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フレイヤの愛しい人との再会 ③


「こちらへどうぞ」


小姓に静々と、豪華な飾り付けが終了した高い天井の素晴らしきシルク製タペストリーと、花とベルベットとレースとクリスタルに埋め尽くされた 光り輝く美しい王城廊下を案内される。



フカフカで滑らかな紅の絨毯、足音は猫の如く誰もしない。

 

今や腹心の側近である女官長、レディエリザベスに付き添われ、ゆっくりと足音も無く、謁見の広間に続く「控えの間」に、程なく一行は到着。



「ようこそお越し下さいました、フレイヤ妃殿下のご到着です」



柔らかく微笑む近衛隊隊長の良く通る声にて 丁寧な先触れが行われ、彼自らの手で頑丈な大扉が開かれる。



「私はこちらで、貴女様をずっとお待ち申しておりますからご心配なく」

女官長は優雅に膝を折り頭を下げる。



フレイヤは、スルスル心が萎えしぼむのを感じる。


『自分は結局は1人ぼっちなのだ』


孤独と絶望の淵に〜今にも落ち込もうとする目には、新年の為に 美しく飾り立てた花々は幸福の象徴とはほど遠い〜 


むしろそれが自身を〜冥府の国に引きずり込む地獄の門の入り口の飾り付け、葬送の花々。


全てが奇妙な、スローモーションの歪んだ光景に見えるのだ。




無言で入室すると、他よりも1段高い玉座の前には、重臣達が御前会議に使用する、嘗て何代もの歴代の大王に使い込まれ磨き込まれた 琥珀色の由緒ある長テーブルが運び込まれていたのが目に入る。



玉座には当然ーーートール支配者である リーズ大王が鷹揚に着席している。



手前上座には、今や見知った顔である軍事参謀長官ロームルスが。


横の下座には、やはり 彼の美しい可憐な姪のアグライア姫がいた。





そしてーーーーー少し間を置き。


遠慮がちに座る、通常武官の座席位置、取りあえず最も末席にはーーー!!




『!!』



サラリと、一旦「臣下の礼」を用いて立ち上がる極めて背の高い爽やかな人物の姿〜


驚愕のあまりフレイヤは 声も出なかった。



彼はジャパンの、トールでもその優秀さが褒め称えられた、かの国の警察官の正式な 美しい式典用制服を着用しているのだ。

 


彼女が心から愛したーーーー

茶色がかった悪戯っぽい瞳が 微笑みながら輝く。



『どうしてここに?』


「今回 長期出張、特別に私の姪の護衛官として来訪してもらった。


彼は軍事用・最新鋭宇宙戦艦の若き艦長とジャパン政府共に、お願いだから吾が祖国に事情説明のために来て下さいませんか?、頼むからトールにこのままアグライア様と共に行ってくれと散々泣きつかれて気の毒ではあった。


彼には迷惑をかけ、申し訳ない事をしたよ」




ロームルスの説明通り、令嬢アグライア様付きの「護衛官」


〜超法規的処置として、惑星トールに赴いた信繁がそこにいた。



ロームルスのアイコンタクト、促しで初めて言葉、挨拶の口上を述べる信繁である。

この礼節もいかにも記憶の中の彼らしい態度、真面目な礼儀正しさであった。



「お久しぶりです、フレイヤ妃殿下。

大変 ご無沙汰しています、お久しぶりです」


信繁はクスッと、フレイヤ妃を懐かしげに見つめて笑った。




 

「ジャパンでの事件は 彼から提出された『3つ目の資料』〜報告書にあるとおりだな? ロームルス?」



「ええ、まったくこの通りです。

彼がーーーー信繁君が、戦艦内で、ここまで詳細かつ事実を簡潔にまとめ上げてくれたお陰で、私もまるであの場の現場に立ち会ったかの如く『事情』が良く飲み込め 本当に助かりました。


艦長からの報告書とも乖離が無く、当事者であるトール側クルーの取り調べとも全て内容が一致しております」



「『入れ替わられたクルー』は広報の職員は、それからどうなった?」


「もうダメかと!ウチの捜索班は覚悟をしたそうですが。


彼から無傷の、血糊のついたものでない綺麗な制服を作戦のため取り上げる必要上からーーー


『まだ必ず何処かで存命、生きているはずだ!』と、彼ーーー信繁君が言い張り彼が指揮する班員総出で探索しました」



「で?」


「雅という青年が、ここしか無い!と、艦内の設計見取り図から死角を指し示し見つけ出しました。

信繁君は素晴らしき部下にも慕われております。」



「それはよかった」


ロームルスの嬉しげな返答に大王が満足そうな笑みを零した。


 

