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帰国へ ①


「前回はスルガ湾に抜けたが、今回は『湖』経由で東に航路を取る。

フライトプランも通ってる。

他の航空機とのニアミス及び人目を避ける為、サガミ湾経由で宇宙空港まで一気に飛ぶから 全員そのつもりで」



「信繁さん、え〜〜〜?! 折角の機能使わないんですかー?

光学迷彩とノイズキャンセラー〜両システム使ったら誰にも見えないし爆音も聞こえない。

市街地通過してもバレ無いんじゃない?」



「ぁあ ナスチャ、ローターのノイズは市街地に出たら消音する。

しかし、エネルギーをとにかく今は温存した方がいい、特に光学迷彩は いざという時の切り札だ。


幽霊船ほどの装備と多額の資金をかけてまで、人1人の暗殺を企てた連中が〜!

このままオメオメと引き下がるとは、俺は到底思えない。


どう言った方策かは、予測不可能だが? 何時かすかさず 必ず仕掛けてくる」


 

「まーーーそうだな、信繁〜

俺だったらーーー相手の錯覚ーーーーふいを突く戦法に出るかな?


人間何処かで、自分では気がついていない思い込みと気の緩みが出る、そこを狙うなー」


 

「ッツー事で アグライア姫もお気をつけて!」


「宇宙空港までは 大丈夫ですからねーーー!!」


「必ず帰る事が出来ますから! ご心配なさらないでください」



 

アグライアは嬉しく思う。


頼もしい信繁班の皆がーーーーー!!

本当に親身になって心配し本気で命懸けに助けようとしてくれているのが、申し訳ない。


『有り難うございます』 この日何度目になるかのお礼を、心の中で呟くのだ。



ジャパンの言葉がわからなくとも彼等の気持ちがヒシヒシと伝わってきたから。


こういった強い想念・感情は、例え言語が異なる国籍でも確実に相手に伝わるのである。



アグライアの涙腺がじわっと緩んだのを察し、雅がすかさず信繁にマイクを通して言葉をかけた。




「『目』のプログラムをーーー今 作動させてもいいですか?」



「どうぞ」


副機長役の信繁の許可、これに雅は鬼の首を取ったかにウキウキと何故か微笑むのだった。



雅はアグライアに予備のヘッドセットを渡すと、満面の笑みにて得意そうに

「ちょっと待っていてね?」


 

照れまくる姿を押しとどめ、器用な指先が丁寧に頭に装置をはめるのを手伝う。


「わーーー似合う〜〜〜!!」

 

「おおおおおっー」 「マジかよー」「萌えるなぁ〜」 「すっげ、カワイイ」



「こんなフィギュアが欲しいぞ! ツインテールにするんだっっ!!」


「子龍 馬鹿かお前!」 ボコッッッ!!



「ぶつぞ?」


「痛いぞ〜〜〜!! ヘッドセットの上からでも 痛えーぞ?

クッソこの〜信繁ぇ、大体が ぶってから言うなよ〜〜〜〜!!」


今回機長役である子龍が間髪を入れず、信繁に容赦なくどつかれていたのが賑やかである。



『??ーーーーそうなのかしら??』


雅が嬉しげに言う通り、彼女の髪型にピッタリの飾りに見えた。



「では!!」


雅は 得意の指先のダンスを披露、華麗な高速タイピング技術はそれを見た誰もが感嘆する素晴らしさである。


彼は自ら配置転換の要望書を提出、凄まじい倍率〜定員1名「信繁班」における技術職の枠に入ったのだ。


彼が担当する装置。 

〜これについては雅自身、元々実験機開発に直接関係している不夜城出身エンジニアであるからよく知っている。


「んーーーーちょっと今後アレンジがいるかも?」


自分も開発に参加した複雑怪奇な人工知能プログラミングをザッとひとめで確認、指先で スルッとスクロールし引っ張り出し、器用に設定をカチカチ入力し直すとニコッとキラッキラの天使の微笑み〜




「では!!

〜見てらっしゃい 寄ってらっしゃい!! ここにありますキーを押すと〜!〜


ーーーーですね?!」


最後のキーを 思わせぶりにポンとタッチ。



「わぁっっつ〜〜〜〜〜〜!!」


 

突如!! 

