大騒ぎのクリスマスクッキング ⑦
4人の男性隊員のうち最も若く小柄なのは雅だ。
雅はその名の通り”みやび”で……可愛らしいルックスに若さ漂うキラキラとした輝きを放っている。
実家はジャパン政府認可の、何カ所も姉妹園がある巨大保育施設チェーンを経営展開しており、両親祖父母ーーー……
成人した姉妹とも、朝早くから運営の為に数多くの施設に分散し勤務している。
雅は母が総帥として園長を務める保育施設で生活しており、彼にとって母親は厳格でひたすら恐ろしい存在だった。
企業トップ〜責任者として当然ではあったのだが、母は常に男の子である彼にビシバシ厳しく甘えられず寂しかった。
彼女としてはいずれかは自分の後継〜
補佐をする人員とわくわくし、心の中では優秀な息子に物凄く期待しており、深い愛情の裏返しの為でもあったのだが、生憎そういう肝心な事を真面目な親程言いたがらない。
不器用な母親と、こまっしゃくれ盛りの息子。
平行線、すれ違いの2人。
振り向いて貰おうと悪戯しては〜母から、それはそれはこっぴどく怒られた。
しかし、ひとりぼっちで鼻水だらけで エグエグとしゃくり上げていると勤務の保育士のお姉様方が決まって
「みやびくーん」
〜〜〜何時も決まって、母親に見つからない様に子どもなりの正義感や言い分をジックリと聞いたり 叱りながらも慰めてくれたり ヨシヨシしてくれた。
母親は堅物で厳格な教育者だったが、他の雅に対する人間関係は良好で、溢れるばかりに愛情たっぷりに育てられたのが功を奏した。
雅は決してグレたりせずに、すくすくと心の優しい少年へと成長。
しかし……少し大人になると、今まで自分の味方になってくれた働く女性達の置かれている「やるせない立場や気持ち」〜
微妙な事柄が柔軟な心にも透けて見られる様になった。
「泣かないで、僕がずっと側にいるから」
少しでも過酷な職場環境の彼女らの助けになろうと、子ども心ながらウフフと喜ばせたり、聞き役に回ったり……
或いは〜様々な子どもらしいアイディアで、何とか気持ちを明るく和らげようと健気に勤める事が多くなった。
実際”ピアノ”もその手段の1つで……!
「あのね? ぼくたちのおたんじょうかいは〜せんせいたちがいつもたのしくおいわいしてくれるけど。
じゃ? せんせいのハッピィは いつだれがおいわいしてくれるの?」
「……それはーーー」
「だからね? ぼくたちみんなでおいわいすることにきめたんだ。
じゃっっみんなはいって〜〜!」
「!」
ゾロゾロゾローーー
「いいね?〜 じゃぁ……さんハイ!」
ーーー雅はクラスメイトを誘い……
声高らかに美しいハーモニーのサプライズ!
〜特別な誕生日ソングを披露したのだ。
幸か不幸か…… ”ハッピーになって貰う為”の、相手の好みに対する情報収集能力が強化され、いつの間にやら結果的に「事情通」になり〜現在に至る。
元々勘も良く洞察力や記憶力にも秀でていたからむいてもいた。
体力的には、信繁や子龍など特殊部隊の百戦錬磨のメンバー達の足下にも及ばない、綺麗でひ弱な優しげな青年。
しかし永年培われた驚異の情報収集能力と解析力、天才的な機知と機転の早さは他の誰の追従を許さない。
雅は〜精鋭信繁班を支える頭脳〜無くてはならない絶対的な心臓部と認められていた。
時が経ち、長い間アイドルであり潤滑油であった雅が 就職でいよいよ実家を離れる際、雅の事をよく知る職員の保育士や主立った働くママ達は名残を惜しみ
「雅君へ」ーーーーと、とある心のこもったプレゼントを贈ることに決める。
まず保育士の彼女達は雅に何かを贈ろうと考えた際ーーー
「取りあえず 全員で行うことにしようよ?」
延長保育を受けるグループの最後の子ども達が帰宅した、ガランとしたひっそりする夜間の室内でヒソヒソ相談。
「何が良いかしら?」
「彼一生懸命 忙しいのにアルバイトで頑張ってくれたし?」
「やっぱり〜実用品が良いわよねぇ〜〜〜?
どう? 長く使えるのってなにかなぁ?」
「じゃぁ ーーーこんなのはどう??
××××とか?
かなりーーーー時間はかかるけど?
使う度、きっと私達の気持ちが伝わるし……!」
「そうねぇ〜警察官の鬼訓練で、この先大変なんだしーーー
チャンと寝られないと、可愛い私達のか弱い雅君 コロッと死んじゃうわ!」
「ぅわヤバイ!」
「じゃあ そうしましょう!!」
「なら皆に連絡しとくからチョイチョイーーーちょっとずつ全員参加で!!」
「オッケーーーー!」 「意義なーーーーしっ!」
雅はそれを、城〜寮へ引っ越しの荷物と共に特別便で大切に発送。
薄明るい部屋で、梱包材をガサガサ丁寧に外し、ベッドの上に ゆっくりと大きく ”プレゼント” をフワリと広げる。
それはシングルサイズの、本当に手の込んだ1枚の「キルト」のベッドカバーと
”裾模様がベッドカバーと揃いのデザイン”!
1着の、雅の体のサイズにピッタリのお手製エプロンだった。
ベースは濃紺の生地、ベッドカバーとエプロン両方それぞれに沢山の、それは沢山のクロスステッチの刺繍が小さくほどこされている。
男の子が好むであろう物ーーーロボットに車両系乗り物
宇宙船に、 サァッッッーーと 夜空を駆ける流れ星、素敵なクールな宇宙飛行士。
子どもの頃、大好きだったカブトムシやクワガタ等も、柄が喧嘩しない様 巧に工夫され小さく刺してあった。
「凄い!」
一体どれ程膨大な時間を費やしたのだろうか?
どれもみなーーー小さな小さな カワイイサイズの刺繍だった。
時間に追われる忙しい中、自分の為に 皆で夕刻集まり……少しずつ少しずつ 心を込めて製作してくれたのだ。
多分「1人1個の模様」〜刺繍糸で刺したのだろう、だから、大きい刺繍が出来ず、どことなく針目が違う事から 充分それが想像出来た。
雅は鼻の奥がつーん…とし、胸がいっぱいに。
「〜〜〜〜……!」
相部屋の友人が 帰ってこないのを見計らい、雅はエプロンを ギューーーッと抱きしめベッドカバーに顔を埋めてワンワン泣き、声が嗄れる程泣いた
それ以後はどれ程訓練が辛くとも表だって泣いた事はない
エプロンは冷やかされる事もあったがその度に〜
「本当はさぁ〜〜君 羨ましいんでしょ?」
自分をからかった相手を、見事に撃沈して来た。
エプロンは随分くたって来たが、雅は今でも大切に自信を持って愛用〜着用している。
だって〜彼の心を支える大切な宝物だから!
雅の可愛らしい表情に〜〜それは、何ともユーモラスな雰囲気がとてもよく似合っており、見る者の微笑みを、ついつい誘わずにはいられない。
だって世界中何処にもない、ただ1枚の……愛情タップリ、とってもキュートで素敵な素敵なエプロンなのだから。




