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空中戦

信繁はマイクロインカムで何か誰かに指示を出し……!

 

素早くテキパキと、今までノンビリしていたヘリのスピードを一息にぐんっと上げた



「よしっクリス様、舌をかまずしっかり掴まってろよ! 」 


信繁は大声で叫ぶ。




信繁の操縦は巧だったが、彼操縦するヘリを発見したとみられる所属も国籍も不明である飛行艇はあれよあれよと 不気味に何機も飛来。


つや消しの機体に午後の太陽の照り返しを吸い込み、あっという間に急接近してきた。


ドンッッツ!!


シューーーッ!と一瞬で空対空ミサイルが発射される。



「させるかよっ!!」


信繁はグンッとーーーーーー!!

 

常識では有り得ないテクニックで ヘリ機体を上下逆にぐるっとローリングさせた。


それはジャングルの秘境〜奥深い沼地、凶暴で気性の荒い超巨大クロコダイルが全身泥で気持ちよさげにジャバジャバ遊んでいる行為の様だとクリストファーは驚いた。


信繁は人工知能が制御する自動操縦システムを本格的に解除。


自らサイクリックレバーやスロットル、ラダーペダルを素早く的確に操り、想像を絶する勢いで目にも止まらずな勢いで操作し始める。

 

航空機の操縦桿に見える物体は、サイクリックスティック、もしくはサイクリックレバーと呼ばれる機器。


これはヘリの頂上に付く巨大なプロペラ、主力のメインローターの傾きを支配する装置である。


前後どちらかの方向へグイッと押す行為で機首の向きを変える、望みの任意の方向へ行かせる。



前方へ押せば(ヘリの頭が下がり)ローターは前へ傾き、前進


逆にーーー後方に下げれば(引けば)ヘリの頭が上がり、後退


ヘリ特有の動きを司る重要なレバーだ。

 


サイドブレーキの位置にあるのが、コレクティブレバー、もしくはコレクティブ ピッチ(吸気圧力)レバーと言う。


スロットル(回転数を上げる機器)は、この先端部グリップにつけられており、出力を上げ、高度、速度を変化させる。



尾翼のある”テールローター(テイルローター)は、足下にあるラダーペダルという装置で操作する。


簡単そうに見えて実際はこれの操作がかなり難しく大概上手くいかない。


”上手く行かない”結果

「機体全体がクルクル回る」事になり、これで下手をすれば墜落する。



回転翼機の「飛ぶ理屈」として、強力なテールローターの存在があるからこそメインローターのグングン回転する動きに機体もつられてグルグル、”竹とんぼ”のように旋回しない。


それがヘリコプターの基本構造。


因みにそういった動的な操縦法のせいでヘリコプター機内は天井に到るまで細かな装置で、びっしり埋め尽くされている。


傍目でもハッキリ、ヘリパイロットの手動の動きが他の航空機とは全く違うためそこがマニア達のハートをギュンと痺れさせる。


「格好いい……!」クラクラ鷲摑みするのだ。




両手両足、そして天井へ手を伸ばしてフル活動ーーー

信繁は必要な操作を流れる滑らかな動作でテキパキ行った。


当然、手さばきに一切の迷いはないのが凄すぎる。

 

ヘリは機体の様々な状況やシステムやサイズその他で取得免許が別、搭乗し操作する場合は各各新しく免許を取得しなければならない。

 

ーーーつまりそれが示す通り、相当の”気難しい航空機”


信繁は常時搭乗の「実験機」……

 

「機長として運航を任されている特殊機体」とはまるで構造が違うはずだが、そんな微細な違いなどモノともしなかった。

 

それどころか機体のポテンシャル限界までグイグイ攻め、ギリギリに酷使する。



「キャァーーーーーーーーーーーー!! 」


『頭の血が逆さまに流れるっっ!』


クリストファーは思わず、ウウッと気持ちが悪く吐きそうになってしまい、もうシートベルトに全身全霊、蝉みたくしがみついているのがやっとの状態!


縦横無尽なクレイジーな操縦で、レールのないジェットコースターである。


 

「次来るぞっっ!!」信繁が再び叫んだ



信繁は今度は轟音と共に空気を振るわせて飛来するミサイルを、ボディ寸前まで引き付けた上で サッ!と機体をグルッと横倒しに操作した。


空中を鮮やかに高速でひらりひらり上や下へ軽々飛翔する若燕の様!


