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番外編3 フレイヤ姫に捧げる富士登攀計画 ⑦


「ねぇ藤さん?

マラソンランナーの人が平地での徒歩〜まぁ競歩みたいな行程に信繁さんの場合成ると思いますがーー……

 

でもそんなライトなトレーニングで役に立つんですか?物足りなくない?」


雅の真っ当で素朴な疑問、当然と言えば当然の発言にコンピュータールームメンバーは顔を見合わせる。


「ウ〜ンーーーそうねぇ、でも最近トレーニングの時間が忙しすぎて取れてないしねぇ〜」


「ほらぁ、D-O1騒ぎ、1時期メチャ〜『我こそは!』っつー猛者達からサイバー攻撃集中砲火で格段に大賑わいでさ……

 

で〜お次は ”フレイヤ王女様” 〜でさ?

コッチ熱狂的マニアに嗅ぎ付けられて、防衛が大変だったんすよ……!

 

極秘なのにこうした情報は何でか漏れる、此処にたどり着いただけでも見上げた物だけっどさーーー!

 

まぁそんなこんなでね、雅君、我々も体がなまってる訳なんすよー」


「?それとこれとどう繋がるの?」


「ぅん……歩く事も立派なランニング……”ラン”のトレーニングになるんだ。

 

ほら〜我々は兎に角『長距離をこなす』ことが重要なんだわ。

時間を確保出来なくても、早歩きをイメージして目標的に『60分コース』を毎日……

だってウォーキングならランとは違い、何時間やっても故障のリスクが低いからね? だからお薦めなワケ」

 

「そうそう!」


「!!〜〜〜〜 一寸良いですか?!

何時間ってーーーどれ位あのぅ……ちょっと聞いていい?


ーーーーーー”ラン”の方々は想定してるんですか? 今後の参考までに」



雅はさも恐ろしそうに言葉を差し込む。


 

「いきなりね、練習量が落ちた状態で20〜30も㎞を走るのは危険すぎだから〜

 

だって ”次” あるし、も〜ひたすら歩く。

歩いて歩いて歩き尽くして健脚を作る!


ちょっとやそっとで壊れない丈夫な足腰、実際その作戦しか無いからね〜

そうねぇーーー……理想では4時間」


「!!……『4時間』!!」


 

「はぁ〜……」という顔で雅は目を剥き、ヌイグルミのように可愛らしい顔が更にラブリー♡

 

キュッッッ!思わずカワイー♡ 両腕で抱き締めすりすり頬擦りしたくなるのは彼の人徳〜長所的個性である。


そのカワユク驚く様子に、一気に部屋が和やかに明るくなる。

 

質問の後を藤が引き継いだ


「そうだね、トレーニングをかねてだと贅沢に『10時間』はタップリ欲しいところさ。

 

う〜んと、どうしても勤め人には難しい、たっぷりな時間だけどね? 雅君」

 

「マラソンって32.195㎞ーーーーでしたっけ?確か……!」

 

雅は恐ろしげに声を出すと、「どっちも僕絶対無理!」

 

と…!これにすかさず子龍がゲラゲラと人が悪く突っ込むのだ。


「雅それちげーよ…42.195ーーーーって痛ってー!

何すんだっっ!この暴力班長〜〜〜!!」


「ぶつぞ!!言わんで良しっ!」

 

「ぶってからゆーなっっ!信繁っ このイカレはんちょー」


「ハハハハハ君達は2人本当に仲が良いんだね…ぇ」


 

「「どこがっっ!」」


藤のもっともな指摘に、見事に綺麗、同時にハモる信繁と子龍の全否定の怒声。


周囲は益々明るい楽しげな笑いに包まれる。


 

「あぁ、雅君が言うの、それはフルマラソンの走破距離だねぇ

そんな別に怖がらなくっても良いよ?

ーーー全部じゃ無い。


後”ハーフマラソン”ってだけでなくって、5〜10㎞のごく軽いタイプもあるから、皆が皆そんなに無理にガツガツ大会で走るっていうんじゃない。

 

ーーーいいかい?

美しい景色を見ながら自分のペースで自由に同好の志と共に皆でランするのは楽しいことだよ。

 

例えば……新しい橋・高速道路の橋脚でが開通する時って、大抵お祝いムードの記念マラソンがそのルート上でこけら落としで開催されるんだ。


工事スタッフ以外、誰も見たこと無い見事な景色が一望で、最初にバーって見られる祝賀メンバーだって言う栄誉は凄い事なんだよ。

 

滅多に無い素晴らしいチャンス……機会さ、一生の内そうそうない幸運だ」


「……ふぅん」


「雅君だってピアノの練習長時間、何時間もかかりっきりで指と腕の様子見ながらする日もあるだろ?


持久力が音楽家は案外に大事、その為の本番に向けての少しづつのトレーニング…… 安定した長時間の徒歩もおんなじさ」


「……そうとも言うけど!」雅はプンッと口をとがらかす


「でもーーわからないんですが、何で ”登山” が有効なの?」


するとーーーー……藤は更に恐ろしい事を発言するのである。


「僕の場合は目標っていうか完走、挑戦は『ウルトラマラソン』だからね。


今回の『付き添い』、実はワクワクなのさ?

なにせ”優秀なガイド付き” 真面目な信繁君に便乗するのは悪いけどーーーー

荷物くらいへっちゃら、撮影ドローンくらい何でも無いよ!


