↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/133

タマゴサンドと、フルーツサンド

コンコンコンーーーー


小さな躊躇いがちなノックの音。


信繁自らが配備したガードが外にいる以上、それは大丈夫な相手だろう。


子龍は先程の、双子のD-01政府元侍従……果たして本当に『元』かは怪しいモノだが、”紹介者”への報告とお礼かたがた、謎めく彼等の守人として付き添った為に今は席を外していた。


彼が戻ってくるには少々早すぎる、と言うことは”別の相手”である。


しかし信繁には心当たりがあった。



「どうぞ……」


やはりなーーー……



「こんにちは♪ 必要なものを一式、お届けに参りましたー!」


「済まなかったな雅、色々と面倒なことを済まない」

 

「そんなこと無いですよ!

いっくらでも申しつけて下さい〜〜……!」


そう、果たしてノックの主は知り合いも何も、現れたのは班長である彼の頼みであちこちに信繁セレクトの必要物品の手配……!


肌の弱いクリストファーが、ココを出るのに絶対必要不可欠な、細々する品を注文、依頼に駆けずり回ってくれていた雅だった。


信繁は同じ遺伝子疾患のある妹、今は亡き碧を細々親代わりに面倒を見ていた為に、経験則的に何が必要なのかが事実良くわかっていた。

 

しかもーーー

「ママじゃ無くってお兄ちゃまがいいのっ!」


ここ1番!!

しかも目をウルウルさせ顔をじぃ…っと覗き込み、めっちゃ忙しくてドロドロに疲れた兄を超嬉しがらせる最終兵器を容赦無く発動する、天才的甘え上手の妹。


そのような妖精的ルックスを持つ悪魔みたいな美少女の妹が身内にいれば、嫌でも兄は下僕化という、なかなかな過酷で面白い生活を送っていた信繁であった。


 

先程、信繁が語った強力サンブロック仕様の衣類一式。


寒い上空にも対応、極薄特殊繊維のアンダーウエア一式。


新たにラボで調剤調合した『不夜城謹製』!!

〜遮るモノが一切無い為に起こる、強力な紫外線を99.9999%カット。

防止しながらも、更に肌に保湿も行うという極めて有り難い医薬品乳液……


同じくそうした機能がありながら、瞳の栄養・乾燥を防ぐ目薬等々ーーー


その他様々な……実に微に入り細に入りの、専門医師さえも、誰が見ても流石!と唸る、信繁自らオーダーを出しセレクトされた細々とした用品がケースに入れられ今まとめて届けられたのだ。


信繁は丁寧に中身の確認をし、そして満足そうに頷く。

 

「確かに」


「これでいいんですか?

ーーー注文の品の漏れは無いですか?信繁さん、あったら直ぐに取りに行ってきますが!」


「いいや大丈夫だよ、ただでさえも忙しいのに無理言って済まんな。

この埋め合わせは必ずするから、希望はなんでも自由に言ってくれ」


「全然!どう致しまして〜〜!

でも嬉しいです、そんな風に気を回していただいて♪」



『え…ッッ……どなた?』


だってクリストファーの目の前で、見るからに嬉しげな表情で……


優しく信繁に微笑みかけられた高校生?、キラッキラのティーンエイジャー?な人物。



〜フワッっと耳に流れるショートカット、まるで深夜の蒼穹に散りばめられる綺羅々かな星に似た瞳の「子ども」

 

この、ぴょこんとカワユク頭を下げた制服着用の職員ーーー


クリストファー王太子には『幾つ位かな?』


年の頃は自分よりもはるかに


イイヤ、ズーーーッとズー−ーっとズーーっとーーーーー!!

うんと……滅茶苦茶に途轍もなく若い様に見えるのだ。


 

う〜ん ハイスクールの……「女生徒』??


ーーーーいやいやマサカマサカ!


いくらここが極秘施設でも児童労働禁止の禁を破り、この特殊施設がそんな若い子どもを不法に雇い入れる筈ないし……?


それともーーーーもっと若い??


あ〜〜〜……わかった!多分そっちかも!!


ここに常駐の職員の方の、10代前半の例えば幼年学校…のジュニアのお子さんが臨時でサービスで


”アルバイト”ーーー

特例的に手の空かない多忙なご両親のお手伝いで持ってきたとか?


きっとそうだ!!



謎めいた瞳が星の様に輝く「女生徒」、美少女は何と更に別口に用意してきた物があった。


背後の自動走行、給仕用ワゴン車。

その人物はフンワリ、上にかかった白い大型リネンをサッと外す。



「ウワァ〜・・・・・・・・・・・・・・!!」


途端に……、イエローの華やかな色彩が目に飛び込んできた。

食欲を堪らなくそそる、美味しそうな香り!


