大騒ぎのクリスマスクッキング ③
「お願い!! 貴方しかいないから!!」
『やっぱり信繁は優しいわ!サッスガ私の同期よねぇ〜〜〜!』
そうだーーーー持つべき物はやっぱり頼りになる心優しき友人だ。
自分に両手を合わされた信繁は快く引き受けてくれたのだもの……
切羽詰まり、万事休す、泣かんばかりの表情と気持ちで言った”自分のお願い”を
「いいよ」……
本当に優しく甘やかに穏やかに心優しく聞いてくれた〜……と!、瑠架はその様に思い込んでいた。
実態は事実と乖離ありありすぎだが、生憎細かいことは気にしないタチである。
信繁は結局渋々瑠架の頼み、調理助手を引き受けた。
(瑠架の目にはそうは映っていないが)
「無理だよそんなの」
突然言われてもさぁ〜と、最初は驚きの余り断ろうとしたのだが、確かに講師役である瑠架は常日頃、確かに散々業務で「信繁班」
ーーーいや彼自身もが、現在進行形で大いに世話になっている相手だ。
「そりゃまぁ時々は借りを返しておかなきゃなぁ、はぁ、しょうが無いか?』
信繁はそぉっとコッソリ溜息を吐くのだ。
信繁は隠語で「実験機」と呼ばれるジャパンにおいても、たったまだ1機しか存在し無い貴重な特殊秘密航空機の主席テストパイロットである。
一旦機器を作動すると「全く姿が見えなくなる」、光学迷彩機能搭載機〜
城に勤務する全ヘリパイの中で厳選され選抜され、晴れがましく機長として搭乗し日々操縦している。
実験機は2パイロット制。副機長は相棒の子龍
内部に搭載する、精密な頭脳……
人工知能・コンピューター操作と整備調整役は、技術専門隊員の雅〜と言う配置になっている。
そんな信じられない特殊ヘリを任されている以上、とてつもない責任が課せられている訳で、この ”実験機” ーーーヘリ開発部・主席研究員が瑠架である。
つまり、借りがあると言うか、全員で総力戦での任務であり。この先も彼女抜きの瑠架が欠けた状況での任務の遂行はありえない。
自分と班中の命丸ごと、1点賭けに預けたに等しい深い関係性で
要するにーーーー何だかんだで信繁は彼女の事を心から信頼しているのだ。
そしておまけに、やっぱり優しい信繁は、どうにもならず困り切った相手を
「メンドクサイ」……
そういう自己中心的理由でサクッとキッパリ見捨てられる筈もなく ”損な性分”という気性の持ち主である。
「でーーー……俺はどんな事をすればいい?」
キチンとした真面目な性質の信繁としては。
〜例えどんなイヤイヤな仕事であっても、一旦引き受けた物を ”おざなりにやっつける ”のはどうにもこうにもモヤッと気分が悪いとする律儀さがある。
すると瑠架の表情がキラッと明るく変化する。
「前向きに引き受けてくれるの?! やったあ〜〜〜!! 」
再び輝く笑顔でウシシと微笑み、ウルウルのキラキラ瞳で見上げる。
大概の男性はこの攻撃に弱いものである。
「……っったくーーー瑠架ぁ」
参ったなぁーーー
『こんな顔されたんじゃあ本当に断れないな』 信繁はとうとう完全に観念。
ーーーーしょうが無い ……マァいいか。
これも煮詰まった気分の 案外に ”いい息抜き” になるかも知れない。
ーーーー『あの人の事』の心配事を忘れられる。
例え 〜ほんのひとときであっても。
「でーーーー何時にどうするんだよ?」
深い溜息をつきながらも、信繁は瑠架本人に頼みをきちんと確認を取る。
「矢っ張りーーーーーッッッ、アンタ頼りになるわ!!
有り難う信繁〜〜〜……!!」
瑠架はそんな信繁の繊細な心の悩みに一切関心を持たず、引き続き大きな彼の手をガシガシ握りしめて振りたくる。
険しい山岳の登攀で鍛え上げられた腕をブンブン上下に、それは嬉しげに邪気のないまるで子どものよう。
そんなんだからーーーー
食堂一角から不穏なモクモクと湧く黒い気配
キーーーーーーーーーーーーッッッ!!!……
信繁をひたすら愛する女性職員の殺気立つ、キツく睨み付ける視線が飛びまくりの、ぶっすぶす突き刺さりーの おろしやーな恐怖の空気などどこ吹く風。
ーーー元来そういう事を全然気にかけないタチ。
サイコパス的無神経さを遺憾なく発揮、眼光キラービーム光線をやっぱり完璧スルー、と言うよりも全く気がつかなかった鈍感力サイッコーの勇者である。
そのまんまウキウキ嬉しそうに、信繁に対しての調理手順の説明に突入ーーー
ウキウキルンルン入り出した。
「負けた、〜〜〜〜このわたくしがっ!」
ーーー憎たらしそうに、ガックリ〜
傍目にも勝敗が一目瞭然の、徒労・敗北感を滲ませる猛者な女性達。
「瑠架さんカッケーーーーーーーー!」
あの地獄のようなオッソロシイ不穏な空気感の中で凄い!凄すぎる!
自分とは肝の大きさが違うぜ!
「そうだこれから『姐さん』と呼ぼう!」
男性職員達は羨望の眼差しで瑠架を賞賛するのである。
さて、ケーキ作りにはーーー何故なのか
”どうしてか”……
「心配だからな」ーーーと、信繁の業務バディで親友である 〜子龍
班内技術専門担当員 〜雅
お片付け&荷物運び係として 〜ヨン
この3人もスタッフ参加として手伝う事に。
信繁班唯一の紅一点…アナスタシアは、生憎最初から調理参加メンバーの1人故にカウントしない。
「何でお前達まで来るんだ?」
「だってーーー〜〜〜?
実質労働力は瑠架さんと2人ポッキリなんでしょ?
ナスチャは『参加者』だしーーーーー
教育係として弟子がいるでしょ?
調理の助手は見た目よりも超肉体労働で〜おまけに細かい準備が多くて気を遣い……結構ハードですよ? 」
ーーーと かわゆく雅。
「それは知ってるが……?」
「必ず作戦〜じゃなかった、大きなイベントを確実に成功させるには、指揮官のフォローで、手足のように動かせる人材の確保は必須だろ?
ていうか〜必要不可欠だ。
んんんん?……違うか? 万能有能はんちょーさん?」
「ーーーー」
子龍の言う事はーーー今回全くのド正論、信繁はふーーっと、仕方が無さそうに深い溜息をつく。
「悪いなぁ……今日も仕事 昼間俺の都合でかわって貰ったのに。
夕方から ーーーーまた良いのか?」
「あのさー お前の都合って言ったって、元々あの魔女からの呼び出しじゃないか?
いーーって いーーーーって、そんな事 気にすんなよ」
「ーーーーこの埋め合わせは今晩するから」
「ゥオやったッッ!」
「?ナニソレ」
「お前も来るか?雅、ヨンもこの際だから様子見で参加しろ」
「ーーーー????俺も、ですか?」
「何事も公平だ」
情け無さそうに語る信繁に、子龍はポンポン明るく肩をタップするのである。




