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クリスマスの奇跡と惑星トールへの到着


翌朝、ジャパン国防軍 若手将校とトール軍将校、その他ーーーー

双方 えり抜きのクルーを交え、サッカーによる 盛大な交流会が行われた。


会場は一夜にして臨時に作られた 宇宙空港内の特設グランドにて素晴らしい澄み切った清々しい冬空の下 試合は開催された。



見上げるような平均身長190cm台の大柄な 見事に体幹の鍛え上げられたトール側選手の多い中。


バネのような鋼の肉体を誇り、研ぎ澄まされた技術力と正確なパスプレイ!


集団の、チームプレーを最も得意とする、Wカップ出場選手を揃えるジャパン側選手達は、観客誰もが想像もしなかったーーー予想外に善戦する。



「競り負けないとは これは凄いですな!!」


「ーーー寧ろトール側が押されてるんじゃ無いか?」


「これは、もしかすると『もしかする』かもだな?

『勝った者が強い』〜正にその通りだな」


「賭けサイトは おそらく大盛り上がりだろう、終わってみなけりゃわからない、正に筋書きの無いドラマだ!!」


みなぎる期待と興奮の中、最初に先制点がトール側に入り、そのまま膠着状態で試合は動かず 双方スタミナの限り走り抜いた。


「わぁぁぁあ〜ーーーーー!!」


「入った! 入りました!!」 中継のアナウンサーの絶叫!


もうすぐ終了ーーーという時間帯に、当たり千金の1点がジャパン側から押し込まれた。


ピーーーーーッッ!! 「試合終了!!」


審判のホイッスルが高らかに鳴り響いた。


審判団は全員、公平を期すために、わざわざこの日のために来訪した米 英 仏 独軍から選抜された、試合に精通したクリーンで優秀な人物が派遣されていた。


あくまでも平和的歴史の、粋な再現だからだ。


「平和と親善の為のゲーム」であったため、そこでゲームセットとなる。


息を止めて見守る観客達は、1対1という結果に 少々残念な気もしたが、これで良かったよね?〜と納得した。


実際 歴史上の「クリスマス休戦」でも、英軍・独軍によるサッカーの試合は行われたが、生憎「鉄条網」に引っかかり、ボールがパンクした事で結果が出ずに終了したのだ。


ーーー今回はその様な残念な事が無い事を〜

それでいて実力が 双方拮抗してゲームセットになった事を。


終了後、マスコミ各社は電脳通信にて大きく吉事として報道した。


ジャパン・トール双方から各各1つづつ用意された「前半戦」〜「後半戦」2個のサッカーボールは、麗々しく、それぞれのキャプテンの手で試合後、「平和記念」として取り替えられた。


サッカーの試合は「クリスマス休戦」になぞらえ、両国で平和を祈り行われた試合だった。




その時、奇跡が起きた。


ーーー誰からとも無く、「きよしこの夜」が 口ずさまれたのだ。


最初は微かな 小さな囁きに似た声だったが、次第に大きな声にーーーーー


うねるような輝きに変わる。



会場に居たものは全てが同じ曲、おなじみの一緒のメロディーを、それぞれの国の言語で 高らかに唄った。


声高らかに、天へ届けと!!



『えっっ??』


その時だった。

会場にーーー突如一筋の とある一際美しい歌声が起きる。



「何処から??」


「誰だ??」



美しい天使のソプラノで、何処から響いているのかわからない。


皆ーーーー声の主をさり気なく探したが、誰1人、見つける事が出来なかった。


だがしかしーーーー!!


姿の見えない美しい 「ナイチンゲールの唄」は、その場の将校達、関係者全員の心の 最も柔らかな場所を撃ち抜いた。

 

厳つい男達は心が満ち足りて精神が和らぎ、豊かな心の平安を感じ取った。


電脳ジャーナルで、このーーー

後に伝説と呼ばれる「試合ライブ中継」は、銀河中に配信され、視聴した者の心に 熱い感動を呼び起こした。



熱傷の兵士も素早い初期治療が功を奏し、生命は無事に取り留め〜最も危ぶまれた時期を脱する事が出来た。


ジャパンでの治療後、完全な回復を待って祖国に帰国する事が決定した。



トール軍・最新鋭軍事宇宙戦艦はジャパン政府の式典後、再び空高く宇宙の蒼穹の輝きの元に還って行った。



行き先はスペースコロニーでは無く、彼らの故国、惑星トールであった。




「アグライア様、あんなに頑張って声を出されてーーー良かったんですか?