シューーーーッ…直ぐ脇を抜けたロケット弾。


ぐるり大きくヘリ目がけて反転し戻って来たばかりの別弾の空対空ミサイルと、ものの見事に正面から空中衝突




ーーーーー凄まじい爆発



当然信繁は巻き添えの被弾を見越し、既に安全圏に悠々飛び去っている。




今何が起こったのか?

 

地球重力に支配され、慣性の法則が働き、自慢の各種内蔵プログラムや兵器絶対のお約束である、全地球測位システム、慣性航行装置〜


それらの受信下での精密誘導装置作動が、狭い空間における戦闘の間合いが接近しすぎて回避行動が出来ず、間に合わなかったのだ。


本来、最新型ジェットエンジン搭載の高速で飛来する、敵側暴漢達が操る恐るべき性能を秘めた戦闘型飛行艇と……


残念ながらヘリ特有の性質で、ある事情から最高時速スピードせいぜい300キロ強の信繁が操縦する防災機では、性能上……!


幾らカスタムした状態でも本来の常識では、全く歯が立たず勝負にすらならない筈だった。


しかし信繁が有する操縦驚異の飛行テクニックは、有るはずの絶対的ハンデを全く感じさせない恐ろしい程のクレイジーさ〜


いいや素晴らしいグレードの技術力を相手方に、これでもか!!と見せつけた。


『何故?!』


相当数の火器を打ち込まれているはずが一切一発も当たらない。


これ見よがしに今度は完全に上下逆、プロペラを下部にする大回転まで全くありえない事に戦闘機並みにやり遂げ挑発するのが信じられない!!


 

『そんな馬鹿な!』


『嘘だろ!?』


王太子だけでなく、どうやら敵側も同じくそう感じているらしい。


相手側の次々連打される、切迫した余裕のないラッシュ……

 

無理な切れ間のない弾幕に近い無茶な追撃から、それらは充分察せられた。


それでも信繁はまるで手足のように全機能を使いこなし、ヘリで空中を縦横無尽に旋回し振り回すのだ。


本当に有り得ない事だがーーーー!!

いとも簡単に襲撃者の飛行艇ギリギリまで突っ込み、プロペラのほんのすれすれまで接近後、一気に軽やかにギュンと抜き去る!


 

重量級の飛行艇の方が慌てて、巻き添えの墜落を避けるために自らよける程だ。


クリストファーには、目の前で次々に起こってる奇跡的出来事が信じられなかった。


ーーーー本当に動きそのものが 最初から違った。


奇跡の技量でヘリ機体は ひらりと舞ったかと思えばグイッと飛行艇に急接近し


ーーー即座にピタリとホバーリングし心理的に相手をあざ笑うかに悪魔の如く翻弄する。


信繁が行う驚異的アクロバット飛行。


意地悪く、戦闘の真の主導権を握っているのは、むしろこの災害救助用のタイトな小型ヘリの方だと思った。



「撃てるものならやってみろ!!

 

こんな近くでやったら確実にボスの乗る指令機を巻き沿いだ!

信頼、愛する大切な仲間を、自らの手で撃墜出来るものならなっっ」


 

信繁の空間を自在に操るヘリ操縦は神業のーーー域!

 

また手の内を読み取る天才戦術家でもあった。


両手両足、おまけに自身の全ての五感をフル活用し手動操作のみでヘリを駆る

 

武器は積んでいない

 

なのにーーーー勝っている


信じられない!!



「人馬一体」〜古い言い回しがジャパンにはあるが、まさにそれに類する状態




『嘘みたいーーーー』まるで夢の中の出来事だ

 

生まれてこの方ずっと、人工知能の自動操縦運転しか見たことが無かった。


綺麗な美しい悪夢ーーー!!


自分の眼前で正確に何が起こっているかも良くわからず、ただ呆然とするのみ。



 ーーー重力がきつい!!


うねる激しい動きに大声で何度も悲鳴を上げた



「きゃー体が攪拌される〜〜〜〜〜!!」


何度頭が、ダイナミックに下を向いたか?!



『流石 ニンジャの国〜〜〜〜!!』 


クリストファーはガツンと、常識に深い衝撃をくらった。


 


「ポイントまでもうあと少し、〜だから頑張って下さい!クリス様!!」


泡を吹かんばかりの真っ青を通り越して真っ白の、極めて情けない表情のクリストファーに、信繁は実に楽しげに笑いかけた。



「ポイント? なにそれ? 僕聞いてないしっっ!!」



言葉が終わるか終わらないうちに、どこかで何かが聞こえる。



 


『今度は何?!』



それは……地響きを立てるようなゴオオッッという鈍いビリビリした重低音



偽装した災害用小型ヘリの機体を、弾けるように音波は打った。



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