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幽霊船との海戦 ①

つい先程、樹海「高次元帯」ーーーーー


中空のカモフラージュされた「城」格納庫から、信繁の操縦するヘリが飛び立った。


リーダー自らがヘリを操縦する機長というのも、かなり独特で大胆だが、「もっとも効果があった」


つまり ”操縦が神がかって上手い” のが、信繁が操縦をするというのが、この班にとってのベターだったのだ。


ーーーやむを得ない判断で 致し方なかった。



歩兵である彼らの行動は全て城中央コンピューターでスキャンされ、高度な判断と技能を必要とする場合、専門家から作戦の的確なフォローとバックアップがシステム経由で入れられている。

 


光学機器やハイテク技術の高度な進化により各自の役割分担と戦術が、一昔前とは最早概念、そもそもの発想が違う。


結果として雅の言うとおり「人使いが荒すぎる」結果を産んだ。


基本的に少数精鋭ーーー技術の上手い下手を問わねば、実は皆いざとなれば機の操縦〜

全班員 信繁のフォロー、バックアップに回る事が出来る。


ヘリを取りあえずは代理で飛ばすことも可能なのだ。


メンバー総出の総力戦。

ーーーー少ない人員〜僅かな優秀な歩兵で「何でもこなす」という過酷な状況。


既にこの時代 宇宙艦隊は必要だが地上戦における「大隊」がほぼ要らないというか意味を成さない。


「大人数の生身の兵士」が要らない〜

もしそうした方式の戦い方があっても、場合は不確定要素があまりに高い人間が闘うのでは無く人工知能搭載、正確無比な行動を行うアンドロイドの出番だ。




バラバラバラバラバラーーーーー!!


師走の極寒、燦々と降り注ぐ白銀の光の中、鈍く闇に溶け込むグレーに近い色彩をまとった一機の軍用ヘリが爆音をまき散らし飛行している。



信繁の操縦するヘリは、無事市街地を抜けスルガ湾沿岸部上空にさしかかった。


提出されたフライト計画書ではこのままスルガ湾を沖に直進、イズ半島沿岸部を回り込み、宇宙空港に進路をとるというプランである。


当然これは偽装工作でありアグライア嬢は搭乗してはいないのだが、いかにもそうしているふりをしているのだ。



パラパラと激しい爆音が狭い機中に響き渡る。


班員達はまともな会話が出来ない為、特殊イヤホン内蔵、マイクつきマフを皆耳に装着、リーダーである信繁の指示を漏らさずじっと聞いている。




「他班はサガミ湾 ーーーー トーキョー方面にスタンバイしている。

だが主戦場と思われるスルガはウチの班が受け持ちだ!!


いいな?! 気を引き締めてかかれ」


信繁の声が鋭くなった。



「ーーー今からだ、油断するな? 行くぞ!!」


「はい!!」


眼下には、月光の光に輝く 夢のように美しい大海原が広がっている。

今回は作戦上、どうしても目立つ必要性がある為、実験機ではなくしかも低空飛行はしないと決まっていた。



「ところで班長? あの海面の『筏(いかだ)』って何ですか?」


「ああ! お前は こっちの地元でないから知らなくて当然だよな。

真アジや鯛の養殖筏だよ

スルガ湾は養殖に適してるんだ、めちゃくちゃ美味い魚が育ってるんだよ」



「あ〜山間部ではサ、富士の湧水使った養殖場で最近ではサーモンも有名だよな


あのミネラルタップリの上手い水がドックンドックン流れ込んでるんだから、ソリャ桁違いにイイ魚が育つわさ〜」


信繁の後を引き継いだ子龍のコメントに、皆一斉に感嘆の声を漏らす。



「「「へ〜〜〜〜!!」」」




「んじゃ〜〜〜!

この仕事が終わったら班長が有り難くご馳走してくれる秘蔵のウィスキーと、パリッパリのアジフライで一杯やろうぜ!!」


「アジフライーーーどこの店のが美味いかな?」


「そうだなぁ〜〜」



男達の頭の中は 瞬時にポヤポヤぽやーっと金色のホクホクの、パリッパリ カリッカリ衣の〜♪


でもってかわゆーいシッポ付きで肉厚丸々したハート型、大きな大きな大きな 美味なるアジフライ〜♡

 

じゅるるるる……♪

ポヨンポヨンのーーーー夢の様な美味しい物が頭を支配するのだ。

 



『……たく こいつらーーー!!』


信繁は班員達の お馴染みの異常食欲に溜息をつく。

流石に付き合いが長い故に、いったい彼らが何を考えてるのか聞かずとも丸ごとわかるのである。


巷で話題の食い尽くし系とはまた違うのだが、とにかくコイツらは信じられないくらい毎度毎度べらぼうに良く食うのである。


〜こんな食い意地の張った奴らと女性がデートで割り勘デートなんかした日には、あっという間に女性側が破産するに決まっていると信繁は溜息をつく。


こういう爆食モリモリ系な奴らには、最初から遠慮なく別会計で躾けるのがお勧めだと思っている。


『集中しろよな 全く……!!』


 


「あの……だ、ーーー『アジフライ』だったらな……

ーーー俺が魚を元からさばいて幾らだってフライに揚げてやる。


市場の、一般客が入れる網元経営の魚屋で買って来た、浜にあがったばっかりのぴっちぴちのキラッキラな魚で、そいつを、封切り立ての一斗缶、極上の最高の胡麻油でカリッと揚げたフッカフカなヤツ!


死ぬ程 目一杯ーーー 俺が!!