喉大丈夫なんですか?」


「ええ、私は、ああしなきゃっ!て 思ったもの」

アグライアはグッタリ ベッドで身を伏せながら気遣う相手にそう返す。


前回以上の〜何度もの、激しくきつく繰り返される「ワープ航法」に、戦艦乗船のアグライアは最後まで耐えきる。


『もうダメかもーーー?』


死んだ方がマシーーー!! そう思える程に苦しかったが、何とか耐えられたには「理由」があったのだ。


1つ目の理由〜

姉タレイアと城主から託された 大切な「記録チップ」の存在を守る事。


そして2つ目の理由はーーー!!




「やっと還ってきたのね」

『そうーーーー還ってきたーーーー!!』


 

彼女にとってこの星は、母親の生まれた惑星ではなく、大好きな叔父の住む星〜でもなくて、掛け替えのない 「第2の故郷」であったのだ。


惑星トールの軍事用宇宙空港に戦艦が着艦した時、真面目なアグライアは漸く肩の荷が下りた気がした。



『私の本当の故郷はラオコーンだけれど、何故かこの星に来ると心が落ちつくのは どうしてかしら?』



姉の記憶の中の〜 

あの砂嵐吹きすさぶ荒涼とした砂と氷の大地の記憶が甦る。

 

『それでも 私はあの星を愛していたわ!!』


曰く言い難き大きく矛盾するこの気持ち、アグライアはブルリと体を震わせる。




タレイアはまだ城に収監中の身の上で。



けれど〜 城主が必ずーーーーー!!

「囚われ人の立場から開放する」 約束してくれたのだ。

こんな嬉しい事は無い。


不思議な〜巨大装置のチューブから出た姉は、まるでガラスの棺から生還した白雪姫のようだった。


キスをして目覚めさせた王子様は、叔父様ではなく、なんと予想外の 妹の私だった。

(キスはしてないけれどそういう事)




「まだお姉様の容態は、精神的にムラが有る状況〜で、もう少し 心の休養が必要です」


「必ず良くなりますか?」


「勿論です!! 

あの厄介なバグさえ無くなれば、おそらく短期間で 劇的に回復するでしょう」



転送移植装置のスペシャリスト〜主席研究員の方がそう確約して下さった時、あまりの嬉しさに、ぴょんぴょん飛びついてしまった。



「有り難うございますっっっつ!!」


「!! 貴女のような可愛らしい方に、そんな事されるとドキドキするので お願いですからやめて下さい!」



「貴女はいつも、そうして〜 自分に正直な方がずっと輝いているわ?」


真っ赤に照れまくった主席研究員の方と、可憐な花の如く微笑んだ城主にそう言われたのを急に パァァァァッーーーと思い出すのだ。



城ではーーー沢山の人たちに唯々慈しみ守られただけで、想像していた酷い事や恐ろしい事は、何もされなかった。


「信繁班」の賑やかで勇敢な方達、子龍さんや雅さん、信繁様が天才と言っていたセツさん。


「生涯の友達だよ!!」 彼が言ってくれた時 どれ程嬉しかったか!!


