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番外編3 フレイヤ姫に捧げる富士登攀計画 ⑧


信繁はいう


「父の話では何でも、今年からルール改正、当時ティーンの俺の年齢でもギリ参加出来るようになった、そう俺に語った。


もっとも、ソイツは大会執行部、運営の気紛れだったんだろう。

あえなくーーーその1年限りだったからなぁ。

 

でーーーー……!

『ハイッ』と俺が見たのは〜親父からピラッと見せられた電脳参加要項にはデカデカと ”大会のタイトル”と 

ーーマスコットの山羊?羊?

 

ぶっとい角がぐるんと巻き巻きした、何だかかわいいとは真逆な獰猛そうな白い動物のイラストと、後はレースのコースや注意事項。

ーーーどういった試合なのか?


中身がズラズラズラ〜〜〜っと、写真無しで滅茶苦茶細かい連邦英語の長文で、とにかく上から下まで一面、ビッシリ何やら細々記されていた。


でーーーー俺はまだそれ程、当時、長文読解が得意じゃ無かった。


そりゃスラスラ読めないぜっっ!

そんな専門用語だらけの契約文章なんかーーーな


『話が違うじゃ無いか!』とは思ったがさ、でもまぁ取りあえず……!


マラソン大会タイトルに『100』がクレジットされていたから単純に

『あ〜100㎞マラソンだな?』そう解釈した。


コース終了は、そのなんだかわからない動物がペイントされたカラフルな大岩に完踏のキッス……


ソイツをする事が各各の抽選で選ばれしレジェンド達、幸運なレース参加者にとっての ”レース終了の合図”ーーーーー……らしい。


随分面倒でキツそうなトレイルランだが、そんなに親父が嬉しげに全身でヒャッハァと喜ぶ大会なら……

まーーー参加しても良いかな?と当時子どもの俺は思ったんだ。


流石に父との不毛な喧嘩に飽きてきた頃でさーー……

で〜『良い切っ掛けかも!』と俺も考えを渋々改めた。


イザとなりゃ棄権すれば良いからな、そんなふうにフーーーンって軽く考えてたんだよ」



「ーーーーーーーーーチョット待ち給え信繁君!

コロラド

山羊?


それってもしやーーー」


 

『?』雅は???と首を傾げる。


 

大慌てで焦る顔の藤と、対照的に奇妙な落ち行き払った信繁の顔、へーぜんと顔色も変えない。


ーーーーゾワゾワする


……見ていた雅はイヤ〜〜〜な不穏な気分しかしなかった。


「で、現地行ってーー……

コロラドのレース開催地へ行って、初めて文章だらけのページを見せられた訳が解った。


つまりサーーー全部、俺の父の策略だったんだ」


「?……どう言う事」

 

「ーーーーー」


雅の質問に信繁は腕組みし薄っすら笑う。


雅の眼に、子龍がポリポリ鼻の頭を掻くのが視線の端に入る。


「ーーーふーん信繁……

こりゃまたお前、見事にマンマとやられたなぁ〜親父さんに。

想像以上に随分したたかな人物じゃ無いか?」


「まーな、昔っからそう言う食えないオッサンだったよ。


それが切っ掛けかなぁ、このままでは俺は確実に殺されると必死で語学の読みを始めたのは。

 

なにせ命がかかってる、どんな連邦英語の長文でもスラスラ出来る様になるよう頑張り始めたのは」


「ハハハハハはははハハハハハ」

 

「まぁな、”経験は賢くする”ーーーさ。


お陰で今じゃ連邦英語の他も、少し位だったら”何とかなる”ように成長したんだぜ?


そう毎回〜良いように担がれて騙されたんじゃ身が持たないぜーーー」


『?』

〜相変わらず訳が解らないという顔の雅に、藤が本当に気の毒にと言ったていで溜息をつきつき話しかけた。


「つまりさ、彼の今は亡き御尊父様は信繁君を意図的にミスリードしたのさ。

 

多分きっとさ、彼は現地にデカデカ張られたフラッグや、電脳ポスターで真実を知ったんだろう。


彼の親父様は意識的に巧に情報を排除したのだろうね、特に映像類を。


それ見たらいくら何でもティーンの信繁君も、1目で疑惑を持ったろうから」



「??」どう言う事?


「信繁君は レジェンド なのさ、自分でカミングアウトしないなんて奥ゆかしいじゃないかい?

ーーーー僕は感動するよ?」



「???……」


ナニソレ? 益々ワケがわかんないし?!



「あのさーーーーー雅 ”100” って書いてあっても、㎞とは限らないだろ?

場所は、そうだ『ネオアメリカ』


ネタバレすると ”メーターとかの尺” ……表記


ジャパニーズの信繁は、ティーン時代の真面目なこいつは学校教育ーーーー

いつもの先入観で、ついつい引っかかったんだよ」


子龍はあーーぁ……と溜息を吐く。

「思いっきり意図的だよなぁ」


「あ!」


「そうだ雅、あの時俺は100㎞マラソンだな?って思ったんだ

で……現地の、そこら中に走者歓迎の為に吊された〜

華やかで色鮮やかなフラッグの連邦英語の大会名スペル綴りを見た瞬間わかった


”メーター”じゃ無くってーーー”マイル”だってな」


「!!!!!!!」

 


「ぁあーーー100㎞マラソン……そうではなくって……!

