報道後 ①
ジャパン国立大学総合病院が爆撃されたことは時を跨がず、すぐさま電脳ジャーナル配信記事にて第一報は明らかにされた。
平和主義を掲げるジャパンの巨大病院が、国籍不明の何者かによって悪辣非道なテロ攻撃を受けたーーーと、大々的に報道され大騒ぎとなる。
その報道は、地球は疎か銀河中にニュースは拡散されるのだが、少々おかしな感じであった。
「最悪な出来事であるがーーー……!
ジャパン政府の驚くべき勇気ある対応!!
『分身の術』はまるでニンジャ!!」
「流石ビューテフォー ニンジャ国!!」
「アメィジ〜〜ングーーー!! ニンジャジャパン!」
「ニンジャの国 ジャパン!!
ファンタスティーーーーーック!! シノビ!」
「ニンジャニンジャ!」
「シノビ!」
〜概ね、その様な感じで配信されていた。
薬剤で睡眠状態、気絶していたアグライアは知らぬ事だが、電脳通信網にて事件が配信されるやいなや、ほぼ同時ーーー
時空の時差などモノともせずに、ロームルスから大王のプライベート生活域の何処かにある極秘ホログラム通信回線を使用した状態。
ーーーなりふり構わぬ「無事を確認する」緊急のアクセスが城にあったのだ。
『くっっその通信のせいで!!』
漸くーーーやっとベッドについたばかりの激務続きの城主だったのだが。
しかし交わした不文律の約束事〜禁忌事項などへったくれも無く、むしろ何処吹く風、凄まじい勢いでの緊急連絡。
「何事!!」
泣く子も黙るトールからの緊急連絡と言う事で渋々、城主はウツラウツラする夢の中から情け無用、容赦なく叩き起こされたのである。
「も〜〜〜〜嫌になっちゃうわっっ!!』
信繁が執務室に訪れた際に、城主の彼女が驚くべき事に執務室の部屋に居たのはそういった事情からである。
気持ちよく寝始めた、寝入りばなを叩き起こされた城主はモヤモヤする心の中でムカついた。
「ひょっとしてーーー……過保護パパ?
過干渉な親馬鹿??
じゃなけりゃお節介なお馬鹿さん?!」
散々好き勝手に毒づき憂さを晴らしてみたのだが、腹立たしさは消えない。
「もー……細かい小姑みたいな男よね〜〜〜〜!」
だがーーー”こう”も、彼女はチャンと見抜いていた。
ロームルスは当然「パパ」でもなかったし、勿論実際はそんなに年齢が高い筈でも無い。
銀河中がビビリ黙る超軍事大国、惑星トール・軍事参謀長官という厳めしい立場上、わざわざ「年寄り」〜
仕事上、馬鹿にされぬ様必要以上に年長者ぶっているだけだ。
おまけにロームルスは執務室で偉そうに部下を顎で使い、ふんぞり返っているタイプの軍人では無かった。
それどころか~究極の現場主義、ズバリ第1線で柔軟な指揮を自ら執るタイプ。
ーーーそこまでの激務をこなせる為には、鍛え上げられた高い身体能力・集中力・求心力とカリスマ性が絶対に必要~!
つまり彼の仕事の哲学の遂行はーーー「絶対に若くないと出来ない」のだ。
惑星トールが最強と噂される軍事力を維持出来た理由は、実はそれ相当の努力犠牲理想等々確固たる裏打ちがある為なのである。
そんな、普段のキリッと氷のように冷徹かつ熱いーーーー
刀の如くギラリ隙の無い鋭利な彼を十二分に知っているだけに
「なんなの一体〜〜〜!!」
この想像を超えた、予想外の馬鹿馬鹿しい内容の通信には、怖い物知らずの城主ですらガクーッと、ヘナヘナ脱力しそうになったのは仕方が無い。
寝不足でガンガンする頭をふりふり、内心ムカッとしながら城主は呪いを撒き散らす。
ーーーーそれでも微笑みを絶やす事は忘れない。
『全く、自分で自分を褒めて上げたいわ?』
「彼女は無事か?!」
「ぇえ無事ですよ ロームルス閣下?