お前らがもう食えないって言う位 腹がミッチミチはち切れそうな程ガンガン食わしてやる。


ーーーだから、仕事頑張れ!!」



「!!いやっほう!」


「オーーーーーーーーっっっっっ!!!」


「ぎゃーーーーー期待してまーーーーすっっ!」


「〜〜お前達 俺は必ず奢るから、取りあえず落ちついて仕事をしような?」


「わーーーーーかってますって!!」



『どうだか……』


ヘリコクピットで今夜機長を務める信繁は、再び深い溜息をつくのであった。




********************



「今夜の作戦決行は、城主がワザと解読しやすい、ハッキングしやすい電脳通信媒体を使って官邸と、今夜アグライア様の護衛をすると連絡を取ったそうだ。


資料やフライトのルートもこれ見よがしに添付した。


勿論『罠』だと相手も思うだろうが、そんなの知ったこっちゃないと城主からのお達しだ。


『幽霊船(ゴーストシップ)は必ず食いつくから、貴方たちは堂々と行きなさい』

ーーーーそうも言っていたぜ」



「相変わらず吹っ切れてますねっ〜」


「きっと、何か確実な『勝算』があるから言ったんだろ?」



「それを部下として信じるしかないよなあ〜 でなけりゃぁ堪んないぞ?!」

子龍はブツクサ、いつもの様に文句を言う。



「レーダーは深い海中には効かないから、ホント出たとこ勝負ですよね〜」



「それはあっちもお互い様、ソナー1本で艦内には電波が届かない。

もしも今回拿捕〜といっていいのか? 作戦成功して 保護出来た場合〜

 

『個人的意見だけど極秘情報を守る為、幽霊船バーンと自爆する気がするから。

信繁は身辺に気をつけてね?』


ーーーと 城主は出る前に言ってたぞ?」



「あーーー俺もそんな気がするなぁ。

『暗殺』とは言え やり方がハンパなくえげつない、病院施設を誤爆以外で破壊活動なんて、他の星でも聞いたことがないぞ?


まぁそれだけ体を張っていると言う事はーーーだ、しくじった身内にも対応が容赦ないだろうぜ。


マフィア物ではないが『失敗には死を!』ーーーだな。

『身辺の整理』にも、間違いなく、きっと何かあるだろう?

 

とにかく用心には越したことない、ヘリは防御に極めて脆弱だ。


自爆に〜ワザと俺らを巻き込む気かもしれないからな! 

あーーー くわばらくわばら!!」



コクピットの操縦士席に 雅が半身を乗り出し


「今夜は大変だね」

信繁と子龍に 顔をしかめながら相づちを打つ。



「確かに一瞬の判断の遅れで このヘリは撃墜される。


潜水艦から俊敏な動きをする航空機への攻撃など正直な話、余り聞いたことがないが。


現在はロケットの精度も上がり、撃ち落とす対象の画像と、出力音波の2点を入力すれーーーばだ。

簡単に、何処から飛ばしてもロケットは人工知能で追尾可能だしなぁ〜」



「ーーーーあ〜 マジで嫌な時代になったよ〜!」


「全くですよ!!」


今更ながら信繁は苦虫をかみつぶした顔をした。



「ーーー大丈夫だ」

盟友の不安を察したのか、子龍が前を向いたままで信繁に呟く。


「お前ならやれるよ。

だってなーーー『魔弾の射手』の悪魔と契約した俺がついてる、あんなデカイ的なんか外すかよ!!」



「そうだな」 信繁もお返しに小さく笑う。



ーーーー今まで子龍の、絶対的狙撃技量にどれ程 助けられてきたか。



「悪魔と契約してるのかも?」 「アイツは魔弾の射手だよ。」

まことしやかな話がヒソヒソ囁かれた程の 非常に優秀な射撃手が子龍なのだ。


 

不審に思った信繁は噂について彼自身に問いただした。


「あぁ、古代の地球欧州の猟師の 戒め〜たとえ話だよ。


悪魔と契約したかの凄腕優秀な射手でもな?

確かに持ち弾7発中6発は 思うがままに命中させられる、しかし1発だけはどの弾か知らんが コイツだけは『悪魔の物』。

 

ーーーヤツが望む獲物に命中するって訳。


これって多分『誤射』の事だろうなぁ、油断大敵慢心するな!と言う意味だよ。


結構有名な伝承・伝説で、題材としてオペラにもなってる。

そのまんま、タイトルは『魔弾の射手』だよ。


ーーーこいつも誤射して 最愛の恋人に弾が当たっちまう。


この7発の実に危険な弾を持つ者を。

自分の意のままに命中させることが可能、魔力を帯びた最強の弾を持つ射手を『魔弾の射手』って言うんだよ」


 




「魔弾の射手かーーーそうだな、昔聞いたよな、確かにお前はそうだよ」


「だろ?信繁、お互い 生きて還ろうな。

〜ダイイチお前に何かあったらーーー好きなあの子が 死んじまうぞ??」


子龍はボソッと囁くように小さく繋げる。



「……そうかな?」



「当たり前だろ? それ以上言ったらぶっ殺す。

ーーーあぁコイツは矛盾してんな」



「……ありがとな」


「こっちこそ頼むな。

お前の ヘリ操縦のスーパテクがなけりゃ、俺もお手上げってもんだ」



機長席を向いた子龍はニヤッと笑う。


「さっさと囮済まして帰ろうぜ〜〜!」



絶対に生きて還る。

俺達は。


信繁の脳裏に愛しいあの人の面影が浮かんだ。



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