アグライアの想像を超える魅惑の映像が、ヘリの後部座席一杯に映し出される。


いや、それはあまり正確な表現では無い。

 

突然ヘリ内部が 月光輝く夜空に放り出された、つまり前方コクピットと 座席床部分以外は全て、全方位型立体スクリーンに転じたのだ。



「キャッッッッ!!」 ビックリした弾みで、口から悲鳴がこぼれた。



「ーーーまるでおとぎ話の、『魔法使い』になった気分でしょ?」


雅が尚も設定を変更すると今度は足下にグンッッッと、地上にキラキラ眩しい程の月光の光を反射させる「何か」が現れるのだ。



「霊峰富士の裾野に広がる富士五湖の一つです」

それは未だかつて見た事が無い程、静謐な銀面に輝く美しい湖ーーーーー!!


アグライアがスイッと、ほんの少し手を伸ばせば、今にも本当に湖水が掬えそうな程の 至近距離まで視覚的に急接近する。



スーーーッと滑るように流れるように、光り輝く鏡に似た水面の、ほんのすぐ上を高速で滑空する。


ヘリ内部の天井には燦々と清らかに明るく蜂蜜色に照り輝く 大きな月と真砂なす星々。



「月光が明るすぎて、今日は星があまり見えなくて つまんないでしょ?」


山岳関係や気象に詳しい信繁が、ヘッドセット内蔵のマイク機能をもちい話しかける。

 


「いえもう充分見えています。

ーーーー見た事も無い 素晴らしい夜空です!」



これは嘘ではなくて実際そう!!

 


地球の留学先も、惑星トールも、夜空は市街の明かりが夜半まで煌々と灯る為。

余程の山岳地帯に行かねば 星1つ見えなかった。


また「生まれ故郷」のラオコーンは、それ以前と言える無骨な国だった。


星が出そうな夕刻〜深夜の時間は、街全体が惑星名物である砂嵐を防ぐ為、すっぽり丸ごと金属製ドームに覆われてしまう。


 

優雅な、夜空の星座の観察どころでは無く、住人にとって死と隣り合わせの星だったのだ。



アグライアは 『この国の人達には、あって当たり前の事なんでしょう』


目くるめく あまりの美しさに、そっと溜息を零すのだが、反面こうも思う。



『でもーーーきっと、この素晴らしい景色を維持するのは、途方も無く大変な事だと思うわ?』


故郷ラオコーンにおける 失敗続きの〜地表 緑地化計画のシビアさ。

 


『でもやっぱり羨ましい。

こんなに当然のように透き通る大気と、豊で美しい自然に囲まれているなんて』


アグライアは しんみりと、美しき夜空に想いをはせた。


「次はこんなの如何ですか?」

実験機が オダワラシティー遙か上空にさしかかると雅は新たにキーボードタッチパネルをタッチ、スクロール機能を発動させると、「目」はグンッと市中に最接近する。



「わあーーーーーーーー!!」



アグライアの目前には市中の街路樹に、美しい美々しく飾り立てられた色とりどりのクリスマス仕様のネオンのライトアップ。


大小様々な 赤と白のサンタ人形のオブジェ。



イベントのために設置されたメインストリートのーーーー

それは大きなピカピカ輝く、どっしりとした巨大クリスマスツリー!!



「ーーーーーーー!!」



アグライアは、あまりの感動で 声が出ない。


嬉しくてーーーー目にぶわっと涙がたまる。



『ずっとずっと見つめていたい、この世は なんて美しいのだろう』


私はーーー愛や恋だの、得意げに 唄で今まで表現していたけれど、本当の事は 多分全然何もわかっていなかった。


絶対そうよっ!!


こんなに嬉しかったり、感動したり。

 

ーーーこの心を〜ピョンピョン 思わず踊り出したくなる気持ちを。


果たして本当に、今まで唄に託して 映し取れていたかしら? 唄い切れていたかしら??



これからは今夜のこの驚きと興奮ーーーー震える心の輝きを!!


たとえ 一時の事でも写し取ってみたいーーー!


 

実験機の「目」は フワリと再び上昇。



アグライアの瞳には、地上にも華麗な星々の河が流れ込んだかに思えた。



金色、赤、青、黄色ーーーありとあらゆる瞬く光の奔流ーーー!!



市街地を抜けサガミ湾〜海岸沿岸部に出ると、今度はヒタヒタと岸に打ち寄せる 繊細なレースに似た白い波頭。


宝石のようなーーー蛍のような、地上より少し高度の空中を飛翔する 飛行車両のヘッドライトの流れに息を呑む。



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