番外編3 フレイヤ姫に捧げる富士登攀計画 (41)
藤にとって富士登攀 富士宮ルート〜村山古道経由〜、予想外に素晴らしかったしワクワクの塊で楽しかった冒険だったのだが。
吉田口ルートからの下山道はブル道ゆえに、確かに安全ではあるのだが様々において富士宮ルートとは全てが真逆で物足りない。
〜〜〜もっともっと刺激が欲しい!!
「なんでこっちなんですか?信繁さん」
「富士宮ルートは上りも下りも同じ道ですから故に危険という事もありますが、やはり下山ルートは厳しいですね、登るのはまぁ、何とかなんですが。
砂礫で滑りやすく急斜面、安全にでしたら断然、こちらがオススメです」
「そうなんですか?!」
「ただ難点が一つありまして、こっちの下山道は距離が非常に長いんです。
特に一度降りた後、山肌を横に平行に移動する直線ルートが、『そんなの聞いてないよ〜』な怒りが湧きがちです。
〜でもって、時々ある落石にも注意ですので、上の方にも気を配ってください」
「でもあの驚異の村山古道を楽しんだ後では、何だか物足りないな」
「確かに!!」
こちらの下山ルートも確かに山頂からある程度まではウキウキで楽しかったのだが、残りはダラダラ坂で足首は疲れるもののラクチンで安全、とはいえスリルとサスペンスがどうにもこうにも乏しく思えるのだ。
「まぁ、安全第一です」
信繁は先頭で道案内をしつつ落石にも目を配りつつ無事分岐点の箇所まで誘導、あとは直線距離で横移動するのみまで全員を抜かりなく降ろす。
「高山病に誰も罹らなくて本当によかった」
あれは本当に辛い事を身をもって知る信繁はホッと胸を撫で下ろすのだ。
下山しきると、吉田口五合目、標高2300にある飛行艇発着所には既に道案内すると息巻くインストラクター&営業担当&パイロット殿が待ち構えており、小休憩を挟み土産物や参拝を済ますとすぐに予定目的地に向かい、キビキビと無駄がない事実極めて有能な人物だった。
アナスタシアがあれほど行きたいと恋願っていた富士山本宮浅間大社は赤い大鳥居と富士山の組み合わせが本気の絶景、??と、よく意味合いを知らずに同行した藤班のメンバー全員を大喜びさせるのだ。
静謐な空気と清らかな湧き水、全てが心を震わせ、皆で神妙にご祈祷を受ける。
縁結びのお守りはこれははっきり言って購入は当たり前だが、ここのスペシャルアイテムは何といっても美守!!
女性にとってはこれは外せない、心と体の健やかな美しさを願うお守りである。
美の象徴の女神様の総本山、故に恋愛成就に安産祈願に縁結びと美への祈願、とパワースポット状態、キランキランに目を輝かさない筈がない!!
「ところで、子龍、何でお前がそんなに幾つも美守、購入するんだ?」
「おいおい、なにバカな事を聞くんだよーーー」
二へラーっとデレデレ笑みを見せる子龍は
「えーっと、オシャレ大好きまず雅のだろ?
それからーーーー白龍の飼育員の美女達にお土産なのさ。
いつも桜香の事気にかけてくれてっし?
それから肝心の桜香の分っとーーー
当たり前にいるだろそんなの?」
「てっきり自分の分も買うのかと思ったよ?」
「あーーーー俺はもう持ってるから要らねーんだわ」
「〜〜〜〜〜!!!」
「ここの縁結びと安産祈願は威力がスッゲーらしいぞ?
信繁ありったけ買っとけ、当然フレイヤ王女殿下のもだぜ?
いいなわかったか? あれこれ考えずに買って渡せよな?
変な見栄を張らずゼッテー買え、買え買え買え、男気見せろやわ〜ーったな??
よっっ俺の相棒ー」
「ーーーーーーわかったよ」
信繁は背中を押される形で安産守りを一つフレイヤの為に慎ましく購入、子龍を「だーーーっ!!この頑固者めぇ!!」と大いに嘆かせたのだった。
ちなみに信繁も美守を普段世話になっている黒龍飼育員と秘書課の女性陣に、雅にも 大開運日守〜運が朝日の如くに昇る〜を自分用と一緒に購入、授与する。
アナスタシアも無事御朱印を授かり、全員で超有名な、湧き水に浸すと結果がわかるというロマンティックなおみくじを引き、これからの健やかな未来を祈ったのだった。
その後いよいよ信繁の注文品があるというオルゴールの工房である。
どれも素晴らしい芸術品で、オーダー品でない大量生産的一般の品ですらどれも素晴らしい音を奏でるのだ。
信繁は一人一つずつ登山のお礼の品として気に入った曲の可愛いサイズのものを購入、プレゼントする。
「嘘っっ、班長俺達もいいんすか〜〜〜〜!」
「あんまりデカいのはダメだが、ここのはどれも逸品揃い、どれでもいいぞ」
「うわうわうわうわ班長愛してる〜〜〜〜!!」
城主、隊長も如何にも嬉しげである。
藤班男女だけでなくて、案外ロマンティスト揃いの信繁班集団も泣かんばかりに喜ぶのである。
ーーーーしかし残念ながらこの辺りで皆、疲れと眠りのピークがすぐそこに訪れつつあった。
すぐに信繁の叔母が経営の旅館に全員を飛行艇で運び、とりあえず余力の有るうちに名物の岩風呂の温泉に浸からせ、カクカクの割り当ての部屋に運び込む。
既に有難いことに布団が敷かれ、全員が全員、倒れ込むように寝具にダイブをするとスースーと夢の中に旅立って行く。
「では後は、どうぞよろしくお願いいたします」
信繁は深々と旅館オーナーと女将に頭を下げるのだ。




