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信繁を襲った悲劇について

信繁の名は、真田幸村の本名「真田信繁」から戴いたものだ              



〜古代日本戦国史上、最強の武将だと噂された男


武器甲冑ーーー「赤揃え」の真田幸村。


配下に「くさのもの」

~忍者を多く召し抱え 諜報戦にも長けていたという。


 

信繁の家系……系譜は江戸時代まで遡る。


彼は嘗てその地方一帯の「大庄屋」という格式ある立場をつとめたという特別の歴史を持つ、途方もなく由緒ある一族の、しかも本家出身。


つまり古き直系の正統の血脈を正しく受け継ぐ、長男である。



現代では地元名士として、家族形態は今日では珍しい大家族で暮らしていた。

 

信繁は連綿と続く家業の会社経営を将来、当然のように継承する人間として、幼少期の頃から惜しみなく最高位の教育を常に施されていた。

 

ーーーー周囲からも

 

その利発な優秀さと天性の才能故に、大いに期待されていた。


祖父母や両親は、情に篤く世話好きで、街の治安にとても積極的で評判も良い大人達であった。


シンシュウ地方出身の信繁の両親は、共に無類の地元故郷をこよなく愛するタイプの人間だった。


これはアマチュア登山家として各地を旅した経験も、その大きな理由の一つだったろう。

国際的にも山岳登山のその道では超有名人、大陸全ての高山を登攀成功させた偉大なグランドスラム達成者だった。



彼の名前の『信繁』名命は……そんな両親の愛と理想の結晶だったのだ。



そんな彼の高校時代。

武道全国大会出場のため、チームとトーキョー滞在の最中に悲劇が起きた。


 

ーーーー最悪の惨劇。




家族・屋敷居住者全員。


はては信繁の幼い頃からの盟友〜警察にも籍を置く優秀な訓練犬


〜つまり警察犬だったジャーマンシェパードにも及ぶ、一家惨殺。




ーーー凄惨な強盗殺人事件。




この事件が信繁の精神、生き様を根底から変えた。




リーダーとしての重責と責任がかかり、かつ3連覇を目指していた信繁の応援の為に。


本来は家族全員でーーー


トーキョーへも学校応援団が手配した車両で、祖父母、両親、妹も一緒に会場入りする筈だった。



しかし出発前日から当日明け方にかけて。

彼の大切な、病弱な妹が40度近い高熱を出した。


そうなると、明らかに身体に無理のかかる移動手段は難しい。


周囲にも感染者が生まれてしまうだろう。



信繁も自分よりも、自らの勝負事なんかよりも



「自分の事よりも、か弱い妹の体調を最優先して欲しい」


前乗りして宿泊のホテルより、両親に通信で願い出た。



兄として家族として 当然だと思った


可愛そうじゃないか……!



その時の通信ホログラム映像を見て信繁の愛犬のシェパード北斗星が、ご主人様を恋い慕い切なげにクンクンと、実に寂しそうにスピスピ鼻を鳴らしたのが……


今でも……

 

目と耳に焼き付きこびりついている事。



優しい家族達は病気の子どもの体調を慮り


「そうだな……」


「この子だけ付き添いのみで、孤独にはさせられないわよね」


全員、とても楽しみにしていたトーキョー同行を断念したのだった。


 


それがーーーー




家族を想う



優しい労りと 



思いやりの気遣いが。




ーーーーー不幸にも裏目に出た。






取り返しがつかない運命の分かれ道だった。





ーーー殺人現場の完全な隠滅を謀った犯人は、広大な家屋敷に灯油では無くガソリンを家中にまいて放火した。


犯人が事前に敷地面積から、正確に使用量を量り周到に計画をし、その上で屋敷内部を全て焼失するに充分な量を事件当日に持ち込んだと警察は睨んだ。



爆発的な引火を引き起こした火災で信繁は家族だけで無く、家財の一切合切〜

 

大切な思い出の品の何もかも、一夜にして失ってしまった。


結局、犯人は今でも一人も検挙されてはいない。


しかしただの「不幸な偶然」を装った押し込み強盗にしては、前記の疑惑以外にも不審な点が、あまりにも数多く存在した。




信繁のみ、家族でたった一人生き残った。



後には家族全員分の「莫大な保険金」が残された。



警察が、信繁を重要参考人、最重要容疑者として疑惑を抱くのも時間の問題だった。



俺があの賑やかな家族と

 

ーーーおまけに

 

目の中に入れても痛くないほど可愛がってきた大切な妹を傷つけるわけ無いじゃないか!!