実際はマイル計算で161㎞。


登坂10,000メーターの……平均標高約3,300m越え、富士山8合目ぐらいのコロラドの山中で走りきるというとんでもない耐久レースだったよ。


大嵐や落雷ーーー落石事故、参加者は時々ソイツで大怪我をする。


それでもモチベーションを上げて、1本の細い登山道を駆け抜けるんだ」



「……それってどんなところだったんですか?」


「英文学古典〜トールキンの『指輪物語』あるだろ?読んだこと無いか?」


「えぇ……全てのファンタジー物語の原種みたいな壮大な物語ですよね?

たった1つの世界を滅ぼすかもしれない金の指輪を、火山火口のマグマの中に仲間と冒険の末……

捨てに行く物語、ですよねーーー」


「あぁ、まるであの物語の主人公か何かみたいだったよ。

俺は主人公のフロドみたいな気分だった」


雅は頭の中で描いてみる


……一寸想像が出来ない


「こんな感じなんだよ」

くすっと軽く笑った藤は電脳の次回レース募集要項を取り出して見せてくれた





「うわぁ……」




 

「ひぇ」

「ナンジャコリャ」

「……」


「……よく生きて還ってこれましたよねぇーーー班長!」

 

「スッゲ強運」

 

「本当に冒険ファンタジーの実写版!」



コロラド〜某100マイル・ウルトラマラソン

映像を覗き込んだ信繁班の皆も口々に呟やく。


想像を絶する、雄大すぎる大自然のホログラム映像の連続に皆口々に感想を述べる。


それを聞きながら信繁はポツリと、”ある事”に対し不思議そうに個人的感想〜ボソボソと言葉を零す


「……俺が見た時はこの”羊” 色が違う気がするなぁ

現在大会マスコットのこいつの顔を今見ると、本体はブラウン気味〜

 

ぁ〜”茶系”だったんだな〜ってビックリした ーーー勘違いか


ーーーあの当時、全体的に、もっとひどくギョロ目で、おまけに幽霊みたく白かった様な気がするんだよ……

 

なんか眼がぎらつく恐い顔だったよ?

 

そっかぁ……角が白っぽいグレーだったからそう勘違いしたのか。

今見ると『えッッ!こんなにひょうきんな笑った様な顔だったのか?!ッて驚きだ」


信繁班メンバーは全員彼に振り返る。


「そうなんですか?」


「ぁあ『絵柄』って視る人の精神的心理状態で如何様にも変わるのかもな?

正解なんて無いのかもだ。


特に父は俺に最初マークの下部の方を見せなかった。

だから厳めしい部分が更に尚更強調され記憶に残ったのかもな?


ぁあーーーートリミングの切り取った映像だった」


「なんで?」

「”マイル”って綴り、ロゴで首元にバッチリ入ってるからさ?雅」

 

「……」

 

……見るからにダイナマイトでドッカーン…と吹っ飛ばした巨石


険しき山中からレースの為に掘り起こし、つるりと1部分のみ ”絵が描けるように” と、削り出した特徴的な円筒筒型穴だらけのピース


苦労しつつガガガガガ!とブルドーザーでしか、ここまで運べないに決まっている大岩。

丁寧にディスクグラインダーでチリチリ岩石表面を出来るだけ平らに研磨、粗い表面に磨きをかけ、誇らしげに大きく美しく、デンッと塗料でペイントされた動物。


「結構デザイン的にお洒落だな」 信繁はしげしげと見つめながらそう言った。



〜ゴール地点フィニッシュラインを越え、沿道のーーー伝統的でその土地全体の誇りである大きな大会の為に、殆ど町中の人間が自主的に参加したとおぼしき有志によるサポート隊〜

 

アットホームで楽しげな、心温まるボランティアの大応援団が見守る中 

ーーーー”お約束”


照れながらも、実に幸福そうに嬉しげに「羊」にチュッとキスをするランナーのホログラム動画映像に対して信繁はそう語る。


「へ〜〜〜……!」

 

「こんなだったっけ?眼の感じとかーーー

まぁ多分、”記憶補正”されてたんだな、アドレナリン出まくりだったし?」


「そういうもんか?」

 

「あぁ、まぁ多少は年度によって塗り直しとかで表情が違うのかも知れないけどな」


「そりゃそうだろーーーー……?

ペイント〜 ぺたぺた筆や刷毛で絵柄なんかもハッキリ塗り直したりする筈だしな?

印刷じゃねーし、新しい大会の為にイベントの成功を願い、出走走者の勇敢さと栄誉をたたえ

ーーーそうあれだ!……描き手の代替わりで少しは顔が変わるンかも?」


「勇敢、栄誉ーーーーかぁ、ランの途中は〜だ


ーーー変態親父の事を……俺はだ『よくも騙しやがったな〜!』


『ク〜ッソー今度こそは絶対殺してやる!』


『高いもん買わせるから覚えとけ!』


……とか散々呪いながら物騒な事を思ってたりしたんだがーーーさ、後半ゴール近くなると不思議な事が起きたんだよ?


『えぇ〜…?! もう終わっちゃうのか〜?』とか

 

『モット走ってたい』ーーーなんてな……おかしいだろ絶対?」


 

「ーーーーー俺はだな、走りきったお前も充分 ”おかしい” と思うぜ?

何処に出しても恥ずかしくない、俺の自慢の超変態野郎だぜ」


「ソリャそうだなぁ……」


ァッハッハーーー〜と信繁は明るく、発言者の子龍になんとも言えない清々しい笑みを投げかける。


本心からリラックスし気を許した明るい微笑み。


『うわぁ〜……!』

雅はボーッと思わず見とれた


この2人はやはりお互いに「ベストパートナー」

唯一の特別、相棒なんだーーーと羨ましいと思うのだ



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