襲撃者の制圧
城主は言うーーーー
「先ほどの黒龍との戦いで、大した戦力は既に残存していないでしょう。
発信器でアジトの場所も特定済です。
主犯格さえ押さえればこちらの勝ちで無力化できます。
〜にしても冷えて来たわね」
城主はブルッと一瞬震える。
「俺の水筒に、まだ幾らか温かな紅茶がありますが、飲まれますか?」
「いいわねぇ」
城主はうふふっと笑う。
信繁は水筒のコップで、城主は紙コップでーーー
仲良く並んでホットティーを飲みながら、頭上に惜しみなく広がる贅沢な満天の星を眺める。
「うわ〜なにこれ!美味しいわね〜〜!」
「じゃぁ……今度もっと美味しいのを煎れますよ?
お望みならば
〜これ時間が経過した水筒の中身ですし……
いれたては全然違いますよ?」
「それは楽しみだわ」
彼にフフフと楽しげに笑う。
まるで気紛れに地上に降りた月の女神のようだ。
信繁は隣にいる、自分よりも背の低い変人の上官をコッソリ眺める。
ふぅーーーーっと密やかに吐息を吐くと、水筒のコップの中身をグイッと飲む
『確かにいつもより美味しいかもな……』
疲れた体に染みこむ温かさ
ーーーーその理由は明らかだった
何だかしみじみと、ささやかだが 幸せな気分に包まれた。
「案外楽に行きそうですがーーー
慢心は思わぬ結果を招きますので、気を引き締めてかかりましょう。
今回の作戦、『5人会議』で書面での了承を頂戴してあります」
「手回しが良いですね」
信繁は城主にクスッと笑いながら話しかける。
「先ほど『5人会議』宛てに。
”ジャパンの内閣府も、今回の事件は黙認する”と、正式に通達されました。
”会議最年少メンバー”…が、如才なく、器用にいつもの如く手際よく。
意見を上手に纏め上げ差配して下さいました。
でなければ〜……!
フットワーク軽くこうはいかなかったでしょうね、全く感謝です。
『幸村』 行けますか?」
城主が彼の事を、信繁でなくハッキリ『幸村』と呼ぶ時
それは……
戦闘の「GO!!サイン」である
『腕が鳴るぜ』
信繁は思わず口元が綻んだ。
彼の脳裏を、今日の1日の出来事全てが駆け巡る。
ーーー彼等がこの国ジャパンで何をしたか?
”行いは円を描く”
償いは必ずさせるべきだ
**************
クリストファーを襲撃した暴漢達の居場所は、特殊レーザーを使用した特別なレーダー網と、こうした場合に有益、現在一般的な無音超小型無人偵察機
ーーーそれら数機の投入。
また決定打となった、城主自ら特殊銃で黒龍vs戦闘飛行艇との交戦最接近時、巧に撃ち込み取りつけた発信器にて裏付けがなされていた
ドローンは、廻すプロペラ音響がどうしても激しい為、ノイズキャンセラー機能をつけるにしても隠密行為の秘密作戦時の際は作業時期を選ぶ。
信繁と城主、黒龍は、子龍や信繁班の班員・及び別の歴戦の特殊部隊他班にスムーズに遅延無く合流した。
信繁は「実験機』に搭乗。
現地で既に先に潜伏展開していた特殊部隊精鋭「信繁班」のメンバーとハイタッチ、ホッとした明るい密やかな班員と樹海合流地点の暗闇で無事を確かめ合った
「信繁さんお疲れ様でした」
「よぅ、お疲れー」
「流石万能班長〜…ヤッパ無事でしたね〜〜!」
「遅いんで俺っち死んだかと思いましたよ?」
「「「ねーわ」」」
「しかし、よくこんな〜潜伏におあつらえ向きの穴見つけられましたよね」
「富士が大昔活火山だった証明だよな」
「この土地には、こうした未知の知られざる巨大洞窟がまだまだ実際は有るのかもな。
ーーー普段は俺達の庭みたいな気で居るがーー?
〜気を引き締めてかかるぞ?ーーーーいいな
……GO!」
スッと信繁のキレのあるハンドサインで、”他班”班長が指揮する人員のと合同作戦を決行する。
スルリーーー目出し帽で素性を隠す。
「信繁班」班員は、普段日常の綿密な訓練で気心の知れた仲間と、完璧にお互いタイミングを合わせ、今回の「ターゲット」に、するすると音も無く黒い影の如く忍び寄った。
樹海奥深くーーーー
”じゃいくわよ……?”
”宜しくお願いします”
”黒龍、GO!"
グルルルルゥ……
城主からの「指示」で、黒龍の頸が大きくーーーーー後ろにのけぞる
相手が潜む宇宙戦闘艦に黒龍は火炎放射1発、ドロリ大きく侵入経路を開ける。
3000度を超す超高温……!
装甲の特殊金属はあっけなくダラダラ、蕩けた水飴のように崩れ落ちる
”GO!”
不夜城謹製、城が誇る特殊内部研究施設が造りあげた戦闘装備。
戦闘員は全身、頭の先から足下まで優れた耐火耐熱防弾構造の軽量特殊繊維仕様の防具に身を包んでいる。
高温に恐れをなし怯む事無く一斉に、中に雪崩れ込む。
信繁を先頭にした特殊部隊が内部ガードを急襲する。
”子龍!”
”ほいよ”
ガゥン……!
