新たな冒険へ ①
アグライアは今回の渡航の切っ掛け〜
姉「タレイア」の居場所がわかったのは、間接的とはいえ彼女の存在があったからだった。
勿論ーーー……
叔父ロームルスの仕掛けたダークな違法行為があったからだったが、それを口を拭い黙っているのは辛かった。
ーーーー正直な彼女は、包み隠さず 全てそれらも含めカミングアウトした。
妃にうち明け 丁寧に感謝の気持ち、心から「有難う」とお礼を言ったのだ。
フレイヤ妃は静かに微笑む 「向こうで信繁様を頼りなさい」
そう言いーーーーおそろしい程真面目な真剣な瞳で、ギュッと、彼女の手をしなやかな両手で握りしめる。
『え!?』
全く、本当に予想外の強い力でアグライアは妃の、隠された強い想いを察する。
「もしも、貴女が『城』で途方に暮れて困る事があったら、いいですか?『信繁様』に是非相談しなさい。
閣下は既に、彼に警護を手配されておられますから、必ずお側に居るでしょう」
「ぁの…… 彼は”信頼出来ます” か?」
「……この世の誰よりも」
フレイヤは強い瞳でアグライアに断言するのだ。
「彼が信用出来なかったら、この世の誰も信頼に値しないと思います。
それに〜彼を『班長』と仰ぐ、素晴らしきメンバーの皆々様は何方も素晴らしき実力者です。
先程あなたが熱心に見ていましたウサギのぬいぐるみはメンバーの中のアナスタシア〜
中でも最も背の高い、ナスチャという愛称の女性スタッフの方から託された宝物です。
ジャパンに行く際に、ウサギのあの子を一緒に連れて行って、是非再びの旅をさせてあげて欲しいのです。
そしてメンバーのーーー特に子龍様は、信繁様の素晴らしいバディで、彼自身自信を持って背中を預けられる盟友です。
たとえ どんな事があってもーーーーー
アグライア姫、信繁様率いるお仲間は全員自らが、例え落命しようとも必ず貴女を守って下さいます。
あの方ーーーは特にそう言う御方、いいですね?
その事を 絶対に忘れないでーーー」
切なさにアグライアはキュッと胸が詰まった。
彼女はラファエル殿下の正妃として、絶対に口に出せない、出してはいけない やるせない強い感情〜
どんなに打ち消しても打ち消しても、ホロホロと溢れ出る切ない想い、それを胸に秘めて生涯、弧高に生きるつもりなのだ。
今のアグライアにはそれがわかる。
それがどんなに辛い事か!!
そうだーーー苦しい想いを抱えるのは 自分だけでは無いのだ。
「有り難うございます」
グッと そう答えるのが精一杯で……目が潤んでしまう。
私もーーー……頑張ろう。
アグライアの ”お忍び” に近い地球ジャパン訪問ーーー
一旦出発が決まってからは、様々な事が1度にワッと押し寄せ、毎日がまるで万華鏡の様に慌ただしくクルクル巡る。
その上で、案外荷物があった。
叔父の言うのには、先方から基本 ”持ち出す事は出来ない” が……
例えば本人の身に纏う服飾以外、しかしこちらからの ”持ち込み” は可能らしい。
アグライアは、姉への贈り物を様々に用意する。
同時進行として『先ず』直接行ったのは、彼女が受け持つお口が達者な可愛らしい愛弟子のレッスンの変更。
「暫く短期留学、お勉強でトールを離れるの……」
叔父のロームルスから、「そう言うように〜指示が出ている。
「ふぅん〜」
可愛い小さな生徒達は、不服そうに唇を尖らせ、透き通る丸いつぶらな瞳をウルウルさせながら話を聞いていた。
「かならず かえってくるよね?!」
「もちろんよ」
「なんだか、もうあえないきがして……」
「そんなことないわよ!」
「ぜったい?!」
アグライアは過酷な体験から「絶対」という言葉の空しさと、嘘を知り抜いていたが……
純真な可愛い子ども達に、残酷な可能性を含む現実を突きつける気は全くなかったからこう答える。
「必ずまた お歌のレッスンしましょうね!
先生も沢山勉強して、もっとお歌が上手になって、レッスンをしに戻ってくるからね?
だからそれまで、先生を待っててくれるかしら?」
「うんいいよ!!
だから アグライアせんせい……」
「?ーーーーなぁに?」
??ーーーどうしたのかしら?
「かえってきたら、ぼくの〜〜〜
ああああああのっっ およめさんになって!!」
「!!」
ーーーー少なくとも、男の子達は例外なくそう告白して、真っ直ぐで真面目な彼女を激しくとまどわせるのである。
そして、更に驚きなのは女の子まで!!
「せんせいは 『わたしと』 けっこんするの!!」
ーーーーー思いっきりの断定で来たのだ。
ヒエーーーーー!!
何気に男の子以上に、凄い強烈に自己主張をした事である。
「女の子同士は結婚できないわよ?」
「そんなことない!!
だってがくえんの、すごくきれいな おんなのせんせい〜
『パートナー』は びじんですてきなレディだし?」
「……そうなの?」
「せんせい げーじゅつかなのにおくれてるっっっ!
せいしんの、こいのさべつは いけないんだよ?」
サラサラの長い髪をツインテールにして輝くサテンのリボン結びをした、格式有る有名学園に通学する女の子は、自信満々〜!!
勇ましく頬をぷぅと膨らませ力強く発言 ……いいや高らかに宣言〜
「せんせい〜!
としのさ10さいちょっとくらい、いまどきぜんぜん たいしたことはないわ!
〜〜〜わたし かまわないもん!!」
『何だかちょっと〜……かなり違う気がするんだけど?』
「アグライアせんせいは、ねんれいさに、こだわるの?
わたし せんせいのことあいしてるもん!! いっしょう、ずっとたいせつにするし?
ぜったいに うわきなんかしないから!
……おとこのひとはダメよ? みんなかならずうわきするもん!!
しんようしてはダメ! だまされないでねっ!」
「ぅんーーーー考えておくわ?」
すっかり小さな小さな少女にグイグイ押し切られ、息も絶え絶え それだけ何とか返答を返す事で精一杯!!
『〜〜意味わかってるのかしら?』
「おませねぇ〜!!」
ヒューッと青ざめるアグライアの後ろには、反対にゲラゲラ〜
無責任に大爆笑する、残念すぎる大人達の姿があった。




