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幽霊船との海戦 ③


元々龍は「水を司る神」龍神なのだから、潜行スピードも水中における機動力も人工物など黒龍の足下にも及ばない。


特に黒龍はその仕様に特化して作られたクリーチャーである。



城ーーー龍を代表する もう1頭の白龍は、もっぱら海面をそよそよ泳ぐ事を好む性質を持つ、が〜黒龍は全くタイプが違う。


むしろ波立つ海面よりも 揺れの少ない海底が守備範囲、グイグイ進む泳ぎっぷりは勇壮の一言である。

 

その昔の まだ小さかった黒龍の訓練時、勝手に海の奥深くまでーーーあれよあれよという間に、飼育員と城主を振り切って潜りすぎたことがあった。。



ーーー運悪くピョコッと浮上後、「電脳ジャーナル」カメラマンに〜

丁度、非番で海釣りを楽しんでいたジャパン版の記者に激写され


「謎の未確認生物現る!!」


「○○○は!! 『あの怪物』は本当に居た!!」


〜など不名誉にもデカデカ配信されてしまったのだ。


そんなこんなで、城を大慌てさせたことも 今となっては良い思い出だ。



もっとも白龍は白龍で〜富士のお気に入りの湖で楽しげに回遊中、地元の御婆様に目撃されてしまった。


ここでもやはり「電脳ジャーナル」にて、目撃証言が配信されたのだが。


「富士の龍神様のご光臨ーーーやれありがたやありがたや。

なんまんだぶ なんまんだぶ〜」


という、何とも霊験あらたかな神々しく清らかでオメデタイ配信記事だった。


黒龍の「謎の未確認生物」呼ばわりとは、余りにも落差と表現の差がありすぎた事が騒動の発端になった。



『まさかーーーーーー! あの確執が 今まで続くとはね!!」



黒龍と 白龍。

両者には 超熱狂的ファンクラブの存在がある。



今回の黒龍出動は、会長 直々の

「白龍ラブの アホアホの『アヤツラ』に! 今日こそ 目に物を見せてやって下さい!


今でも『未確認生物』って、うちの大切な可愛い黒龍を馬鹿にするんですよ?!


黒龍がノンビリおとなしいことをいいことに、アイツら言いたい放題なんです!

絶対に許しがたいです! 


そりゃあ〜 白龍は全身特殊強化ダイヤモンドの鱗で、例えようも無く美しいのは承知してますーーーがーーしかしです!!


戦闘能力は 黒龍の方がずっと絶対に勝っています!

ですから!!城主!!

必ず戦果をたっぷり上げて帰ってきて下さいよーーーっっ!」




というーーーギラギラした黒龍飼育員「全面協力」体勢で行われた、失敗は許されない重大な作戦なのである。

 

城主は、幽霊船よりも〜実は彼らのメラメラスパークするライバル心の方がずっとずっと恐ろしいのである。

 


「おー怖〜〜〜〜」 彼女の体にブルリと悪寒が襲う。



〜もしも作戦に失敗したら??

間違いなく シャキーンと細切れミンチにされて、頭からボリボリ おやつに食べられそうだ。



「やれやれ」


溜息ばかりの、そんな騎手の気持ちを知ってか知らずか、今日も黒龍は絶好調だった。


「水を得た龍」である。



******************



城主は不夜城特製の、飛行の際に身体にかかる圧力軽減のための耐Gスーツの設定と、ヘッドセットの呼吸用空気圧の調整を、水中に没する直前に素早くチェンジする。


シュッと驚くほどスムーズに ワンタッチで変更できた事に流石に目を見張る。



視界は 通常ではまるで見えない状態だったが、こちらもヘッドセットの特殊装備のお陰で何の問題もなかったからなんだかワクワクする。




「いたいた!!」 目標は 案外直ぐに見つけた。



『さてさてーーーーーー!!』



シュッツ!


城主は素早く、海中の「幽霊船」全容を、海中専用〜塩分や絶え間ない水圧を考慮した特殊カメラで証拠〜資料撮影として収集してゆく。



『ーーー間違いない。

この船はありがちな『原潜』ではない、良かったーーーー!!』



ある事情で直ぐに彼女にはソレがわかったのだ。




『これで もしものことがあっても豊かな漁場は汚染されないわ!』

 

じゃぁーーー 一切の手加減なんかいらないわねぇ。




「行くわよ! 黒龍!!」


ゴォォォォンンーーーーー!!