何度そう警察取調室で言っても、事件があまりにも凄まじく陰惨すぎた。



まるで出来すぎの様に、唯一運良く生き残った生存者の存在。


全国大会出場レベルの武道有段者というスキル。


何を語ってもーーー全く信じてもらえず、長期間拘留された。




「まぁ今は大昔と違って、『拘留期限』なんて良心的な物はないからなあ……」


淡々と乾いた声で、信繁はクリストファーに語る。


結局ーーーー

武道指導員の会長・大勢の地区部長の方々、学校仲間達による校内・地域を上げての大規模な署名活動による尽力が功を奏した。


信繁は言う

 

それにごく少数だがーーー


自分の言葉を信じてくれた刑事さんや警察関係者の方がいた事。


彼等は大会関係者の方から試合取り組みの録画媒体を借り受け

 

正確な時間のアリバイの証明を、寝る間も惜しんで自宅にも帰宅せずずっと根気よく調査してくれた。



彼らには結婚したばかりの愛妻ーーーあるいは新婚の愛する夫がいた事。


そして実は産まれたばかりの小さな赤ちゃん、可愛いさかりの親を慕う幼い子ども達が、父母の帰りをひたすら待ちわびていたのだった。


夫として父親として、家族にどんなに会いたかったか?!


母親としてどれ程、泣きじゃくる声を振り払い、毎日後ろ髪を引かれる気持ちだったか?!



それでも「全くの赤の他人」でしかない俺の無実の潔白の証明。


無実の人間が冤罪に陥ることを防ぐべく、自らの職務を最優先する事に心血注いで動いてくれたと信繁は語った。



「ーーー長い拘留が終わった後、釈放されてしばらくたって、偶々話をした時


嬉しそうにお子さんの簡易ホログラム映像を見せてくれた時は、泣けて泣けて堪らなかった」


「ーーーどうして……ですか?」



「俺は何も知らなかった。


……だって俺がそのホログラム映像の、本当に幼くって小さな子どもから父親を母親をずっと奪い取っていたんだぜ??? 


大人と子どもの時間の長さは全違うんだ、彼らにどの面下げればいいんだ?


思えば〜警察官の人の中にはマリッジリングをはめた若い女性刑事さんだって居た。


リングはまだツヤツヤで傷1つ無い新しい物だったよ。

 

”意味がわかる”と……

 

全ての意味が繋がると本当にーーー

 

本当に申し訳なくてしょうがなかった。

 

悔恨しか無いよ?

 

『俺は被害者だ』『何でこんな目に!』


つまりだ、一から十まで自分の気持ちの事ばかりだった」

 


信繁はそう言った。

 

真っ直ぐな視線がフッとその時下がる。


「現在はどんなに証拠隠滅を謀ったとしても結構な『証拠』が残るんだそうだ」


信繁は静かな声で続ける。

 

ここまで平静に語れる様になるまで、一体どんな葛藤が彼に有ったか


それの苦しい胸の内を想像すると、流石に下手な相槌は打てなかった。

 

ただ黙って信繁を見つめた。



「そう例えば……”事件の時間”ーーー


どうやら微かな聞き慣れない音に、屋敷内部で飼っていたペット〜

 

俺の愛犬のシェパードの北斗星が、反応したらしいんだ。


ああ、『北斗星』は、総称した言い方だ。


ジャパンから見て北の方角、春の夜空に光輝く超有名な7つ星……


柄杓の形の、北斗七星という星座があるんですが、そこから俺が名付けました。


北の方角から”絶対に動かない”とされる、北極星を探す為に

 

まぁそんな事は無いらしいんですが、子どもが最初に親や大人から教えて貰う代表的な星座です。

 

『北斗七星には北斗星という呼び方も有る』って父に聞き俺はこれにしました。


クリス様は何か王宮で飼ってましたか?」



「いえ……何も、残念ながら」


クリストファーは信繁からの問いかけに、ごく短く無難な用件のみの返答をする

 

「中々いいものですよ?


……俺はそのシェパードを弟みたいに感じてた。


えっと、ジャーマンシェパードってわかりますか?」



「はい。

軍用犬やポリス関係で、シネマとかでよく見るイメージですよね〜


えーーっと何というか……”とっても強そうで恐い”…かな?


ーーーそうでないかも知れませんが」



「えぇまあそうですね……」信繁は面白げにクックックと笑う


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