番外編3 フレイヤ姫に捧げる富士登攀計画 (35)
信繁らは今後の計画を「話し合い」
ーーー信繁は具体的な流れを改めて、子龍と隊長、城主と話し合う。
「やっぱり登頂に5時間くらいは掛けてあげた方がいいんじゃない?
そりゃぁ信繁班は鍛えられてるから、ここからだと4時間もかからないのはわかるけど」
「ええ、城主、絶対に慣れてない筈ですので当然そのつもりです。
ここから先は吉田ルートのようなブル道(ブルトーザーで歩きやすく平らにならされた登山道の事)で完璧〜なわけではないですし。
勾配も急激にあれよあれよとキツくなりますし、最終的には岩を両手で掴んで登るような感じですし。
女性が多いのでヘモグロビン、鉄分が貧血系で少ないかもしれませんし、苦しい思いは不必要にさせたくはないですね」
「まぁ、今だったらご来光の時間がAM5:00ちょっと過ぎ〜だろ?信繁」
「なぁ信繁、俺の昔の経験ではーーーー
一番人気の吉田口の登山客が朝日を見る為にいよいよ活動し始めるのが、俺の経験ではAM1:00位〜だったが、頂上付近で大渋滞、3時間、いやもっとかーーー
あの異様な混雑を抜けるのにかかったぞ?
しかも結局山頂で見るのに間に合わず、やむなく登山道で拝んだというしょうもない有様だ。
こっちのルートが今現在どうかはわからんが、あのおっそろしい山頂でのてんやわんやを考えると、先んじて対策を練った方が懸命だな、子龍はどう思う?」
「そうだなー、どうする?相棒」
「メイン映像ーーー剣が峰の映像は定点カメラで行こうと思うんだ、子龍。
隊長、今回の撮影機材のカメラは、不夜城謹製の極小貼り付けタイプで撮影専門の物です。
〜と言ってもホログラム用ですので大きいと言えば大きいですが。
映像は飛ばせますので、万が一盗難に遭っても映像は無事です。
高所に設置すればまぁ大丈夫かと。
無論回収はしますよ、高価な機材ですし、知らない人間が見たらゴミですし」
「そうかー、いいアイディアだなそれは。
お前、信繁は背が高いから取り付けに3m近くは行けるだろ?
ーーーかなりな高所でも行けるよな。
カメラのバッテリーの凍結は大丈夫なのか?
夜間氷点下だろ? 富士山頂は」
「ええ、なんとか。
時間的にも十分持ちます」
「なら結構」
「夜空も撮るんでしょ?
だったら余計に早めに到着しなければね」
「そうですね、頂上は素晴らしい星空ですよ、強風とか凄過ぎですけど」
「うーん、そう考えるとそこそこの睡眠時間の確保と、体力を保つ休息は必須だな」
「でも呼吸が浅くなるので熟睡はどうかと隊長、うつらうつらが良いのですが。
ああ、耳栓の用意も班員にさせてあります」
「5時間あるなしかーーー
古代の弾丸登山〜とまでは行かないにしてもかぁ信繁?」
「そういう事になるな、子龍」
「ふぅ、実に悩ましく難しいところだな、とはいえ観光とは別、半分は任務も兼ねている。
多少無理をしてもなんとかしなくてはな、フレイヤ王女殿下の為に」
「ええ、わかっております、隊長閣下殿。
ーーーそれで一つ提案なんですが。
自分の叔母の経営する出来立てホヤホヤの、まだ名前が大して売れていない温泉宿が富士宮にあるんです。
ここに来る前に打診したところ、快く宿泊を許可してくれまして。
ーーーで『モニター』になってくれたらいわゆる『ご招待』
なんとまぁ無料で泊めてもらえる事になりました。
〜これはまだウチの班員にも秘密、藤先輩にも内緒なんですが。
チェックインはPM3:00、叔母のご好意で仮に早く到着しても、荷物をフロントに預けて温泉だけ先に利用可能との事です。
私はフレイヤ様の為に撮影映像を持ち帰り、編集のために急ぎ戻らねばなりませんが。
皆さんだけでここでもう一晩使い、軽い入浴後にチェックインしたのちは、出来るだけたくさん水分を取り、とにかくすぐに仮眠に入り、思い思いにゆっくりちゃんと登攀の疲れを寝て癒してください。
どのみち明日いっぱいは有給扱いです、午前中はアドレナリンの影響でナチュラルハイ状態で気力がなんとか不思議に持つかもですが、どうでしょうねーーー
おそらく午後、早ければ2時過ぎにどっと揺り返しが肉体に来ますからね。
急激な眠気、場合によっては物凄い車酔いに似た吐き気、最悪立ってられませんので無理は厳禁です。
夕食はなるべく遅めにしてくださる様、既に交渉済みです。
料理が大変に美味しい宿ですよ?
俺がモニターとなった飛行艇の最終テストで、早朝に皆さんを迎えに宿に行きますので、そういった流れで全員で城に戻るというコースでいかがでしょうか?」
「俺はどうするよ?」
「個人的意見だが、残って彼らの面倒を見て欲しいんだ、お前がいれば絶対に千人力だ。
でも何かあればすぐに俺に連絡して欲しい、別れたらお前だけが頼りになる」
「任せとけーって、相棒、俺としては桜香の事だけが心配だが、運良く雅の事をあいつ気に入ってるんだ。
明日の食事の世話、下界に降りたら雅に直で通話で頼んどくわ」
「ーーー何から何まで済まないな、子龍」
「いーっていーって、王女様が誕生日祝い、喜んでくれるといいな。
それよかさー、こっちもなんだか凄いサプライズ済まねーわ。
叔母さんに何か益になる企画、そうだなー 鷹狩りの放鳥のデモンストレーションなんか、ボランティアでいいかもなぁ。
珍しいからきっと喜ばれるぞ?
食い意地の張りまくりのアイツらも、上品な藤班メンバーも、ご招待、きっと大喜びするぞ、あんがとな、信繁」
子龍は破顔一笑、朗らかに礼を言い、パァーッと眩しすぎる笑顔に戸惑うほどだった。