それは我がーーー
”城”の誇る精鋭『信繁班』がピタリ付き添っている以上当然の事です。
ーーー彼らなら、例え死神の手からだって警護対象者を悠々無事奪還してくるでしょう」
ニコニコ〜〜〜
必要以上の微笑みを振りまきながら伝えると、ロームルスの安心な余り、その場に膝からガクッと崩れ落ちそうな様子が伝わって来た。
『ーーー? あらららら……』
城主は心の中でブブッと笑ってしまった。
『ふぅんーーー?……成る程ーーーねぇ……』
ーーーーそういう事か!
「アグライア様〜姪御様は、今はお薬でお休みになっております。
しっかり体調を整えて〜休息を取り、お目を覚まされましたらーーー……
必ずや、直ぐにこちらより御連絡を致します」
「そうかーーー」
「ええお約束致します」
そうーーーーあの方、アグライア様は今は何はさておいても休息が必要。
これは本当だ。
「ーーーぁーーーそれから……」
ロームルスは実際はーーーもっとアレコレ聞きたがり喋りたそうだった〜が
ぶちっっっーーー! 城主の頭の中で何かが切れる。
『私は眠たいのっっ!!』
〜〜〜〜っっ もーーーー〜〜〜〜やってらんない!!』
ああなんて馬鹿馬鹿しい!
我が儘や、無茶ぶりを、これ以上言い出さない内に、さっさとスパッとホログラム回線を遮断した。
まぁまぁのーーーー鬼である。
『会えない時が愛を育てるーーーーか? やれやれ
ホンット、いつの世も 殿方の本心はデリケートだわ?』
特に純情な”朴念仁”程ねーーーー??
城主はガランとした執務室で1人きりでクスッと笑った
*************
そんなこんなの「後」のーーー城に着いた翌日。
アグライアの気持ちが落ち着いた朝食後、ホログラム映像回線でロームルスは 改めてお互いに状況報告をしたのである。
しかし『心配させまい』と思ったのかーーー……
アグライアはあれ程酷かった「宇宙酔い」について、心配そうな様子の叔父には実際の病状についての、精々3分の1程度の症状しか伝えなかった。
執務室に彼女をエスコートした信繁は、壁沿いに、じっと影の如くに控えておりアグライアの様子に表情がピクリと動いた
『これは良くない傾向だなーーー……』
相手を心配させまいとする健気さは理解出来る
しかしーーーもしも自分はそれをされたら「困る」
”男”は、言いたくないが、「相手に言われた事を言われた通りに」解釈する傾向がある。
それは多分、上意下達のピラミッド型の縦社会で切磋琢磨する状態を、それはもぅ幼少時より能動的に生きる事を、周囲より強く求められ経験させられてるせいなのかもしれない。
つまり「共感」ーーー
過剰な同レヴェル間での、八方美人的横への繋がりは無用。
〜むしろライバルを助ける事を意味するから危険なのだ。
余程の運命共同体でもなければ、生理的に嫌う事柄だ。
そして”親しければ親しい程”ーーー
逆に何でもかんでも、話さないでも良い事までペラペラ話すのが、悲しいかな男という単細胞の動物の習性でもある。
『いつもこんな感じなのか?ーーーそりゃ”前途多難”だろ?』
信繁は男と女の間に横たわる、どうしようもない深くて暗い溝を客観的に見る気がした。
『差し出がましいが……少し自分が出て行くべきか?
このままじゃこの2人、どうにもならないだろーーー』
ずっとすれ違い平行線の2人ーーーーつまり 両片思い
ーーー…閣下は ”人類愛”
身内に対する、条件付で無い親心のつもりだろうが、本当にそれで良いのだろうか?
『……』
そして、ロームルスが例の「2番目の妃」における話題に移った際、信繁はスッと自ら動いた。
ーーーにこやかな表情を浮かべ、彼自身が突然、直接話題に参入したのだ。