城主はマスクの中で呟くと、嬉しげに唸る黒龍の遊泳スピードを上げさせた。




幽霊船の動力源は、ハッキリ断定は出来ないが、ジャパン政府が何度も開発しつつ頓挫しまくった〜某イオン電池だと、外見における潜水艦形状から城主は当たりをつける。



何が違うのか?? ズバリ形である。


戦闘艦に実用化し、現実に使用できそうなほど巨大イオン電池で、性能充電能力を極限までパワーアップするとどうなるかと言えば、当たり前だが複数個、当然搭載する事になる。


負荷がかかりすぎ必ず異常高温になってしまい、ジャパンの誇る技術陣が実験にて手を焼いた理由がソレである。


普通の陸上ならばともかく、内部に積む積載量に限界のある潜水艦で、異常高温になった場合、エンジンや艦内を冷やす強力な「急速冷却システム」が不可欠。


〜なのにもかかわらず、満足のいく温度まで下げることの出来る施設の内部設置がほぼ不可能。

 

超巨大装置ならまだ空間的に余地があるから何とかなったが、実際に搭載するとなると避けては通れない、安全で積載可能な小型化が出来なかったのだ。




幽霊船は通常エンジンを持つ潜水艦や、平均的な原潜とも全く異なる後部形状であったのだ。


「何の動力のエンジンなのかしらねーーー!」


城主ですら全く見たことが無い艦のルックスに、思わずフフフと笑いがこぼれそうだった。



「ふーんーーー

不夜城が喉からクワッと手が出そうな『とんでもない技術』の塊ってわけね!」


出来ればソレ込みで丸っと戴いちゃいたいけれどーーーー!



正体不明な「幽霊船」が、おめおめ機密保持と共に艦の技術を渡すはずがない。



「行くわよ!! やっておしまいなさい!」


城主の合図と共に、黒龍はしなやかな鞭と化した長い尾で、スクリュー部分を容赦なく的確に狙った。



ガシッッッツ!! ーーーー相手はひとたまりもなかった。

 

高速回転するプロペラはグニャリと角度を奇妙に変え、原形を留めない金属の塊と化す。


まるで柔らかな粘土細工でも壊すかに、悠々黒龍は破壊すると嬉しげに吠えた。



ウォォォォォンーーーーーー!!

 


ゆったりと泳ぐ黒龍は、潜水艦動力部分に胴を巻き付けるがはやいか、海底の隆起する崖に遠心力で容赦なく叩き付けた。



『隔壁の作用で、そう簡単に浸水しクルーの人命まで被害が及ばないわよね〜』


万が一を考え、浮上に適するが血液が沸騰しない〜そんなギリギリの速度で黒龍と城主は海面に向かいユルユルと上昇してゆく。



ゴフッッツーーー!!



突然、後方で激しい水流の圧力の変化が起きるのを感じる。




『やっぱりねーーー』



相手も仮にも、超科学の機材に囲まれた誇り高き「潜水艦乗り」だ。


城主は「彼ら」が 自らの手でーーーーその進退を 選択したことを知った。




ドーーーーーーーーーン!!


 

安全な上空で ホバーリングをし、事の成り行きをジッと見守っていた「信繁班」搭乗のヘリは、海中から激しい水柱が上がったのを見届けた。



「城主はーーーどうなったんでしょうか?」


 

その言葉が終わらないうちに、月光に 無数の海水の滴を飛び散らせた、黒いメタルの鱗を煌めかせる黒龍が一直線に夜空に飛び上がってゆく。



黒い鱗は 銀の光と濡れた輝きを冬空に反射させ、幻想的なーーーー!!

 

この世の物とは思えない 凄絶な姿であった。



『荘厳な スルガの海王そのものだーーー』

見つめる信繁の目に厳粛に映る。



黒龍は長い体を悠然とくねらせグルリとヘリの周りを1周すると、息を吞む 美しく強く強烈な印象だけを残しーーー



現れたときと同じ様に忽然と、フッと蝋燭の光が消え失せるかに、見つめる者の前から姿を消した。

 


後には 暗い、白々とした銀色の月光のみが残されるのみ。




「『城』へ俺達も帰還するぞ!!」



「今頃『城』格納庫でアグライア様、今か今かとお待ちしているだろうなあ〜」


「そうですよ!!」


「見送りは別の班でも良いんでは無いかと進言したんだが、城主に蹴られた。

『最後まで責任取りなさい!』〜だそうだ」



「信繁さんクタクタなんだから!!

