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ウィンストンとの対決

キャサリン王太子妃はすでに……

 

ウィンストンらが行った、緊急手術を行った時点で不幸にも時間が経ち過ぎていた。


人工心肺等の機械への接続処置こそ行えたもののーーーーー完全に脳死状態。


やむなく肉体の生存だけに特化した最低限の機能を活かす人工脳とシンクロさせているが、それもそんなには持たないであろう。


そもそも人間の肉体の構造としては、新鮮な血液を潤沢な酸素を脳内やその他臓器と筋肉に心臓のポンプ力が頼り。


鼓動の圧力によって、絶え間なく隈無く供給するシステムがなんらかで欠損すれば、数分で脳は主機能が破壊されてしまう。


キャサリン王太子妃の場合は、酸素運び屋である大切な血液が、頸部切開により1度に大量に消失された失血状態だった事。


結果、本来送り込むはずの新鮮な血液が肉体内部に相当数が存在せず、空焚き状態のポンプとなり心臓は手も足も出なかった。


結果、大量に酸素を必要とする脳はギブアップした。


医学的に心肺停止状態と心拍再開の患者数をグラフにした、古代の有名な図表が存在する。


「ドリンカーの救命曲線」である。


また主に外傷による死亡率、呼吸停止や受傷からの経過時間と死亡率の目安を同じく図式した、もう1つ有名どころのザクっと方向性を指し示すデーター


「カーラーの救命曲線」である。



2つとも古いデーター故に、現実の救急医学会では既にあまり用いられることは少ないが、「一応の目安」としては善いとされている。



カーラーの救命曲線は、患者が受傷後1時間以内に手術室に搬入、手術に向け動いていた場合、救命できる場合が、実はかなりの割合に登ることを目安化したものだ。


あくまでも”目安に過ぎない”とは言えーーーー…


この生存を決めると言われる「運命の1時間」を「ゴールデン・アワー」と呼んでいる。


2つのデーターは それ程ーーー


患者への応急手当〜、処置の初期対応の重要性を共に力説するものである。


結局は救急隊が到着するまでの、現場に居合わせたバイ スタンダーの心肺蘇生法〜


「技術の有り無し」が生死を分ける。

 

結局、ほんの小さな偶然が重要となるのだ。



尚 脳は、臨床的な心停止に陥った場合、3〜4分の血流停止で重大な障害を受ける臓器である。


キャサリン王太子妃は、肉体は辛うじて生存し何とか美しいままで生還、戻ってこられた。


しかし〜 

「脳機能だけは」 


ーーーーーどうあっても回復出来なかった。



記憶は、とうに破壊されており、誰の事も何も覚えてはいない。


城の、現代最高水準の高度医療体制、最高位の術者における医学を持ってしても……


”素晴らしき秀才だ”と、銀河でもつとに有名であった、彼女の優秀な頭脳は修復不可能であった。


現在は頭部重要部位に仕込まれた人工脳ーーー

人工知能チップの電気信号プログラムと、全身を巡る高額の人工血液の循環で生体の、生物としての損傷のみが防がれた状態。


見た目で一見「それらしく」、あくまで肉体が機械的に活動している状態に過ぎない。

 


「城」、貴賓室ソファーにプログラミング通りに礼儀正しくすわるキャサリン王太子妃の姿。


城主は、自分と共に彼女の第一発見者である信繁班班員にガードされた取調室にて、施設内の殺風景な部屋壁面に設置の巨大ディスプレイから様子をモニタリングしている。


城主の差し向かいには、テロ襲撃犯リーダーであるD-01宰相の嫡男ウィンストンが着席している。


奇妙に落ち着いた様子で、簡素なパイプ製折り畳み椅子に悠然と腰かけているのが不気味としか言いようがない。



信繁班人員による厳重な銃火器による重装備の警備体制下、城主も顔色を変えず平素の調子で彼を観察している。



『ふぅん……』


 

確かに、見るからに育ちが良いと思われる気品ある表情……


しなやかに真っ直ぐに伸ばされた姿勢。


物怖じしない涼やかな風貌。


ただーーー鋭く、瞳の奥が底光りする「目」だけが……

 

この人物が、単純な見かけ通りの美青年でない事を如実にあからさまに物語っていた。



確かに「美しい顔立ち」は、クリストファー王太子とは又違うタイプの、黒髪の端正で若く整った風貌だった。



両親の、顔立ちの良い部分のみ遺伝で受け継いだのだろう。


但し「デザイナーベビー」で、密やかにDNA操作されて生誕したのかもと疑いすらあるその整いすぎる美貌。


美男美女で 地球でも有名なーーー「両親」


ウィンストンの両親はごく若い頃〜「ベストカップル」


……「ファッションリーダー」と。


彼らは二人とも理想の夫婦、親として、タブロイドジャーナルで毎号の様にもてはやされていた為、城主も流石に彼らの顔をクッキリと知っている。



ウィンストンの、絹糸の様なサラサラの美しい艶めいた黒髪は、父親似。


逆三角形の綺麗な顎のフレームは、元ミス銀河インターナショナル大会……!


銀河最高の美女の栄誉に輝いた「クイーン」

ーーーー多分絶対 母親似だろう。


最初の息子にはありがちな事ではあるが、本当にとてもよく似ている。



頭脳は「名宰相」と宇宙史に記載される「天才」〜

戦略家の祖父の「隔世遺伝」といったところか?


彼の心の熱さを彷彿とさせる。



『〜〜〜〜参っちゃったわねぇ……!』


王太子殿下の言うとおりだ。

 

これでは誰もがひれ伏し魅了されるだろう……!


静と動の、冷たさと熱さの、両極端のパワーが備わっている。


加えて「神童」ーーーと

 

優秀な頭脳を大勢の教育機関専門家達から大絶賛された男ーーー!


