番外編3 フレイヤ姫に捧げる富士登攀計画 ⓾
ホログラム撮影機器など、高価で重量のある撮影機材や山頂で過ごす為の嵩張る防寒衣類は、まとめて飛行艇で5合目ヘリポートまでピックアップーーー荷揚げ。
信繁班・藤班メンバーらは最低限の荷だけ持つ事になった。
「ああいいぜ、丁度小型輸送ヘリ、俺らの班がその時間帯だったら使うんだわ。
お前のおかげでウチのポンコツ班長、カノジョと無事ヨリ戻したしさ〜!」
子龍が抜け目なく同僚、他班副班長である勇次に話をつけ、移動のアシを取り付けてきたからである。
よってまず軽装であることが叶い、水筒も”通常タイプ”で無く特殊型とした。
背中に背負ったバッグから長い樹脂製チューブがスルスルと伸び、キャップを開け閉めせずとも口元で軽々必要時に丁度よく吸い取れる特殊タイプで、信繁は自分の班員には全員既に用意しており、仕事にも活用している。
破損劣化した時のために、丁度予備として班の人数分の ”備品”
〜未使用品が手元にあった為、それを藤班に提供する事にする。
こういう便利グッズは存在すら知らない場合がある。
「先々役に立つだろうな、きっと」 上手い感じで数的にもピッタリである。
「何だこれ!」案の定〜藤はホクホク顔で大いに喜んだ。
「富士下層ならば、チューブ内で水が凍結する事も無いだろう。
グダグダで疲労してくるとディパックから飲料ボトルを出して飲むのも面倒で、結果、脱水になりかねないからな」
信繁はよくわかっていた 『水分をタップリ取れば高山病予防にもなるし』
備えあれば憂い無しーーー心の中で呟く。
藤が部下を交え信繁班と話し合い計画した行程表はこうだ。
ーーーと言っても”町中”限定なのだが。
先ずは「海抜0m地点」〜つまり海辺
学者先生方ご推奨の地点、整備された自然公園内浜辺で足を田子の浦湾海水にチャプンとつけ、適度な小石を拾い〜希望者は超極小瓶に海水を収集する。
起点となるシステムで、地域が管理の記念アイテム(衛星画像映像プログラム)をゲット。
これは信繁の希望を尊重し、かつ自分達のモチベーションを上げる為でもある。
起点から次の映像プログラムの撮影場所は、仮にどこにも寄らずと考え約12㎞少々……
信繁達の様な戦闘系職種の人員は正直、この程度の距離の認識なのは当然としても、藤率いる”コンピュータールームメンバー”にも〜
ーーー職場施設内に併設されたジムのマシンに、負荷様々としても10㎞少々ならば、例えランで無くとも約1時間も乗って流していれば充分に稼げる距離数だったから大丈夫と考える。
猛ダッシュでは無いが、気持ちの良いと感じるゆっくりめのジョギングで行こうと提案、起こりうる不測の遅れを考えてもダラダラせずその方が良い。
「まだ気温も熱いから、歩道照り返し等の体力消耗を考えたら早めに場を抜けた方が良いと思います、信繁君。
巻けるとこでは思いっきり巻こう
……どのみち山間部、私達は今回は走らない、トレランとかの無理はしないよ?
山に入ったらゆっくり行こう」
「俺達は構いません、ではそうしましょう藤先輩」
信繁は「任せて下さい」力強く彼に同意する。
富士山の稜線〜森林地地帯、いよいよ裾野にとなれば……後は信繁の巧みな道案内、彼のガイドで時間短縮、かなり直上に山を攻めるコースを取る事に決定。
「村山道や村山古道でなくって良いの?
もう1つの起点、富士塚の方は、旧東海道や推奨コースってだけじゃなくてソッチも兼ねてるだろ?」
「……ですが、行きの我々を降ろす場所〜広い安全なスペースが取れないのはちょっとどうかと?
俺も少し思いましたが ”2頭追う者は1頭も得ず”、確かに自分にとっても魅力的ですが……少し欲張りかなぁ……と?
ですので目的を絞ります。
それに古道は、今回5合目に抜ける少し前で、現地の方がお仕事で使われる林道を挟んで使用します。
行ってみるとーーー凄いですよ?
霧のガス帯有り倒木地帯ありの、ガチの古のルートですからね。
自分が平安や室町の修験者や、法螺貝をボウボウと吹く本物の山伏になった気分がします。
おそらく藤先輩は……あんな登山道歩いたことは無いでしょう。
俺が装備服装なども快適になるよう細かく指示を出しますから、その都度、面倒でも、靴も服も環境に適応した山仕様の本格仕様の物に替えて下さい。
この時の各自最低限の持ち物を、予め背負って持ち込みましょう。
その時まではシティ内は半袖の軽装〜か、日焼け止めの軽い素材のウエア、軽量の疲労しないラン用シューズの方が絶対に良いと思います。
舗装された車道が中まで結構ありますので楽ですよ?
今回は富士宮6合目まで日暮れまでに登るという強行軍です、そこで今夜は宿泊です」
「何だか楽しみだねぇ」 藤はウキウキした顔を見せた。
「では宜しくお願いします」ニコッと信繁は邪気の無い顔で微笑むのだった。
「冬期では無いし、道々指示や看板、もしくは木々に赤い布でマーキングされてますからあそこは ”一般の登山道” です」
「ふぅん?」
「えぇ安全です」
藤はーーー……知らなかったが、ソモソモ信繁は道なき道を自分で探し取り、地図を脳内で3D映像で思い浮かべて走破する事が当たり前のプロフェッショナル
そんな彼が提案する登山道は……本当に本当に凄かった。




