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大騒ぎのクリスマスクッキング ⑤


それは何故かーーーー?



「??」


「どうしちゃったんでしょうか??」


「変だよなぁ〜〜〜やっぱ」





参加者達、女性職員の目が〜……怖い怖い



だから子龍は、単純にこう判断した



自分達ーーーー特殊部隊隊員が


ーーー訓練漬けで普段あまりというか、普通でない業務形態故、滅多に多くのここの一般的職員とふれあう事もないからなのだろうかな?



きっと常に一般職の職員とは隔離状態だから、ズバリ不審者〜〜〜〜!!


「こやつ何者??」


彼女らにとっては、存在自体が珍獣枠で非常に物珍しいからだろう。


無理もないぜ、接点は何しろ談話室か食堂くらいだ


「そりゃなー大体 通常厳つい戦闘服ばっかだしなぁ〜……

自分達の私服姿を見る事は滅多に無いし?」


それにしてもだ、調理をするというか、甘い洋菓子を作り、エプロンを身につけた男性が そこまで〜

 

ーーーーーーー珍しいんだろうか?


……「?」な疑問もそこはかとなく感じる



これって男性に対する逆差別ではなかろうか?ーーー



一方 当の肝心な信繁は、女性の視線がズイッと一斉にジロジロ注視するのを意にも介さない


 

ーーーと言うよりも ”業務中”

普段よりも悠にリラックスして見えるのだ


かといって、レディにデレデレ色目を使う様子も全然、これっぽっちも見受けられない。



「スゲえよな」

「全くですっっ!」


 

信繁は武道の「師範」黒帯であり、なお資格も真面目に取り続け、彼は今や「支部長」の肩書きを若くして所持している。


既に大勢の隊員の為に「城」武術教育係として、居並ぶメンバーが多い時は、ゆうに100人以上の生徒の最前列・真正面で隊員達と向き合い、日々汗を流し丁寧に指導をつけている。


 

分け隔て無い、わかりやすい指導は男女職員に非常に好評、彼目当ての女性職員にも、きめ細やかな対応をしている為そちらでも大人気である。


(今はファンクラブが睨みを利かせているから、冷やかしの興味本位のイチゲンさんは入れない)



「ほんと何で出来るんでしょうか?」

「そうだなぁ……」


子龍は雅を見つめる


澄んだ真面目な瞳が真っ直ぐに見返してくる。



「え〜ーーっと、お前だって ”教育関係の家の子” だろ?」

 

「ーーー向き不向きがあるんですっ!

ああ言うのは、ある程度リーダーシップを取れないと出来ないんです

 

〜”ああした教育関係”ーーーは」


シュンと雅は下を向いてしまう。

 


親友はおそらく武道家として長い間、教育者側の、弟子や生徒に見られる状況に順応しているからだろうと子龍は思うのだ。



結局は自分とは格ーーーー”器が違う”のだろうと。



「向いてるよなぁーーアイツああいったことがサ、”先生向き”だよな元々、性質的にマメだし」


「そんなの当然ッッ あの人は何でも出来るし ”優しい”しーーー……

ウン、マメなのは同感です。

 

でもーー信繁さん、凄いですね……

ーーーーーこの環境で、僕恐いです」


「まーーなーー ”馴れ”ってすげーよなあーーー」



子龍と雅はお互いに顔を見合わせ、首をすくめる


恐い

恐すぎる


異様すぎるだろっっ!


ビシビシとギリギリ感じ取れる、殺気だった女性陣の視線を雅も感じ取り、恐ろしげにボソッと子龍に呟く。



「普通ーーー甘い洋菓子を作るのって、絶対こんなんではないですよね?」


「そりゃぁ そうだろうよーーー?」



子龍は長い腕を組み合わせウ〜ン 腕組みをする。




************


そんなこんなで始まったクリスマスクッキング〜


長身の信繁はーーーー各調理台を順々に回り、丁寧に調理手順の説明

 

フルーツの苺の、美しい切り口にするスライス方法、或いは大切な土台のスポンジ生地の泡立ての手伝いをしている。



一般的なブッシュ ド ノエルの土台生地〜ビスキュイ ショコラの作り方



……


全卵とグラニュー糖、ココアパウダーを合わせ、ボールの上から垂らしてみて、8の字が書けるまでしっかり泡立てる。

 