底なし沼のような暗闇から フワッと思いもかけず 優しく救われた気持ちだった。


『あの方達の事は 生涯忘れない』




ロームルス叔父様はーーーーフレイヤ様の事で帰国後「話を改めて決める」と仰っていた。


末の王子様の、エメラルドグリーンの癒しの大天使様、ラファエル殿下の2番目のお后様について。


そつの無い叔父様は、もう既に 後は私が承諾するだけの状態にしているに違いない。


信繁様や城主は、叔父様は貴女が好きだと仰ってくれたが、やはり叔父様には銀河1美しく賢いタレイアが 相応しいに決まっている。


私は何処まで行っても 姉の代用品なのだ。



それにタレイアがあんなに幼い頃から〜

ーーーそれこそ全てを賭けて、彼だけを必死に愛しているのに今更。


グッタリと項垂れる。


恋する気持ちですらーーーー姉に大きく負けていた。

熱情の総量が全然足りない、それを知ってしまった以上 どうしようもない。


私は負けたのだ。

諦めて舞台から退場するしか方法は他にない。


せめて最後くらい、綺麗に美しく叔父様の前から退場したい。


あまりにも欲深な事だけれど、私が叔父様にして差し上げられる最後の事。


トールに渡ってからずっと宝物みたいに、本当に 大切にされてきたんだから。

ーーーー恨むなんて とんでもない事だ。


むしろ与えて下さった、今までのご厚意に感謝しなくてはならない。



アグライアは戦艦内に用意されたゲストルーム内、深夜ベッドの一人きりの時、

誰にも見られないように 溜息と涙をポロポロと零した。


宇宙空港ドッグに到着すると、各種様々な検疫や病理のチェック、体調の検査がどこまでも彼女をへとへとにさせるのだが、長時間をかけそれでも無事、全部を何とかクリアした。

 


『出迎えの人間は 誰もいないはずだわ?』



「私が持ちますよ?」


「いいんですーーーそんな。」


「なにをいってるんです? ご気分、まだ悪いんでしょ? 遠慮なさらずに」


「済みませんーーーー」



顔が思わず ぽーーーーっと赤らんでしまう。

ある理由で、周囲から女性客の視線がビシビシ突き刺さる。


 

「美男美女のカップルね〜〜〜〜!」 どこからかヒソヒソ声が聞こえて来る。


『それは違うわよ!!』 俯きながら 心の中、真剣に否定する。

 


「では行きましょうか?」 優しく促されて また赤くなった。



テクテクと、惑星トール軍事用宇宙空港内、連絡のあった帰宅用〜


軍事参謀長官専用兼プライベート専用飛行艇〜の置かれた場所まで脚を運ぶ。


「!!」


何と そこには、アグライアの予想外の人物が待っていた。



「おかえり、初ジャパンはどうだったかい?」


「ロームルス叔父様ーーー!」


新年に向けて王城の あれやこれやの大小様々な会議で、てんてこ舞い〜てんやわんやのはずの忙しい叔父ロームルスが、この場所にいるなんて信じられない。



ロームルスは、飛行艇の機体にガッシリとした長身の体躯をもたせ掛け、穏やかに腕組みをして立っていた。


恐ろしく様になった ポーズであった。

 


「ここは流石に外気が寒いな、直ぐに温めておいた中に入りなさい」


そう言うと、ドキドキオロオロ戸惑う彼女をサッサと飛行艇の中に押し込んだ。


そうして グルリと振り返るとーーー!


「初めまして〜ではないが、本当にここまで 姪の護衛としてよく来てくれた」


ロームルスは感極まった声色で言うと、恭しく艇内部に促すのだ。


「自分はできましたらパイロットの方の隣の席へ」

「うむ勉強熱心と言うか、その発想如何にも君らしい、では私が正式に許可を出そう。

ライセンス持ちの君は、今後の経験値の実務経験を上げる為に是非そうしてくれたまえ」


「有り難き幸せでございます」



「王城へ」

ロームルスは全ての準備が整うと、コックピット席の飛行艇パイロットに一声告げた。


ロームルスの言う「王城」とは即ちーーー


「大王様に今から私達 お会いするのですか?」


「そうだよ? 君がトールに帰国したら着替えなんかしなくて良いから直ぐに私の元へ〜と帰国の挨拶をご所望だ。


それはそうとして〜

自分が尤もらしい理由にてパイロット席に移る事により、きっと私と君を家族として少しでも早く二人きりの話をさせたかったんだろう、実に流石な配慮だと思うよ」



ロームルス所有の最新型飛行艇は、トール宇宙空港から空高く舞い上がり、最高権力者「大王」が住まう 政治の中心地ーーー


荘厳な建築様式と 超未来型の建造物が美しい「王城」まで1直線に飛行して行く。


飛行艇眼下に、銀河でも美麗だと景色が名高い摩天楼の煌めく鋭い輝きが 次第に接近しつつあった。


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