多分、ここに居る私の部下の皆も同じ気持ちだ」


「100㎞マラソン……っていうのはさーーー

何て言うかレジェンドーーーー……

タフネス達の、己の限界を極めたい人の究極の勝負レースなんだよ。

 

だから山岳を走る、まぁ多くは『峠越え』が必ずあるんだよ?

それって何でだと思う?」


「んーーー山しか、100㎞も安全にランナーが走破出来る所は無いじゃん?

ジャパン国土狭いし、事故に遭いそう!!」



「熊いるけど、まぁそれもあるがーーー

この競技がメチャ盛んなのは国が馬鹿でかく国土面積の広い”ネオアメリカ”……

ウルトラマラソンは ”だからこその競技” って言うか。


ぶっちゃけ〜 山岳レースに片足突っ込んでるって言った方がわかりやすい」


「……?」


山岳レース……??


何か又、謎で変な単語が出て来たぞ?〜と雅は思ったが、取りあえず矢継ぎ早の質問は後にしようと黙るのだ。


今は沈黙、雅は大人しく、憧れの信繁の話を真摯に聞く事にしようと決める。


「山岳レースーーー”トレイルランニング” とも言うが、多分話を聞く限り藤先輩達は察するに絶対に『こっちより』だ。

 

全然そうでない〜教本通りの100㎞マラソンもあるからな。


でーーーー……

『藤先輩が富士山に登って、他の方々が何故か未だ』これってチャンとした訳があるですよね?


〜『美味しい物は最後まで取っとく主義』ですか?皆もしかして」


「ーーー……続けて信繁君」



「はいーーー俺の勝手な『仮説』ですが、藤先輩は、吉田口ルートからきっと上がった筈ーーーそうですよね?


でも登山した訳じゃ無い、それは何故か?

頂上まで走破したから完走……じゃないや『完踏』って言うんでしたね?あの世界では。


藤先輩は登山道を駆け上がって、山頂にたどり着いた。

 

レースの名前はーーーーまぁ伏せますが、ジャパン史上最後の戦争が終結してから3年後、そこから始まった由緒ある『山岳マラソン大会』


この有名な、毎年7月に開催の伝統のレースには2種目あって、先輩が出場したのは確実に”山岳コース”だろうと俺は思います。


でも〜このレースに出場には、参加のエントリーには、とある条件があって……

 

富士5合目まで2時間30分以内、過去公式試合で通過またはゴールの記録を持つ事が絶対の必須条件。

 

スタート地点から吉田口登山道を通り21㎞、制限時間3時間30分で参加年齢は確か18歳以上。


こちらに詰めておられる方々は、当時年齢的に参加資格をクリア出来なかったのか〜

もしくはタイムが間に合わず無常にも『切り捨て』られたのか?


ーーー容赦なく、で……結果的に未だ藤先輩しか登頂していない。

そうではないんでしょうか?」


「なにそれーーーーーーーーーー!!」


雅は思わず大声を出す。

富士山の頂上までマラソンで走って行くのぅ〜〜〜!


ーーーーおかしいでしょ?!絶対変でしょ?!

 

そんなの信じられない!


ていうか人外魔境すぎて有り得ない!

 

大体そんな事出来るの〜〜〜〜〜〜!!


雅の赤くなったり青くなったりする表情を見て、信繁は申し訳なさげな顔をして……こんな事をボソボソ付け足すのだ。


「俺もさぁ、よく山野の藪漕ぎ付〜山岳マラソンーーーー

道なき道を、自分で斧で切り開いて突き進むタイプの奴。

 

ーーーーまぁどう考えても普通じゃ無いよなぁ。


俺はそういうのを父のお供で、2人コンビで子どもの頃から何度もつき合ってきたんだよ。

 

でーーーーーこんな事があった。


山行が行き着くところ迄行った俺の ”変態親父”は

中学入学直ぐの頃の話だが。


今思うと超つまらない事で大喧嘩して、およそ1ヶ月全く口を聞かなかった。


そういう大人げない俺を『ネオアメリカに行こう』


つまりーーーー仲直りの印にさ、ランに来てくれたのならお前が欲しいもの何でも買ってやる!

 

美味いアッチのメシ……デカイステーキ肉をを大いに喰らおう!


お前に向こうの支社長が非常に会いたがってるから。


ーーーー……そう言って連れ出したんだ


喧嘩中とは言え、ウッキウキの父の話を聞いた、ブス膨れ子どもじみた俺は途端、肉、ジュワジュワな分厚いステーキ肉に意識が飛んだんだ。

 

それにくだんの支社長とは回線の直の通信で顔見知りだったからワクワクした。

 

太い腕は丸太〜熊みたいな厳ついデカイ男性で、如何にも超ーーーアメリカンな男で格好良かったんだ。


ジーンズもタキシードも似合うという、正に憧れの大人だったから異存は全く無い。


でーーーー旅行行程の道すがら、コロラドのある有名なトレイルラン。

 

珍しい、父にとっても一生に1度、何とか出たかった憧れの山岳マラソンの出場権が


『何と何と幸運にも自分、信繁、支社長の3人揃って当選したんだよ!!


ーーーー目をキラキラウルウルさせて、俺にほざいた訳さ……」



そこまで喋った信繁はフーーーッと諦観と疲れた顔で大きく息をつく。




何故だかーーーー深い、深ーい溜息に雅は???と更に不安に思うのだ。



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