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黒龍の楽しみ

特殊部隊による拘束後ーーーーー


「回答を要求した、知りうる全ての質問」に嘘をつかないと約束させ、こちらの交渉も成立した。


これにより展開された樹海における戦闘は 全て終結したのだが。


さて戦闘終結後〜戦闘艦コクピット正面全面を覆う耐熱強化ガラスの向こうでは


〜気まぐれにボウボウと 退屈げに。


ーーーガラスに弱い火炎を吐きかけては、すっかり冷え込んで来た樹海の冷暖の温度差を利用し、お気楽に暇つぶしをして自由に遊んでいる黒龍がいた。


賢い黒龍は現在すっかり”やる事”が無く「戦闘艦外部の見張り」、番犬役ならぬ番龍役を「ウフフお願いね♡」

騎手である大好きな城主より任されていた



「輪っか」だのーーー「ハート」だの

 

様々な形に変化する煙で1人遊びを決め込んでいたのだが、あまりにも時間がかかりすぎて退屈すぎる。


「つまんなぁい……」

 

「あ〜〜ぁなんて退屈なの……?」


驚異の潜在能力と恐ろしげな風貌に似ず、性格は極めて穏当で賢い、本来人なつっこい、おとなしい龍である。


特に頭脳明晰な才能〜

様々な局面で見せつける賢さは毎度周囲を驚喜、歓喜させている。


「小学校高学年のテスト位なら楽勝で全問正解よ!」


漢字テストや、「〜式 計算ドリル」をやらせ何処を目指しているのか?


ーーーという真面目なツッコミはさておき



「凄いよコイツ!

アライグマとレッサーパンダ〜見分けられるぞ!」


非番の日、待望の初デートの際……!


動物園の檻の中にいるレッサーパンダを、アライグマならまだしも。


「え〜〜〜タヌキが檻にいるよ、何で〜?」

 

ついツルッと失言し、この言質を取られて当日遠足中の小学生軍団に捕まったのである。


基本的に彼らは大人に非常に厳しく五月蝿い生き物である。


ワラワラ丁度、遠足絶賛フリータイム中の、何か面白い事は無いかと目を爛々と輝かせる手強い集団。


彼等は普段両親及び教師から(ネチネチ)細かい指示だしされている分、いざ大人側の失敗に出会うと物言いが容赦なく手厳しい。


加えて彼等の声は非常に美しく良く響き、美声の最大到達範囲は半径百メートル程度なんぞ楽勝だ。


口さがないお喋りなポンポン弾ける元気いっぱいの男の子達ーーー!


こんな素晴らしいチャンスは又とない♪


まるで鬼の首を取ったかに引率の先生方に、ねえねえねえねえねぇセンセーセンセー♪と、四方八方響き渡る声でご注進だ。


〜尚、彼等にしてみれば、あくまで自身は「正しい行為」


「間違えた大人に正しき事を、自分はチャンと教えてあげている」


そういう言う善行、あくまで胸を張る誇らしい認識、よって決して怒ってはいけないのである。



「狸だって〜〜〜……!」


「ねーねーセンセーーーー聞いて聞いてぇ〜〜!!

この大人のおにーさん、レッサーパンダをねー!タヌキって言ったーっっっ!」


「タヌキタヌキッッ……!!、タヌキだって〜〜!くすくすくすくす〜〜〜〜」

 

「え〜〜〜〜???大人なのに〜〜〜!」


「へ〜〜〜ん!!」


「信じられな〜〜〜い!」


「タヌキだってー♡おっもしろー」


ーーーーーゲラゲラ大声で引率の先生に言いつけコロコロはしゃぎまわり、この年頃共通する甲高いよく通る声で口々に指摘。


キャァキャァとビシーっと指さしする、賢しい物知りの子ども達に取り囲まれた事を遠い目で回想した研究員Aは、極めてお利口な黒龍の素晴らしさに、つい感涙を零した。


 ……


「それは無い!!」


結果激怒の彼女に、その場に危うく置き去りにされそうになっている。

(もとい振られそうになった)




「〜〜ホント凄い! 

薔薇とカーネーションの違い判別出来るんだぜ!」


誕生日に大真面目に「赤いカーネーション」花束を贈りーーー


「私ってもしかして『ママ』?

〜〜〜〜今後ママの役割をしろって事?!」


彼女にビックリ仰天、怒る彼女の誤解を解こうと必死に頑張った経験を持つ研究員Bは、感嘆したのだ。


元々興味が無い、未知の知らないジャンルでちょいと失敗したからと云って、決して悪し様に文句を言ってはいけない。


彼らにとってフラワーショップにて販売され、名札を見なければーーー


何枚も、くしゅくしゅクシュッと花弁が密集、そして特に花色が濃厚で艶やかな真紅であるならば、洩れなくそれは全て「薔薇の花」なのだ。



そんな賢い黒龍は現在すっかり”やる事”が無く……


戦闘艦外部の見張りを任されていたとはいえ、今や思いっきり退屈していた。


激しい空中戦〜死闘を考えれば当然、”アドレナリン全開のこの体をどうすりゃ良いの?”




ふにゃあああぁぁぁ〜〜〜と大あくびをしつつ……

 

巨大とぐろをドロ〜〜〜ンと緩く巻き巻きし、樹木をペシッと器用にカワイイ四肢でたぐり寄せる。


いい感じに、狭い場所に上手に長い体を押し込み絡みついていた。

 

ーーーニャンコで言うと”香箱座り”?


