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大騒ぎのクリスマスクッキング (11)


信繁は、手の空いた時にこんな気配りをする。


当日休んだスタッフの為に個人的に行った事ーーーーー



「瑠架〜備品でこういうの無いか?」


「えっと……確かここにみんなーーー 

〜〜あったあった、好きなの使っていいわ!


粉も砂糖も古くなると膨らまなくなるし、鮮度が落ちるから全部使っちゃって!

粉類は案外管理が難しいのっっ!


今は冬だけど部屋は何所も今時暖かだし、中でダニなんかが夏場は発生しやすくってね、それがアレルゲンの元になるのよ〜〜〜

 

寧ろ使い切って、そうしてくれると助かるわっっ!」


「良いのか? お〜〜サンキュ……ッッ!」

 

 


『あったあった〜 今日はコレしか無いだろ!』


目的の品を見つけ信繁は思わずニンマリ。


信繁は備品の ”とあるクッキー” の型と、シャクシャク音のするクッキングシート。


そこそこ余ったーーー粉類や砂糖類。


後、使い捨てシリコン製手袋2組(対アレルギー対策済み製)、ラッピングで残った赤とグリーンのサテンリボンを瑠架から拝借。


自身も売店から、お値段高めの発酵バター、チューブ入りショウガ〜摺り下ろし〜を用意……


いつの間にか器用に、隙間時間を見つけては欠席スタッフ人数分、ジンジャーマンの型抜きで作った滅茶苦茶可愛らしいジンジャークッキーを焼き上げていた。

 

ショウガは体を温め、穏やかに回復に向かわせるから、女子は見た瞬間キャーッと喜ぶ事受け合い。


レシピは予め電脳動画サイトで確認済み、暗記をしている。


マメな信繁は、粉糖を溶かして作った純白のアイシングを使い顔の模様を描く。


模様はフォークとスプーンと……瑠架がフルーツの試食に使った爪楊枝の残りで描き入れる。

 

こんなちょっとした”遊び心”が貰った人間は嬉しい。

 

信繁は2つ目の使い捨て手袋装着の大きな両手で……

 

カシャカシャシャクシャクとクッキングシートに、あら熱を取ったクッキーを人数分綺麗に包み込む。


上手い感じで紙を2つ折りに袋を造り包み込んだ。

 

ギューーーーーっと絞った入り口根元に器用にサテンリボンをシンプルに結ぶ。


ーーーこういう場合は”ちょうちょ”結びが素朴でイイ。


『……中々の出来だ』

 

……左右対称で傾いていず、結び目が不格好で無い事に信繁も満足。



「〜〜〜…これッッッ!」


「どうぞ、ラッピングしたのを病気で休んだスタッフさん達に渡して欲しい。

で〜……こっちは試食用だ、食べてみろ」


信繁はそう言いながら未だホクホクの「見本」を……小皿に乗せた物を瑠架に丁寧に渡すのだ。


「どうだ?」

「いいの?」


「味がわかんないと主催者として不安だろ?当然だ」

「いただきます」


信繁に手渡された”試食用のクッキー”…を口に含むと、ホロリ甘く よい香りが途端に鼻腔をくすぐる。


しかも歯触りが良い〜カリカリしたサクサクの食感!


今までの疲れが一気に吹き飛ぶようだ。

 

「ぅッッわ美味しい〜〜〜〜……!!」


「瑠架の分もあるからな、トレイに入れて置く。

乾燥剤が添えてないから、しけらない内に休んだ人達に渡してくれ」


信繁はホッとした顔で笑う。



『そりゃ彼女達は喜ぶに決まってるし?!…』


信繁が心を込めて作った、栄養価の高い美味しいジンジャークッキーにどれだけ心が和らぐか!!


気質的に真面目で堅実な彼女らは、実は信繁のファンばかり、瑠架には手に取るように それが想像出来た。


大好きな憧れの人物から貰ったクッキー (しかも彼の手作り!!)


端っこだけカリッと食べて、後は透明袋に死ぬ程乾燥剤の小袋入れてクッキーもラッピングも込みで厳重に密封し飾っておくかもしれない。


或いは冷凍庫にかも?!

 

大切に大切に毎日眺めてーーーー見つめるだけで幸福。

幸せ気分を出来るだけ長く感じる為に。


〜なーんてね♪


瑠架はぶっふっふ……と気味の悪い含み笑いをする


「いやーーーーするわけ無いか?そんな事」


自分用として貰ったラッピングをバリバリ開けると、中身を豪快にバリンッッッと真っ二つに割って食べる。


「うま!!」


〜〜〜〜信繁って本当に気が利いてる……!



