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ロームルスからの勧誘


ロームルスはゆるゆると口調を変えてくる。


「信繁君でいいかね?

君のことは何もかも調べさせて貰ったよ。


フレイヤ妃殿下から伺ったのだが、彼女からの護衛官の依頼を 君は即断即答で断ったそうだね?


様々な経歴及びーーー城 勤務評定。

業務評価から大層優秀な人物だと思ったよ」



信繁はーーー

『どうして城職員の極秘個人情報をロームルス閣下はご存じなのですか?』


ーーーと言う言葉は まるで無意味、時間の無駄なので、口に出さなかった。


「どうだね?もっと大きな世界!


〜制約の、何かにつけて一々多いジャパンではなく、私の下で直接働く気はないかね?


思う存分君の実力が発揮できるだろう」


「大変勿体ない、ありがたきお言葉だと感じます。

ーーーですが……」


信繁は丁寧に言葉を選びながら返答を行う。



「私は『城』の、ジャパンのしがない一公務員です。

その立場を変える気はございません。


トールには〜数多の素晴らしき優秀な人材が揃っていると聞き及んでおります。


辺境の〜田舎育ちの私ごときが、閣下のいらっしゃる 素晴らしき御国で通用するとは思えません」


信繁は背筋を伸ばし、丁寧かつ流ちょうな正確な発音、連邦英語で淀みなく答える。



2メートル近い高身長、何時もながらビシリとプレスの効いた制服姿が凜々しく美しい。


清々しい容貌、知的な物腰。

少年がそのまま大人になったかのような、親しみ深いルックス。


笑うとおそらく周りを明るくなごませるであろう、人なつっこそうな茶色がかった澄んだ瞳。


何処からどう見ても〜優秀さがにじみ出ており、返答も何をいわんや?の相手を立てる見事な返しぶりであった。


きちんと言うべき事は堂々と言い、相手の気持ち〜しかも立場も丁重にたてる様は見事なものだ。


「君は凄いな」


「滅相もございません」



トールの軍事参謀長官は信繁の様子に、ほほうと〜嬉しげに目を細める。



かの国であっても、ここまで容姿が抜群、求心力のオーラと実力、信用できる誠実な人柄という、何拍子も備わった将校は事実少ない。



人材こそが真の宝ーーーー


最前線を長年勤めあげてきた軍人、経験豊富で優秀すぎるロームルスはちゃんと知っている。


「城主の配下」の、特に気に入りの人物でなかったら、例えジャパンという国家を破壊しても欲しただろう。


ロームルスにとってーーーーーーー信繁という存在。


イザとなれば、如何なる非情な手段をもってしても強奪したい存在、喉から手が出そうな程に手に入れたい稀に見る逸材だった。



惜しい、実に惜しいーーー……!


狼とあだ名されるロームルスは信繁の潔い態度に、頼もしげにクツクツクツと耳まで裂けそうな大きな口で面白げに笑うのだ。



「私からの『依頼』〜懇願をだね、トール軍事参謀長官に着任してから正面切って断ったのは君が初めてだよ。


永らくトールには、私に異議を申し立てる気概がある男は全く居ないからね。


ーーーー全くもってつまらない事よ。


信繁君、私は君の事を本気で気に入ったよ?」



「ーーー……さっきから黙って聞いていれば〜〜〜!」



城主がいきなりこの話し合いに強引に割って入った。

声色から察するに、かなりムッと強烈にムカついているらしい。


ムキーーーーーーッと……!

今にも湯気のでそうな完全に戦闘モードに切り替わった、美しい柳眉を逆立てる城主の姿がそこにあった。



「何勝手なことを閣下は仰ってるんですか?


うちの大切な〜生え抜きの部下にちょっかい出さないで下さい!!

 

優秀な人材ならば、トールにならば ゴロゴロ山のようにいるでしょう!?」


城主はプリプリしながらロームルスの提案、発言に噛みつくのだ。


緑なす、腰まで届く美しい黒髪をサラリと靡かせるとイライラと棘のある口調で言葉が主要な武器である戦場に打ちかかる。


「本当に何考えてるんですか?!」


「ふぅん〜ーーーーー」


城主は余裕綽々の様子のロームルスの言動、益々イラッとした様子だった。



「信繁君は君のお墨付きの『お気に入り』

ーーー本当に秘蔵の、極めて優秀な部下なんだねぇ?」



 

『うーん、確かに珍しいかーーー』


子どもが新発売のオモチャを気に入る程度は、どうやら自分を大切に考えているらしいと信繁は見当をつけるのだ。



『ヤレヤレ……』


信繁は頸をすくめた。


こうなると、会見終了後の ”とばっちり”、八つ当たりじみた依頼は避けられようもない。


ロームルスが面白がって、更にに神経を逆なでる言動を、今回わざわざ取っているのは信繁の目に明らかであるのだ。



『さてとーーー……』


とはいえ、会談の落としどころが見えないのには、ほとほと困ってしまう。


「何時も冷静な君でも、気持ちが大きく揺れることがあるんだな。

何だか『面白いもの』を見せて貰ったよ」



「ところで何ですか?

ーーーワザワザ、ルールを逸脱しても『城』に個人的に連絡してきた理由は何ですか?


不世出の軍人であられる大王陛下に対し、忠実なる偉大なロームルス閣下は?」



やっぱり城主は かなり機嫌が悪い。


いいや「悪い」を〜〜部分を既にとっくに通り越した最悪の状態に見える。

 

彼女はホログラムをグッと鋭い目で睨みつける様に質問をかっ飛ばした。



「君に今回 『お願い事』があったんだよ」



「クスッ、笑止千万、散々嫌がらせを言っておいて、よくもまぁこの私に言うことですわねぇ?」


「ああーーー君の類い希なる寛容さは 知ってるからな」




ビシッーーーーーーーーッッツ!!




執務室内は今にも氷柱がザクザク降りそうな極寒である。


『いつまでここに居ればいいんだ?!俺は』



ーーーー早く帰りたい

〜お願いだから早く帰らせてくれっっ!!


信繁は1刻も早く 錬成道場に帰り着きたいと、心の中で本気で願い始めた。




ーーーーー……


ーーーーーーーー……


ーーーーーーーーーー……




「ーーーそういう事ですか?」



「人道的にも、どうか、なんとか考えて欲しい事案だ。

私から切にお願いしたい。


さて信繁君ーーーもし気が変わったら、何時でもトールの私の元に来なさい。


君の上官は 優秀ではあるが色々と個性的かつ常識破り。

〜部下としては日々振り回わされ、非常に ”やりにくい” だろうからな」



「私は職場と上官に恵まれておりますので、現在 充分満足しております……

お誘い お気遣い、心から感謝致します」



「……君の部下は本当に筋金入りに真面目だな、よく過労死しないものだ」


「余計なお世話です!!」



城主のキィイッ〜〜〜〜〜


……ギリギリ睨む切り返しに、ロームルスは益々面白そうに大笑いした。



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