時折枝がペシペシ弾くが気にならない様子だ


〜案外と気持ちよさげに見える。


そうーーー黒龍はトコトン、リラックスし「本日の業務」は閉店ガラガラなのだ



龍は「特殊部隊・特別隊員」として、立派にカード式身分証明書も発行され、職員と同様、「正規登録」されている。


城に帰宅(?)し、専属飼育員にうんと優しくオイルで、お髭のお手入れをされて、就業後の恒例の鱗のメンテナンスと腕マッサージを毎日施される。


敵対者からの銃火器での傷跡や、偶に自らの炎がかかってアチッと火傷する事がある為、胴体の健康診断チェックも兼ねて行われているのである。


後は「最大のお楽しみ」ーーー!!


ヨシヨシと飼育員皆にメチャ可愛がられてから「美味しい夜食」。

 

某専門フランチャイズ店フライドチキン、特製骨なし!が、今日のような場合


残業ご褒美で、お腹がはち切れそうになるまでいただけるのである。


なお何故骨なしかと言うと、以前食道に骨が刺さり、上や下への大変な大騒動になった事があり以後骨なしになったのだ


戦闘後は誰も……

「ダイエット」等うるさいことは言わない、



差し出されるチキンを、城主の手ずから優しく貰ってゆっくり味わいながら食べて、あとは飼育員による気持ちのいい丁寧な歯磨き後!

 

清潔快適に整えられた自分専用クリーンルームで、翌日訓練までグッスリタップリ眠るだけーーーー


ああーーーそんな戦闘後の羨ましいお気楽幸せ気分に浸り込み、うっとりと寛いでいたのだった。


尾を枝から垂らしゆったりと自由時間を満喫ーーーー


髭をピクピクと上げたり下げたり動かして遊びながらのんびりと主達の用事が済むのを待っている。


時折「まだかな〜」〜〜〜と鎌首をもたげつつ、金色の大きな瞳を細めては気長におっとり待機する。



『でもおそいなぁ……』


ーーーーまだかなあ


再びボウボウと炎を吹きかけてみる。



ぽぅん


器用にも「巨大なドーナツ型の煙」を作ってみる。



大きな口を全開にして、丹念にゆっくりガラスに炎を吹きかけて

 

「ヨシヨシ……今度も素晴らしい見事な煙が出来上がった♪」


黒龍は益々嬉しくなった。


「もっと上手になったら喜んでくれるかも!!」


〜急に心がわくわくし始める♡

 

「凄いね〜っ♡」と大勢に褒められる自分の姿がフッと頭に浮かぶのだ。


ちょっと得意になるのだ、クリーチャーだってそういう時は!!


「そーーーだ今度はもっと炎を強めてみよう!」

 

〜〜上手く出来るかな?


黒龍は頸をググッと……後ろ側にそらす



「せーーーの……!!」


ボウッッッッッッ〜〜〜〜〜〜〜……!



**************



艦が制圧され、全員拘束されたウィンストンの部下達



なお艦には撤収作業を城主より任され先頭を切り敵側データ解析等、テキパキ働く後始末係の班〜


彼等を率いる凄腕リーダー、テロで撃墜された哀れな宇宙巡洋艦の件で熱く冷たく怒り心頭の信繁がいた



「さてどうしてくれようか……??」


今回『城』より特殊装甲飛行艇が来るまでの到着待ち時間が結構あった


艦が制圧され、全員後ろ手にギチギチに拘束されたウィンストンの部下達



信繁の命令一下

コックピットガラス前にゴロゴロ芋虫の如くに全員集合

 

彼等目線では真っ黒の目を爛々光らせる恐ろしいクリーチャー、得体の知れぬ恐怖の塊である黒い龍の眼前



「さぁ今すぐ食え」

生け贄が如く仲間と一緒に転がされた


戦闘艦操縦席コックピット、安全巨大オール耐熱ガラス前だから一応は安全である。



「皆慌てるな、耐熱の強化遮蔽物があるから絶対に安心だ!」


〜と何度も何度も何度も率いた武闘派リーダー自ら、ガタガタ怯える、心が折れきった部下に言い聞かせる程の恐ろしさだ。


ぼぅぼうぼうぼう長時間、紅蓮の炎の攻撃に晒された。


なにせ火炎放射の武器以上の広範囲に、しかも気紛れに広がる大きな紅蓮の炎だ


繊細な前面ガラスを毎回毎回噴射で、ぼぉぅっ〜〜!


ペロリ真紅の炎の舌で覆い尽くす勢い。


黒龍が窓に暇つぶしにーーーー……


呑気で気まぐれな火炎をボウボウ吹き付ける度に


「ひいいいっっ〜っっっっ!!!」


心底心臓が縮み上がり 生きた心地がしなかった。



強化耐熱ガラスとは云え高熱で蕩け、いつ突き破るかしれず、全員、最後にはとうとう皆惨めに泣き出し失禁。


恐ろしさに耐えきれずテロリストの中には「う〜〜〜ん」、失神者が続出。


最悪の狂気を超える、悪夢を越えた悪夢であった。




ーーー後の、子龍と雅、談。


子龍

「信繁、爽やかで真面目な振りして、よくああいうヤベぇ事思いつくよなー」


「そりゃ普段全然怒らない人がキレると、もれなくあーなんですよ!」


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