これが結構大変な力業……キツイ作業なのである。


粉類も同時に並行に用意し、しっかりふるっておく。


出来上がったそれぞれ2つを、サクッと混ぜ合わせ、天板にシリコンペーパーを敷き平らにならし、220度のオーブンで数分間フカフカに焼き上げる。



「済みません、手伝っていただけないでしょうか?」


「ええ、いいですよ? 何ですか?」


「なかなか卵とかがが混ざらなくってーーー」


信繁はウンウンと頷くとこう説明する。


「卵黄に含まれるレシチンには、本来混じりにくい水分とバターの油脂を上手に混ざらせる天然の乳化作用が有るんですよーーーー凄いでしょ?


後、ココアパウダーの中にも油脂が入っています、ですから綺麗な混ざり具合は命なんです。


ここを大変でもしっかり気合いを入れてやっておくと、滑らかな蕩ける口当たりが生まれます


でも、手が疲れましたよね? 代わりますから、少し休憩なさって下さい」


「〜〜〜〜〜ぁぁぁぁぁぁりがとぅございますぅ」


「どういたしまして」


ニッコリ、信繁は優しい笑みをフワッと浮かべた



「「「「「「「きゃーーーーーッッッ」」」」」」」




もうさっきの……恐ろしいばかりの重苦しい沈黙とは違い、大騒ぎ!!


自分の分が出来上がった人間は、親切な作業中の信繁の動画を撮るべくワーワーキャーキャー黒山の人だかりへと変わるのだ。

 


信繁はハンドミキサーを使用しないホイッパーでのフワフワな、絹に似た、きめ細かな柔らかい下地を作るコツを知っている。


 

彼が撹拌するとまるで魔法の様だ


シャカシャカシャカシャカ〜〜〜〜〜〜


軽快な耳に心地良いーーーーリズム感のある爽やかな音ーーーーー


「貸して下さいますか?」

 

「ぇぇぇええ」


「では〜こんな感じですよ?」


彼が手を貸す


ボールを受け取ると、何故だかホイッパーであっという間にピカピカに上手くとろみがついてゆく。


ツヤピカでこの段階で既に美味しそう!!



「うわぁぁぁぁ〜」

「スッゴ〜〜〜〜〜ッッッ!」

「素敵ッッッ」


その度に嬉しそうな歓声が響めく。

 


『まだチョイ早いな……』



信繁の見立てでは、まだまだクリームの準備は早すぎる。

なるべく参加者の足並みを揃える必要がある。


今先走って準備すると、いざ絞り出す段になってフカフカと分離する可能性が高い。

なんといってもクリームは滑らかさと軽やかさが命だ


だが、やる事が無くて、作業先行者が飽きてもつまらないだろう


ではーーー……どうするか?



「じゃぁ次はフルーツのカットをしましょうか?

 

”お手本” を見せます、こうするとーーーー」



ストトトトトーーーーーーー


少し難易度が高いが、ゆっくり落ちついてすれば誰しもが美しいカットが出来る方法の実演を行う。


これで興味が薄れず好奇心が途切れなく続くだろう。



「ここをこうするとーーー」


成る程言う通り!!

包丁で見事な薄切りの果物スライスが出来上がる。


「うわぁ〜〜〜〜」 女性職員の目が釘付け!


「すごーーーーい!!」

「信じられないっっ!」


「じゃぁ仕上がった人はやって見ましょう、出来ますか?」


「「「はいっ!!」」」



真剣な様子だが甘い微笑みの信繁の、優しい奇跡のマンツーマンの指導はまだまだ続くのだ。



「出来なーーーいっっ!」

「やってー〜!」


ーーーーと言って投げ出す女性は1人も居なかった。



皆信繁に〜健気にも「いいところ」を見せたくて……!

出来ないなりに 彼女らは一生懸命頑張ったのだ。


信繁も全員が出来るまで 手取り足取り〜1人1人に丁重に根気よく気長に褒めながら付き添ったのも好評で。


臨時講師役として見上げた根性と言え、もう充分である。


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