何かで、下に更にラッピングをされ防臭されていたのだ。


「信繁さん、お疲れ様です……差し入れです。


タマゴサンドとフルーツサンド、ここに置いておきますから。

パンの乾かない厨房しっとり作りたてを、フッカフカの美味しい内に是非どうぞっっ!」



「ーーーありがとう雅、気が利くな


調理師さんにお礼を言っておいてくれ『素敵なプレゼント感謝してます』って。

最高の心配り、こっちもわざわざ済まない」

 

信繁はなんとも言えないフワッと優しい、甘い顔をする。


人工知能搭載・自動走行ワゴンで運ばれた、大きな大きな細長い銀色の盆。


それに乗ったサンドイッチを、崩れたり落とさない様に嬉しそうに、ユックリと丁寧に銀盆ハンドル部分を両手で捧げ持つ。


直前、前もって操作の、ポケット内部に収めていた極小タッチパネルで床材より盛り上がった、純白のサイドテーブルに乗せあげる。


「……いえーーーー別にこれ位」


「ありがとう雅」


値千金、眩しい程の甘い微笑み


心からの感謝の言葉



「ジュニア??」の「女生徒???」は首までパーーーッと赤くなり……


「失礼致しましたっっっ!」


まるでキラッキラの天使の様な可憐な微笑みを最後に残すと、「美少女」は病室から逃げる様に退出していった。


「……」


『わー可愛いなぁ〜〜〜!』


ジャパンの言語での会話だったから何を言っているのか殆どわからなかったが純情そのもの!


けれども熱烈な「信繁のファン」だというのだけはわかった。



「お前達済まないが、今から雅のサポートを頼む。


その後ついでに皆で、そのまま休憩して、何かしっかり食べろ、休める時に休んどけ。

 

……この後は多分明け方まで、気が狂いそうなほどノンストップだ

”外の奴ら”も同じだ、他班に交代要請しろ」


「いいんですか?!」


「あぁ、俺がそう言ってたって言えば要求はすんなり通るさ。

仕事は持ちつ持たれつだ、無理そうな細かい事は”子龍に頼め”」


「了解」


一気に、今までガヤガヤ人いきれで喧しかった病室が急に最初の、信繁以外誰もいなかった頃の静かな病室状態に戻る。



ーーーー白い静かな空間



クリストファーは、なんだかホッとした。


 

そうだーーー……言うべき事があった。

 

自分が ”そう言わなければ”、おそらく彼は気をつかってしないだろう。

 


「どうぞーーー」


「?」


「お食事、とって下さい、僕なんかにお構いなく」


「……いいんですか?」

 

「ええ、構いません」


「では お言葉に甘えさせていただきますね、クリス様」



クリストファーのすすめに今はサイドテーブルに移された大盛りーーーーー!

 

色鮮やかなタマゴサンド、そしてカラフルで可愛い色合いのフルーツサンド。


信繁は綺麗な手つきで各各つまんだ。


大柄な男性が、モリモリ何かを食べる様子は見ていて気持ちいい。



『とっても美味しそうだな……』


銀盆は他には、新鮮な付け合わせの真っ赤な色彩のプチトマト、鮮やかなライトグリーンの新鮮なレタス。


ハッとする濃い色味のフリルが、よく見れば面白い形状でとてもカワイイ〜

モコモコパセリが、こんもり彩よく添えられていた。



「クリス様もどうぞ、小腹が空いたでしょう?

研究所でーーーー

〜途轍もなく大変でしたから」


「ぃいえーーー僕は!ーーーー」



そんなの出来ないよっ!

僕がもし勧められ いい気になりパクパク食べたら!


真面目で大活躍!

〜働き者の信繁の分が無くなってしまうじゃないか!


ところがである、体の方は予想以上に正直者だったのである。


突然キュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ、お腹の虫が盛大に鳴きだした。



きゅるるきゅるる


きゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

 

ぎゅーーーーーーーーーーーーーーーーーー!



ギュギュギュきるるるるるる〜〜〜〜〜




きゅぅん♪♪♪




きゃ〜〜〜〜〜〜〜


『はっ はっっっ はっ恥ずかしぃっっっ〜〜!!』



ギュルルルルルル〜〜〜〜〜!!



……ゴロゴロゴロ



きぅーーーーーゅぅん〜♡





わたわた慌て焦る、”お腹の持ち主”

クリストファーの気持ちなんぞお構い無し〜ーーー!


「お腹の虫軍団」は意気揚々、高らかなファンファーレ!



盛大過ぎる大合唱を、一体ドコから?!っと焦れば焦る程。


やめてやめてと信じられない程、物凄い高音低音織り交ぜて一気呵成、豪華フルオーケストラで演奏し始め出したのだ。



『キャーーーーッッッ キャーーーッッッ』



なんだこれーーーーーーー……!!




『恥ずかしすぎて今すぐ死にたいっ!』



これは無い……断じて無し!!


