから大丈夫よ、信繁」
「ーーーまた貴女は〜そんな事言って……!!
いつぞやは何買ったのかと思って心配していたら!!
食パン1袋ーーーだけでしたよねぇ?、何なんですか あれは!!」
「ーーーーそんなことないわよ?
ちゃんと、いちごジャムも1瓶用意していったし?」
「〜〜〜〜〜〜!!」
自慢げにエッヘン、得意げに返したつもりだったのだが、それを聞いて信繁は苦虫を噛み潰した顔で、ハーッとこめかみを押さえる。
「でーーー、塗るためのスプーン類、全く持ってかなくて結局『未開封』で持ち帰ってきたでしょう!!」
「ーーーー何で知ってんの?」
「〜〜〜〜うちの班に情報通『雅』がいる事、忘れないで下さい!!」
憮然とした信繁は、弁当などの展示販売されている生鮮食品冷蔵コーナーまで厳めしい顔つきでピタリ付き添うのだ。
「今日は髪をポニーテールにまとめないんですか?」
「ええ、コレじゃ変?」
「……いえ」
以後信繁は暫く黙り込む。
「……?」
『変な信繁〜……』城主は心の中で呟いた
「〜〜〜!」
ザワザワザワザワザワザワ・・・・・・!
何事か!!〜皆が遠巻きでヒソヒソ響めく中、信繁はパッケージの成分とカロリーをサッサと見極め、棚から上手に選び出すと有料袋も購入、自身の電子マネーでレジを通す。
「これは俺の奢りです、きちんと体、昼寝でも何なりして休めて下さいよ?
……
帰ってきたらあの宇宙空港で、俺が約束した紅茶煎れて上げますからね。
楽しみになさっていて下さい〜〜〜!」
そう言い残すと……!「全くこの人は!!」
信繁はズンズンズンズン大股の早足で、鍛錬場訓練先へ風の様に帰って行ってしまった。
チラッと見ると、軽く俯く後ろ姿での頬と耳の縁が赤かった。
「……?ーーー何であんなに怒ってるのかしら?」
コテンと、城主は細い首を傾げた。
城主は白龍に騎乗し亜空間を出る。
ーーー行き先は樹海の宇宙巡洋艦墜落現場である。
既にほぼほぼクリーンな状態、有害な放射性物質はないと確認が取れている。
白龍は、当初飛翔すらやっとの状態だったのだが、マイナスイオンたっぷりの清涼な清々しい空気に次第に気分が上がってきたらしく嬉しそうである。
リラックス状態の時よく行う行為の1つ〜髭の活発な動き。
クルクル動きが滑らかになってきた事にホッと胸をなで下ろす。
墜落現場に到着しーーー
弔意の品々を黒焦げ微かに未だ宇宙航空機燃料特有の香りが漂う地面にそっと手向けた。
広範囲に及ぶ恐ろしい真っ黒な黒焦げの大地。
宇宙巡洋艦の機体自体は事故調査委員会の名の下、全て巨大な倉庫内に残らず移動され終えており今現在は何もない。
ただ墓標がわりの悲劇的事故を悼む、小さな石碑のみがポツンとあるのみ。
秘書室大ベテランが支度してくれた、素晴らしく香しく香り高い見事な菊を石碑の前に献花する。
個人的にも購買部生花売り場ケースより購入の地元産 美しい菊花の花束を供えた。
汲み経てでボトリングされた富士の清らかでなめらかな雪解けの清水を石碑表面に上部よりコポコポ注ぐ。
水晶の数珠を手に厳粛に手を合わせる。
ーーーー乗務員の遺体は皆損傷が激しかった。
回収後、手厚く、まず防腐処理をほどこす。
人物履歴データーを元に、生前に限りなく、ほぼ近い姿を再現立体映像を電脳機器内に作り出した。
〜有機物を清浄にクリーニング、再現立体映像を元にし……
遺体欠損部分は細胞レベルで完全に質感をそろえた「人工筋肉」「人工骨」を各各高速培養したもので補った。
人工皮膚組織の高度特殊移植技術で、傷などを殆ど目立たぬ様に整えた。
城が……こうした一般では実現不可能な分野を、完璧に行える技術を総合的に保有する特殊施設だったのが幸いした。
「柩」には施設職員全員総出で、美しい白と黄色の菊花を隙間無くギッシリと手向けた。
柩内部は、常に低い低温温度設定で、必ず一定に保つプログラムーーー
ご遺骸の腐敗予防の為であり、様々な事を想定後、冷却システム人工知能搭載機器に細かく入力された。
その後……
遙か何光年も彼方の祖国への、厳しいワープ航法による長期輸送に必ず耐えうる状態へと厳重に留め具で梱包、密封も行われた。
クルー全員分の詳細で完璧な「検死報告書」〜
「宇宙巡洋艦撃墜墜落事件報告書」も共に用意している。
コロニーD-01政府がご遺族に公開するはずはないが、それでも国のトップである要となる国王だけは、詳細を知る必要があると城主は考えたからだ。
優秀な誇り高き船長以下全クルーがいかに全身全霊で戦い奮闘し、自分の子息を守るために何があり、現場でどういう事が起きていたのか?
コロニーD-01への宇宙搬送手続き書に、これら全てを宇宙連邦政府承認、公式内容証明書付けで同封。
ジャパン政府公認、最重要極秘書類発送の為の、正式手続きを行った。
よく晴れた穏やかな日の宇宙空港滑走路にて。
最後までの付き添いの、城総責任者所長の自分以下〜
関係者全員にて最敬礼での見送りの後、ジャパン政府専用高速宇宙船にて、勇敢な英霊となった彼らを、遥かな愛してやまない祖国へと送り出した。
城、最高責任者として出来うることは全て行った
ーーーあの報告書があれば……
真実が闇に埋もれ決してこの先公表されないとしても……!
少なくとも、亡くなられた故人の名誉と業績は必ず保たれる筈。
後に残された……ご遺族の方々が。
おぞましき謂れなき風評被害にて、今後決して粗略な扱いをコロニー政府から受けない配慮をするのは、至極当然の行為だろう……
「何故なら彼らはジャパンの街を守った『救世主』だから」
城主はひっそりと呟やく。