 

『ぁーもぅ、厄介にも程があるわ?!』



何でこんな面倒くさいワケありな人物ばかりが、ワラワラドヤドヤーーー


呼びもしないのにセッセと城に押し寄せるのか?



はぁーーーっと溜息をついた


もはや人智を越えている。

超常現象としか思えない!!



『厄払いのお祓い、した方が良いのかも知れないわね!』


密かに収監されたウィンストンに、色々思うことがあり今回は最初から城主自らが直接直々に事情聴取を行った。


「ーー以上です。

何か施設説明で わからないことはございますか?」


 

ざっとの「城」特殊収容施設内、つまり監獄の仕組み及び、今後の彼が持つ「法的な権利」を連邦英語にて告げる。



「随分丁寧なんですね」


微かに微笑むウィンストンは驚く程綺麗な発音のジャパン公用語で返事をした。



「ええ、ジャパンは古来より何でも馬鹿丁寧なんです。

 

よく不思議がられますよ?、他惑星の方々……に」


……と、ウィンストンは急にニコリと大きく笑い、口を開く。


 

「あんな強烈な『秘密兵器』があるなんてーーーー

ジャパンは結構酷いですね?


おとなしやかな羊の顔を被った〜ーーーなんとやらです」




城主はフンッと鼻で笑い、彼女も言語体系を変える。


「ジャパンは放牧産業が国策の国ではございません。

 

ジャパン固有種の狼も、とっくに絶滅しましたので既に居ませんね。

 

それから羊は結構気が荒く、御伽話のように決して大人しくないですよ?


羊飼いや飼育員を、ワザと頭突きで襲う凶暴なのも居ますが?

 

何故ーーー

そんな突拍子も無い諺が出来たのかが、ソモソモ私には理解出来ず、大いなる疑問ですけどね?

……

おっしゃる秘密兵器とはクリーチャーのことですか?


大体ーーー 

一般に知れわたっていたら、貴方の言うところの『秘密兵器』にならないでしょう?


この国の貴重な自然遺産の樹海を散々好き勝手破壊し焼いたくせに、勝手に都合よく事実を捻じ曲げ、何言ってるか私には理解不能です」


「あれの操縦〜騎乗は貴女でしょう?


鱗が固いから……!

銃器のたぐいが まるで歯が立ちませんでした。


あの時は夕闇のトワイライトタイムーーー!

 

有視界飛行でも元々黒い形状は富士の景観と同化してしまい識別しにくい、加えてあの激しい上昇気流だ。


貴女方は、わざとあの時間帯にーーーーー


私達を巧に悠々と誘い込み、ピッタリ標準を会わせましたね?


全く、上手く地の利を使った作戦にやられましたよ」



「ーーーゲーム感覚で話すのは止めていただきたいですね。


何かご自身について正義の味方が如く錯覚、勘違いしておられる様ですが、我々の認識では貴方はただの凶悪な人殺し、テロリストです、非常に不愉快ですね。


こちらは命懸けですからね?

極悪人達の命を取らなかっただけでも感謝して欲しいくらいですが何か?

 

それに貴方方が勝手な思い込み及び激しい迷惑行為で、多大なる損害を我々の国に一方的に掛けた側ですが?


もう一度言いますが、我々の方がハッキリ被害者です。

 

本当にもう……認知の歪みが酷すぎて、呆れかえって言葉なんかありません。

 

貴方はまともではありません。


勤勉実直な我々は、『苦労知らず』の我が儘放題の呑気なお坊ちゃまとは全く違うんです」



城主は論調に少しも流されることなくピシリと切り返す。



「クリストファー王太子殿下には、精神的肉体的に、相当ーーーー 


実際かなりの無理をさせました。


それもコレも全部貴方が悪いのです。


お陰で私は散々に、ウチの可愛い職員に”血も涙もない人でなし!!”、と罵られましたけどね。


でもまぁリーダーは嫌われてナンボ……!

 

嫌われるのがそんなに嫌だったら、重責あるポストなんか最初から引き受けなけりゃいいというだけです」


城主はジャパン某地方の方言を取り混ぜ、皮肉と慇懃な態度でニッコリ笑う。


「そうですね」

 

襲撃犯リーダーの男〜、ウィンストンも上品に笑み返答を返した。



「クリーチャーは熱反応対応のロケットの追尾システムにも全く引っかかりませんでした。


どうなってるんですか?あれ

 

まさに生きた究極の兵器ですね。

 

是非我が国D-01にも一体欲しいです」


 

「何を馬鹿な事を」

 

突っ込んだ質問にさらに城主は鼻で笑う



「あれは愛情が無ければ絶対に使いこなせません。


今の我欲で目の曇りきっているあなたには無理ですね」


やはり挑発に乗らず、城主はバッサリ切り捨てた。

 

それからーーーーゆっくり言葉を選びながら続けて言う。



「言っては何ですが、あの子よりも他の方が〜


ーーーより音速限界値の高速飛行が出来ますが?


しかしあなた方と、火器による銃撃戦の交戦が予想されましたので非常に可哀想でしたからね。


『旋風』だけでしたら、他でも充分よかったのですがーー……ね


今回は、戦闘能力が桁違い、より強力でダイナミックなパワーと破壊力を持つ最高の火炎放射能力を持つクリーチャーを出動させました」


ウィンストンは不気味に ピタリと黙り込む。


城主も瞳の奥を覗きこむ様、すぅっっと目を細め話しかける。


城主の背後に控えるフル装備の特殊部隊隊員達には、この世ならぬ「魔性の者同士」の牽制

 

ーーー威圧感剥き出しの戦争に見えた

 

見ていて一瞬 ブルッと皆、体が震える。

 

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