自分は尊き世継ぎ、王太子の身分だ!




「ごきゅぅんーーーーーーーー♪」



カーーーーーーーーーーッ


恥ずかしくって恥ずかしくってーーー思わず部屋から飛び出したくなった

 


クリストファーは俯いて真っ赤になり、ババッと寝具に潜り込む


必死で上掛けで顔を隠すと、そのまま一気に頭までズボッと被り寝たふりをする



ところがその間も憎々しいお腹のオーケストラは自己主張を繰り広げるのである


「え〜何で?何でーーー?」

 

「お願いして食べたらいいのに!」


食欲、体の欲求に正直なお腹の虫たちはきゅーきゅー全力で叫び続けて、ガンガン自分達の要求を通そうと、シュプレヒコールを上げるのだ。


高らかに、盛大に、全然なりをひそめないのが恥ずかし過ぎる!!


『ああーーーーどこかに行きたい』


僕 居なくなりたい


クスン、泣いちゃってもいいかな?



信繁はその様子にクスクス楽しげに笑うと、寝具をそぉ……っとめくり、サイドテーブル上の銀盆を、スッと指先で彼の前に来る様押し出した。



「ーーーー」


「……」


「……誰にも言わないで下さい」


「言いませんよ?」


そう言いながらも信繁はププッと思い出し笑いをした。



「……!」


クリストファーはボンッッと爆発するみたく、顔全体が赤くなる。


ポロポロポロ……


とうとう、ふにゃ〜〜〜〜っとカワイイ泣き顔になったクリストファーに信繁はトントンと「ドンマイ」

〜まぁ人生そういう事もあるさと優しく背中をタップした。

 


差し出されたハンドタオルでクスンクスン……真っ赤になった目元を抑えるクリストファーに信繁は言う


「これは私の好物なんです」信繁は語った。


おそるおそる……最も端にあったサンドイッチを手に取ると、そっと口に運ぶ。



「!」


「どうです?」

  

「!!!美味しい〜〜〜〜!!」


差し入れの盆に盛られた、見た目こそシンプルな手料理。


似たものはD-01でも有ったが……彼に取っては初めて食べる品だった。


食べてみれば相当工夫と、細やかな気配りとアイディアが込められている事がすぐにわかった。


「ーーーどうやって作ってあるんですか?」


「ぁあ……ジャパン特有のマヨネーズで……

刻んだり潰したエッグがあえてあるんですよ。


単純な料理ですが、懐かしい家庭の味で、ジャパンの多くの人間にとっては幼児体験を彷彿とする、幼い頃の調理実習で習うほどです」


「そうなの?」

 

「えぇ、フルーツサンドも人気がありますよ?

ビタミンが取れますし、幸せに気分が明るくなります」


っっっっちょちょちょちょ何コレ おおおおおおお〜〜〜美味しッいッ!!

 

信繁に新たにすすめられたそれは、あまりにも、舌どころか脳が蕩けるように美味で、ついつい手が伸びる


〜〜〜〜〜もう1つ欲しいっっ!!


「もっと食べて下さい」

 

「いいの?!」

 

「ええ」


「本当に?!」


「勿論」


優しい甘い促しでーーーで、ついつい、ついつい手に取ってしまった。



お腹の虫たちも大合唱で応援する

 

実際……先程よりも高音トランペットコールが喧しくて…



ついつい


ーーーーー不作法にもパクパク……!



お行儀悪く、更に手が伸びてしまった


「!!!!!」



しまったーーーー


明らかに「食い尽くしてしまった」事に呆然とする。

 

優しい彼の分まで平らげてしまったのである。


すると美味を満喫満腹したお腹の虫達は、最後に満足げに……



「ごきゅり♪♡♪」


 

「……」


最終章、楽章エンドの〆とばかりに嬉しげに1声鳴き、それを聞いた信繁はハハハと背を逸らし仰け反って笑うのだ。

 


『もう何も言えない……』


ヒィヒィ恥ずかしすぎて、開き直るしかないよーーー……!!


 

「ごめんなさいーーーー」


「えーーーっと、一体全体、一体何を謝る事があるんです?

健康な精神は健康な食欲を持つ体に宿るってもんです。


クリス様のご様子、……見ていてホッとしましたよ?

今の方がずっと良いし、年長者から見て自然体でカワイイんですよ。


貴方はその方が良いですね、やっぱり!」


 

そう言い、信繁はにこにこと邪気も無く明るく笑うのだ。


薄いブラウンの理知的な瞳がキラキラ益々透き通り、思わず見惚れてしまう微笑み。


ーーーー魅力的で悪戯っぽい屈託無い笑み。


 

『僕が女の子だったら絶対惚れちゃうよ……!』


それ位素晴らしい、しかも自分1人だけに向けられた贅沢な絶対的好意だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。