秘め事と真意 ①
昼下がりの「城」城主の執務室内で、突然の極秘
ーーーー盗聴・ハッキング防止最新機能付きホログラム通信
鮮明な、正に今そこにいるかの様相の立体映像
再現され映写された、惑星トール軍事参謀長官・ロームルスは、噂されている人物像とは真逆とも言える意外な程に穏やかな口調にて城主と信繁に語りかける。
「城に、惑星ラオコーン、元大統領のご令嬢が収容されているだろう?」
城主は ああと頷くと、悪戯っぽくロームルスの瞳が輝く。
「でもーーー何所でそれを?」
「それは言えない、しかし其れはお互い様だろ?」
「ええーーーこれは愚問でしたね。
確かに、ご令嬢はこちらにいらっしゃいますよ?
”惑星ラオコーン”で、謎のクーデター勃発……
ーーーーそれにより、新たな軍事政権発足、ファーストレディがお身内であられる閣下にはお辛い事です。
革命の言い方は勝者の言い方です。
ですから私は言いません。
動乱の後ーーー将校達に捕縛された大統領夫妻は軍事法廷で裁かれ、その日の内に銃殺。
ーーーお2人とも 無残に処刑されました。
しかしーーー〜特に財政上も問題が無く、治安も良好状態でした。
国家として貧しいは貧しいのですが、それでも内政も良くまとまり、外交的内省的にも行き詰まりも見受けられず。
〜またご夫婦は共に国民にも温かく敬愛、良き善政を行う事から、大統領に対する支持率も非常に高かったのですーーーーが、あのような事変が」
「ーーーーー」
「人の世とは……何時も無常でーーー……皮肉で解せぬものです」
「ああそうだな」
「ーーー亡くなられた お2人の御遺体は、国内の新政権にとって”厄介な残党”
つまり……熱狂的シンパの存在を恐れられ、現為政者の命令がくだりました。
祖国であるラオコーンから宇宙空間に向けて、酷い事に大型ロケットに搭載したカプセルで放出されました。
惑星内〜 ”国内” には、亡骸の塵一つ、灰の一欠片も残さぬ為です。
中々に頭の切れる、後々の事にも抜け目なく立ち働く強かな男です
……ーーーーあそこの今の大統領陛下は」
城主はサラリーーー……
肩に掛かる腰まで届く長く美しい黒髪を白い、しなやかな指先で綺麗にスッと耳にかけた。
『何だ?』
それを見た信繁はぴくっと眉を寄せる。
彼女が…『そうする際』は、必ず何か心の中に ”わだかまり”
ーーー或いは ”怒り”
もしくはーーー「大変言いにくい事」が心情的にある場合に限るからである。
信繁は面倒事ばかり持ち込まれる仕事上、それから今まで彼女と死線を乗り越え深く接して来た経験から、そのような心理状態をとてもよく知っている。
『??一体全体、どう言う事なんだ?』
何か裏があるって事なのだろうか?
しかし信繁は黙って、一切何も言わず、口を挟むことなく状況を見守り、口の悪い子龍が ”魔女” 〜そんな風に形容する、類い希に美しい所長の様子を伺っていた。
「この悲劇……
軍事クーデター中ーーー
地球に、有名なネオアメリカ音楽学校にて留学中であられた、大好きな音楽の勉学に励む為に妹君様がおられますわね?ロームルス閣下。
政府要人と偶然お知り合いだったルームメートの機転、そして支援者の計らいで急遽『他惑星』ーーー
ぁあ~これは失礼致しました、惑星トールに亡命、でしたですね、ざっとした経緯では。
で……現在閣下の庇護の元に安全に保護されてご健勝にていらっしゃられます」
「ああそうだ、その通りだ。
お陰様で、漸く明るい笑顔を取り戻しつつある」
「んまぁそれは何と善き事!」
城主はニコニコ微笑みを浮かべてそう答えるのだが、彼女の目の奥がちっとも笑っていない。
がーーー信繁はそれについての指摘は勿論しなかった。
ロームルスは ”話の続き” のーーー
驚くべきその先の顛末、結果を、自ら朗々と話し始める。
「ーーーー”大統領夫妻”〜は、確かに巨大ロケットから必要場所で高速で射出〜
……専用小型宇宙船より、更に留めを刺すべく打ち出されたカプセルだが。
我が宇宙艦隊の誇る優れた探査機器による探索。
ーーー我々の手で、設定軌道終点に存在する永遠の暗黒空間の墓穴〜ブラックホールに吸い込まれ落ち込みバラバラに分解される寸前、無事回収された
DNA遺伝子検査、捜査で間違いなく本人達、決して身代わりでは無いと、確かにお2人であると確認が取れた。
ーーーーお2人は生前の清らかなお姿の状態にお戻りに成られた。
万全に現行の最高度の再生医療で御遺骸の損傷、傷ついたお体は整えられ、今はゆっくり冷凍保存、特別な廟の硝子の棺の中で永遠の安らかな眠りについておられる。
葬儀はしめやかに執り行われた。
御遺骸は現在、我がトールの墓地に。
今度こそ始末を企む忌むべき者から爆破されぬ様、幾台もの戦闘ドローンの警護の元、夫妻への弔問客に対するテロを防ぐべく1日中、厳重な軍の監視下に置かれ埋葬されている」
「物々しい警戒態勢ですわね、それの何所が安らかなんだか?ーーーですわね?
しかし、でも ”元大統領” と ”貴方”は……
ーーーーおそれながら大変に仲が悪い〜いいえ??
お美しい、お優しい義姉であるお姉様を間に挟んだ三角関係だった筈なのでは?
ええ、こう言っては何ですがーーーー『宿命のライバル』だと?
それはそれは随分、寛容なご処置ですわね」
「君の期待にそぐえず申し訳ないが、血の繋がらない父の連れ子だった姉は私にとって生憎、そう言う対象ではないのだよ。
”もう1人”のーーー母でもあり、尚且つどんな時も私の味方になって守ってくれた尊き女神、そのものだったんだよ。
ーーー彼女が私のおぞましい性的対象だなんて とんでもない話だ。
そんな優しい姉は、ああ逆にその優しさ故なのかーーーー……
私がどんなに反対しても、あのイカレた下品で、女にだらしないーーー!
幼い姪、実の娘に所構わず厳しい暴力をふるう憎々しい最低男から離れられなかった。
だが〜そこまで好きならば、実に腹立たしい限りだが引き離すことは出来ない、遺憾ながらね。
ああどうして女性はーーーー
ああも男から見て、顔をしかめる奴が、そんなにも魅力的なんだろうね?」
「 ”男性”も
……時より ”そう” ですのでーーー
ヤキモキするお怒りに成られるお気持ちと心情には、私も同情します。
実は私の姉妹 何人かーーーーも……
”性格の善い姉妹” 程、どういうわけか餌食になってしまいました。
〜〜何故あんな男が本当に良いのでしょうか!!
『あなたが不幸になるだけ!』
どんなに必死に、こちらが心底心配して言うのにちっともわかって貰えず、で結局、『別れろ!』『別れない!』
その度に私と激しく激突し、大喧嘩になりました。
ですのでお姉様ーーーも多分、彼女らと全く同じで、たいそう性格の善い方だったんでしょうね。
ーーーー本当に御愁傷様……痛み入ります」
「うむ、本当にそうだ、全く、私の姉もその通りだったよ……!」
ロームルスも深くコックリと相槌を打つ。