瑠架は「全く自分が考えた通りの事をした」ーーー

 

〜本日調理お休みスタッフ”が見たらエ〜〜〜ッとポロポロ号泣、酷い酷い酷いとさめざめ泣き崩れそうな雑な食べ方で、あっと言う間にモリモリ完食。


ラッピングも手でクシャクシャッと丸め、ゴミ袋に処分。


「わ〜〜〜良いじゃ無い?!」


リボンは丁度良い長さだーーー未だ使えるかも!?

 

自分でワザワザ切らずに済むしね〜と、そのまんまポケットにイン!



************



瑠架は、最後まで自分の後片付けに付き合い残り、本当に頼りがいがあり、他者に優しく爽やかで有り続けた信繁を感謝の気持ちと共に深々頭を下げ見送った。




そう……今夜の彼は、やることなすこと、女の子が夢で理想に描くそつの無い王子様そのもの!



子龍君や雅君の優しさ格好良さにも改めて感動し驚いた、流石、仲の良いという噂の『信繁班』のメンバーだと納得する。




彼らの良いところは、立場的な強い連帯感と責任感はあるが、そんな自分達が特別には「格好いい」という自覚が希薄な点だ。


まぁそんな事言わなくとも ”あ〜それもぅ知ってるし?”って、子龍や雅なら平然と言いそうだけどね!


真に格好いい人間とはそういう物なのかもしれない。



エレガントに全員が全員とも今夜誰かの喜びと幸せを願い、それを目指し常に行動していた


……

 

それが当初あれ程ガチガチに緊張しまくっていた参加者の女性の心を開かせる鍵になったと瑠架は思う。


彼等全員、自意識過剰では無くソフトでスマートなのが、なお好ましく端で見ていても微笑ましかった。




つまりーーー全員性格が良く優しいのだ。


真摯な、見下した感ゼロの相手に対する思いやり、コレで心がほだされなければ女性じゃ無いと思う。



『……あ〜ぁだけどーーー……』




ーーーーーーとっても頭の痛い問題が1つ




”明日”からーーーーーー


「何で!!……信繁様達が、お揃いで来る!!って!

この私に、教えてくれなかったのよ!!」


瑠架の馬〜〜〜〜〜鹿ッッッッ!


バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ


しばくぞしばくぞしばくぞしばくぞしばくぞゴラァッ


バーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカ

 


……はぁーーーてな感じの……!


今日の大成功の顛末を聞きつけた、チャッカリ美味しいトコ取り大好き面倒くさがり我が儘女達ーーー


 

「ぁ〜ら大変ねぇ、私そんな事出来ないぃ!


だってねーお家のシェフがぁ作らせてくれなくてぇ、だってだって〜

”しなくていいです”ぅって言うんですもの!


聞かなくっちゃいけないでしょぉ?」


「お食事はレストランに食べに行くから、自分では作れなくってぇ〜〜〜」


 

何時も丁重に誘っても フンッと馬鹿にして一切参加しない、一部女性職員。



……身勝手ないちゃもんとブーイングがブンブン凄まじいだろうなあ~


瑠架は溜息をついた

 

まぁ挑発行為 ”そうした”ーーー……ケンカ売ったのは自分の方だが



だってーーー


城 全女性職員にとってアイドル同様の3人と、殆ど身体をピターーっと密着し(結果論だが)

 

ロマンティックな「クリスマスケーキ」をお互い手を添えながら、真剣に作った上に、超絶格好いい「彼等の㊙映像のお土産付き」!




明日からーーー……

 

今日の事を知った女性職員から、文句と苦情が殺到するだろう。


しかもネチネチ。



「はーーーーー」



ーーーーーメンドクサイ事この上ない。




「まぁ〜〜……何とかなるか?」



何処までも前向きで、いきいき不屈な精神のポジティブシンキングオンリーな瑠架は1人明るく笑う。


きっと大丈夫!!



だってーーーー……もうすぐクリスマスだもの!!


何か今年はとんでもない奇跡が起きる予感がする。



彼女はフンフン〜〜〜……

若干調子ッパズレのクリスマスソングをハミングで元気よく楽しげに唄いながらガランと今は広く感じる調理室の最後の点検を済ます。


調理中かけっぱなしの空気清浄機を、自分が出た後3分後に自動停止する様に設定〜


瑠架はパチリと全ての照明用ライトをOFF……


部屋出入り口の設置の認証システムにカードをピッと読み込ませ、自分のID番号を打ち込み封鎖する。



開催すら危ぶまれた会は、見事に大喝采の中、無事終了。



後には、微かにフンワリ残る甘い残り香が漂うばかり。



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