番外編3 フレイヤ姫に捧げる富士登攀計画 (33)
富士山富士宮ルートの山小屋は昔から「山室」と言う。
チェックイン後、とりあえず食事だーーーーと言う事で全員揃って夕食を「いただきます」
信繁班の腹ペコメンバーがガツガツと、夢のホクホク富士宮やきそば+目玉焼き乗せ〜だけで無くカレーにおでん、その他諸々を食べまくった後、城主が「入山手続きは全員済ませたから安心してね!」と厳かに高らかに宣言する。
「それでね、信繁、どうしても行きたい所があるの」
「??どこですそれ?」
すると、にまーっと微笑み、「すぐそこよ!」そう答える。
「ああ」ピンと閃いた顔で、信繁も頷く。
「もともと時間があれば、天気が良ければ皆で行こうと思っていた所ですが、ですがとりあえず聞いてみないとーーーー」
「それはどこだい?」 藤がいそいそと目をキラキラさせて尋ねる。
信繁の案内したルートは確かに大変で足がパンパンになったとは言え、物凄く楽しい一生の思い出になる事間違いなしの素晴らしきコース取りであったのだ。
そんな彼が案内したかったルートだなんて、良いに決まってるではないか!
事実、彼だけがそう思うのでない証拠に、藤班の皆も一斉にパーっと期待に満ち満ちて信繁を見つめているのだ。
「2693m、宝永山の事ですね。
宝永第1火口、端で見るだけで、富士山の山頂に登攀が体調で叶わなくなったとしても、その巨大さ雄大さ、充実感で満たされて幸せな気分になれる筈です」
「それはどれくらい離れてるんだい?」
「全部をぐるりとまわり、宝永山の山頂へ行くとなるともう少し時間が要りますが、行って、見て帰って35分もあれば。
この山室を横に登山道を、ロープ内部に沿って行けば到達します。
消灯までにまだ暫くありますし、夕闇に包まれるスルガ湾の黄昏や街の夜景を見るだけでも素晴らしくて」
「行きたい!!!」
藤班全員の総意となった所で、城主が実に嬉しげにニッコニコで改めて宣言するのだ。
「後は、山頂の岩登りが行けども行けども待っているだけなんだし?
普通の富士山ぽい登山道を歩けるのもこれが最後でしょ?」
「ーーーーーまぁ、そうとも」
「???」
「そーいやオレッチ行った事ないし」
「なぁ、まぁそうだよなー」
「吉田口からはコース的に行けねーしなぁ」
信繁班がよくわからない会話を交わし、両班の結局全員が富士山への登坂な筈なのに謎の宝永山への見学を行うことになった。
「なー信繁、宝永山の説明、ザックリした方が良くない?」
「まぁ、多少は知識があった方がいいのかもなぁーーー」
食事を終えたばかりの席で、おもむろに信繁は口火を切る。
「富士宮ルートで時々大きな青白いっていうか、赤茶の地面とは少し違う色合いの岩石が転がっている事に気がつき出すと思うのですが、これは古代の噴火で捲れ上がって飛び散った岩なんです。
風向きで細かい岩石は流れてしまったのが、重めの物は吹き飛ばされずに落下、今に至るという訳で。
富士は今から約10万年前に小御岳噴火から古富士、新富士と噴火は続き、2900年前に古富士は形が保てなくなり崩壊。
延暦、貞観、宝永の年号での3つの巨大噴火を経て、現在の地質の単独峰になったと言われてます。
宝永大噴火は西暦1707年、宝永4年の12月16日に始まり、年末の大晦日から新年にかけて再び轟音で噴火し収束したと古代の歴史書と文献に記録されています。
噴火の順番は第4〜第3、第2、最後に今で言う宝永第1火口の順に起きたそうで。
人によっては少し降った第2火山口から第1火口を見た際の赤い岩〜
宝永山山頂は滑らかな三角形に見えるのですが、この何とも言えない優雅な重なる曲線ラインが美しいと皆言いますね。
時間がもし許せばーーー如何かと思います」
ーーーー何だか凄い事になって来た。
藤はゾクゾクする。
「山室は山頂にもあり、そこだと夜中に登ってご来光を見ると言う必要はなくて朝食が4時〜からだから、ちょっと聞くとまぁ良いと言えば良いのですが。
確実に山頂まで登り切れるとは限らないので、今回はやめました」
信繁はそんなことを言い「どんな事も安全第一です」
神妙な顔をし、うんうんと頷くのだ。
「んじゃ、そう言う事なら、チェックインも無事過ごした事だしさ、体を慣らすためにもジャンジャン歩きに行こうぜ〜」
子龍のにやーっという笑みの号令と共に、一斉に食事のゴミを各自片付けると、身軽な格好をし、撮影の予行演習とばかりにホログラム撮影機材も持ち出す。
素晴らしい景色ーーーーー
それは事実、信繁が語る以上の素晴らしい世界、この世の絶景が目の前に広がっていた。