子龍さん、今度は機長として操縦してくださいよね!!

ーーーー何にもしてないし??」



「〜オイオイ、お言葉を返す様ですが雅君ーーー!!


ご参考までに いっとくが?? 最初の巡航ミサイル打ち落としたの俺だし〜?

凄〜〜〜〜い 何様俺様子龍様だしーーー?!


アレなかったら 皆全員とっくに死んでんぞ〜〜〜!」



それを聞くと子龍に雅は べーーーーーっと 舌を出すのだった。


雅はそんな姿も 堪らなくカワイイのだ。

彼は「信繁班」の癒しの天使、アイドルである。


 

「〜言い争いが出来るほどそんなに元気で、班長としては頼もしく嬉しいよ」



信繁はハーーーーッと、張り詰めた神経がプッチンと今にも焼き切れそうにグッタリしながらも、なんだかんだで城までバラバラ、安全に軍用ヘリを飛ばすのだった。



『兎に角 俺達は勝ったんだーーー』 信繁は心の底から ホッと嬉しく思う。


絶対に、生きて還る事をーーーー誓っていた。




「しかしーーーー変だよな?」


「んあ?」


「妙〜なんだよ、ちょっと引っかかる」


「何が??」



「スルガ湾の入り口の彼方こちらにーーーーなぁ、沢山の国防の潜水艦が張ってたんだ。

どうやって彼等に気がつかれず、外洋から内海に潜り込んだのかってな?


それがーーーどうしてもわからない。

彼等の鬼のソナー追跡力は聞いた事あるだろ?


地球最強、ネオアメリカ海軍の潜水専門部隊にすら

『お前らはクジラか? 貴様らクレイジーだ!』〜って言われた程なんだぞ?」



信繁の不審そうな声に、寛ぎぎみの子龍は 気の抜けた返事をした。



「最初っからもう〜網が張られる前に海底のどっかに潜んでたんじゃ無いのか?

『隠密行動』は 超〜得意分野だから可能だろ? そういう所はヘリと一緒だ」



「俺もそれは 一応考えたよ」

信繁が尚も考え込んでいる様子に 子龍はしょーがないなぁと笑う。



「彼等もプロ中のプロだったら、色々とテクがあんだろー? 専門外の俺らじゃ 幾ら考えても理解不能だ。

 

ーーーきっと何処か『抜け道』があったんじゃないのか?」



「だとーーーーまだいいが、もしもーーー

もしも〜だ。


トール軍がフレイで行ったような不完全なワームホールのような場所を使い、自由自在に出入りしていたとしたらーーー!!


そう思ったら、いきなりゾゾゾッと怖くなってーーーーな」



「よせよ!! 真冬の怪談かよ!! 夜 おトイレに行けなくなるゾ。


ーーー心配すんな、そんな事考案する人間なんか いやしねーよ。

 

ワームホールは超常現象あったり前!!の、山程起こる〜宇宙空間だからこそ起きる現象さ!」



「しかし、絶対にそう言いきれるか?

城だって ーーーー超常空間に建設されているんだぜ?」



「そんなのは お前の取り越し苦労だ。


あの途轍もない亜空間を開放する技術革新だって、ジャパンが『極秘』に。


当時、国中からとんでもない数の年齢問わずな天才、優秀な人材を根こそぎ掻き集めて〜だ。


国家規模でーーージャパン『存亡の危機』として、一致団結・総力戦で行ったってなぁ、俺の優秀な長兄の話、外交官のーーー哲兄からの情報だ。


チョコチョコチョコって 上っ面だけ研究して、ハイ出来ましたっーーーて


〜〜〜出来たら苦労はしないだろ?」

 



「そうだな」 漸く信繁は返事をする。



「疲れてるからかもーーーな、変な事言って済まん」



「いいさ ーーーそっち方面は俺に任せろ。

何か上がったら、お前に1番に伝えるよ?」



子龍はいつに無い真面目な顔で 親友にそんな風に確約をする。

 

 

今回「信繁班」使用の軍用ヘリは、いわゆる汎用タイプ、かなり特殊装備に拘って武装しているものの、実験機の光学迷彩も、ヘリ特有の様々な爆音を消す事が出来るノイズキャンセラ−システムも残念ながら装備していない。



よってーーー格納庫に入る際のタイミングは信繁は かなり気をつかった。


偽装しているとは言え、進入経路が周囲から 丸わかりだからである。


 


信繁は管制官、司令部の指示通り、注意深く、亜空間に進入を果たして行く。




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