戦闘用最新型ドローンは全て信繁班が誇る優秀な「狙撃手」
実験機副機長も兼任の子龍が、一撃で次々に急所狙いで仕留めていく。
城内で、「悪魔と契約した撃ち手」
”魔弾の射手”と噂される彼専用、高度に微調整、カスタマイズされたエネルギー銃が早撃ちで炸裂。
躊躇いすら無い、清廉な美しさすら漂う勇壮な立ち姿、子龍の射撃一連の動作には一欠片も無駄が見当たらない。
最早障壁が無くなり、安全となった艦内を、信繁は拠点目指して駆け抜ける
「……!」
「…」
途中ーーー”運の悪い見張り”
何人かに出会ったが、彼等はアッと叫ぶ暇も無く、信繁の繰り出す裏拳で床に沈められた。
”ここだ、雅ーーーー行け”
”はい!”
信繁の指示ーーーーハンドサイン。
雅が目的の電子式扉に密やかに取りつく。
ジェル状の透視パットを張り、中の様子を再確認する。
”……間違いありません”
信繁は軽く頷くと厳重に封鎖された電子ドアを、腕にはめた端末操作でウィルスを送り込み直接攻撃、装置に行動制御盤誤作動を起こさせる。
ーーーースゥ……
プログラムを乗っ取った指示で、ほんの僅かな隙間を空けさせた。
”GO!"
「投げ技」を追求ーーー散々訓練し尽くした絶妙なタイミングと”向き”
コン……コロコロコロコロ……
雅が、隙間から殆ど音もなくスローイン、室内に音響閃光弾〜フラッシュボムを転がせる。
キーーーーーーーーーーーーーーーィンンッ
狭い司令部に音響閃光弾を放り込み、激しい音と強烈な光で部屋にいた人間の肉体が硬直した。
この隙を狙いーーー
プログラムに扉を開けさせ、重心を低くした信繁が一気に躍り込む。
他メンバーはリーダーの彼に続き、電光石火で一斉にダダダダダっと雪崩れ込みとどめを刺す。
ドスッという音すら鈍重な、驚異の重量級、上段回し蹴り。
瞬殺の拳を肉体に打ち込む鈍い音が響く。
ひねりと回転動作を高速で繰り出す信繁の動きに、相対する相手はまるでついてこられなかった。
攻守、あるいは防から攻
彼はこの二打、相反する技がほぼ同時にかけられる特技を持つ。
アッと思ったら既に信繁はほんのすぐ目の前に居る。
大方は、防御も攻撃もせぬまま、あえなく床に倒れた。
しなやかな大型の猫科の猛獣が持つ柔軟性と凶暴性、信繁は爆発するカミソリのような破壊的瞬発力を遺憾なく発揮する。
かつて競技会で、大型の肉食獣によく例えられた。
一人だけ辛くも防御で間合いを取れた者が居たものの彼の前に敵はいなかった。
殺傷能力のある武器の使用は許可されていたものの、それを使う前にほぼ完全制圧していた。
間合いを計り、体が小さく一見弱々しく見える城主。
一瞬の間隙をぬって主犯格とおぼしき男性の背後に、軽々蝶のように回りこむ。
同時に、頭部にしなやかな腕を瞬時に巻き付け、ホールド
人には急所がある
城主はそうしたポイントを知り抜いている
知は力、とばかりに容赦なくその部分に攻め込む。
今はスポーツでは無い、切った張ったの「戦闘」だ。
男の柔らかい左顎下に、ためらいもなくスティック型戦闘用レーザーソードを巻き付く鞭のように、しなやかな左手でギリッと突きつける。
一旦「技が決まった」場合、振り解くことは先ず不可能。
普段信繁相手に散々戦闘訓練していた為、彼女は知り抜いている
どれだけーーーー「苦しい」のかも。
「投降しなさい!ここはもう おしまいよ?」
ーーーー綺麗に笑う
安全装置である電磁シールドを、カチャリと解除する身の毛もよだつ音を、あえてゆっくり響かせて聞かせるのだ。
男の喉がゴクリとーーー”ウィンストン”の、皮膚と筋肉が上下するのを確認。
ソードは現在下側から斜めに、柔らかな骨下に入り込んでいる。
急所をぴたりと外さず……頸部動脈を的確に押さえつけている。
はたからはほんの僅かにしか見えない「力」が。
対象者にはギリギリと、まるで魔法にかかったかの如く振り解けない。
城主は、よく通る明瞭な声で、鋭く啖呵を切った。
「今から私が言う事は、けっして脅しでは無い!
部下達諸共、祖国に送還されたら最後ーーー!
裁判無しで極秘裏に処刑されると今ここに情報が入っている!
一族赤ん坊から老人まで、全てに累が及ぶ!!
今なら私が与えられた特権全てを使用、必ずやそれらを阻止することが可能だ!
私にしか出来ない事!
で、取引だ!!
今回の事件は偶然だったとは思えない。
我々の『城』の位置情報を知り得た上で、今回の撃墜計画を立てたのかどうなのかがまず知りたい!
一連のジャパン領域内における襲撃は!
高貴なクリストファー王太子様の玉体が、幸運にも御息災な為、超法規的処置で不問に処す!」
静まり返る室内
男~暗殺襲撃者首領のウィンストンは応じ屈服し、武装解除を受け入れた。
ーーーーー深夜における戦闘は、これにて無事終結した。