「優秀な部下に日々助けられてばかりで恐縮です」


質問者である大王と、受け答えに参加したロームルスに慇懃に会釈を返す。




「ではそろそろーーー もう彼を解放してあげなければな。

今後の予定は??」



「取りあえず既に遅い時間ですので。

見知らぬ王城での宿泊施設ではなく、私の屋敷にて彼を逗留させたいと考えています。

彼の職場である『城』とも、直ぐに私の執務室から極秘ホログラム通信がアクセス可能です。


今回特別に城〜最高責任者の城主から、特例として許可していただきました」



「へーそうなのか? それはよかったじゃないか!!」


「ええ、『現在抱えている仕事』や、もしもの緊急時の事を考えるーーーと。

滞在中この先も常に私の屋敷にいる方が 何かと好都合でしょう。

 

それに私も個人的に、彼とは色々と語り合いたい。

将来確実にジャパンを『裏側から』支える有能な人材だからね。

信繁君 それでいいかい?」



「私には 過分な勿体ない待遇です。

トール逗留中、どうぞ卑小な私を 宜しくお願い致します」


信繁の流ちょうでサラサラと流れるような美しい連邦英語の発音に、大王は顔をほころばせ。


「ではフレイヤ妃、嘗て君を彼が護衛する立場だったが。

不案内なトールにおいて今回君は彼にとって数少ない顔なじみだろうから済まないが、トールにいる間彼の事を何不自由なく不安無く滞在出来る様、毎日案内役を宜しく頼む。

私からの話は以上だ、下がって良し」



「大王様のご期待に添うよう 努力致します」



フレイヤ妃は膝をつき、深く高貴な身分の貴婦人に相応しいトール王城式 完璧な退出の礼法を大王に行う。


フレイヤ妃ーーーいやフレイヤは、あまりの思ってもいなかった急展開にフワフワと夢の中を彷徨っている心持ちで。

 

『夢をーーー見ているのかしら?』 さっぱり 現実感が無い。




「ーーーーフレイヤ〜〜〜様??」



広大な広間の外側で不安そうに待ち構えていた女官長ーーエリザベス。


「!!」

大切にエスコートする様子でいきなり現れた〜背の高い 信繁の存在に肝を潰しそうな様子。


「お妃様、彼は誰なんです??」 思わず声が上ずる。



「是非教えて下さいませんか!! 誰なんですか?一体!

あれ程の殿方は恐れながらーーートールにも滅多にいらっしゃりませんよ??」


エリザベスは フレイヤの耳元で興奮しつつも囁く。


『それにしても 随分背の高い方ねーーー!!』



チラチラ見るが、見れば見るほどーーーー醸し出すオーラといい規律正しいビシリと美しい姿勢といい、身のこなし方といいーーー!!



自分と初対面の、正体不明の「彼」が『ただ者では無い』のが見て取れた。


言っては何だがーーーーそれが判らないようでは尊い身分であるフレイヤ妃の女官など務まらない。


王城が誇る女官長として、全女官を束ねる晴れがましい役職のベテランの彼女は 常々自負。


「お初にお目にかかります」


視線を受け取った彼の方からサッと 柔やかで礼儀正しい〜綺麗な挨拶。




「私は『信繁』と申します。

ファーストネームのみで申し訳ございませんが、私の職場の防犯上の規則なのでご了承下さい」


信繁は茶色がかった瞳で 穏やかに微笑む。


彼の口から流れ出る極めて美しい上品な連邦英語と、あまりの親しみと好感の持てる優しい風貌に思わずハートが打ち抜かれそうになってしまう。



『この方でダメだったら、誰がこの方の元に訪れても無駄よねぇ』



その事はーーーー明々白々だと、流石に圧倒的なオーラと爽やかさにクラクラした。



背の高い美しいエキゾティックな容姿の、トールではかなり珍しい存在である〜惑星地球の東洋人。


それだけで相当目立つのだ。



『まずいわ!!』 エリザベスはゾクッと体が震える。



『ーーー彼を巡って様々な姫君や目敏い女官の間で今後、見苦しい女の戦いが起きる方が実際の所〜


女官長として、目下の重要な心配事かも知れないわね?』


 

その後ーーー彼女の予想は想像以上に現実の物となる。

 

「彼を『私に』 紹介して欲しい」


捌け無い程ワッと集中、何処となく淫美、艶めいたコールが殺到したのである。



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