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番外編3 フレイヤ姫に捧げる富士登攀計画 ⑤

「”この役”ーーーガイドは当然信繁君だとして『その御一行様』結構な大所帯

 

賭けても良いが『そうにしか見えない』だろ?

 

そして不安な警備面では我々がフォロー、ドローン付で参加するからまぁ安心だろうね?

 

信繁君は富士ルートのガイドは出来るんだろ?」


 

「えぇ、俺、富士は冬期も許可取りまくって登ってますし、アイスクライミングならいざ知らずーーー


今回アイススクリューで中間支点の設置もせずに済みますし、この時期ならルート取りも容易いです。

 

強いて言えば人数が重要ですが、お話を聞く限りゆっくりの体慣らしの休息を多めに取る登攀で辛い意識障がい 

ーーー高山病だけ注意すれば何とかなるでしょう。

あとそういう事ならば、人数が多いのですぐに山小屋を押さえないといけませんよ?予約が絶対です」


「そりゃ心強い、ふむ、そうか杞憂は宿泊施設かーーーー

足回りだけ市街地用とアルペン用…

登山靴の用意、その辺だけだな


山小屋はーー

おっとーーーコッチも何とかなりそうだ」


藤は目にも止まらぬ早業で何かをコンピューターで検索し始める


??

ナニソレ


謎の言葉が幾つか出た

雅はキュッと形の良い眉をしかめる




第一 …アイスクライミングって何?


……”アイススクリュー”? 冷えた清涼飲料系飲み物なのかな?

 

「では僕は連絡役として万が一の時のことを考え、ここに残って調整しますね、信繁さん」


「俺は参加しなくて良いのか?」


「何言ってんだい、君がいなけりゃ信繁君困るだろ?

 

……この作戦、上層部の『許可』だって怪しくなる、君は必要なんだよ絶対的に


違うかいーーー子龍君?」


「……」



「済まんっ!」


「〜〜〜〜〜〜〜」

 信繁はムッツリ無言の子龍に頭を下げた


結局 藤率いるコンピュータールーム人員は連絡役1人除いて全員参加


信繁班も〜

「そんな変種のトライアスロンみたいな登頂なんて僕無理! 絶対ムリ!」


……とプイッと再度キッパリ断言し同行を拒否した雅以外、メンバーオール参加の運びになった


「俺ら信繁さんのお陰で有給全部消化してるもんな」

 

「……いいんですか?」

 

「仕事なのにまるで遊びに行くみたいで」

 

「済みません」


ーーーそう、信繁は率先して班員には休みが取れる様に配慮して、自ら自分は欠員の穴埋め要員に徹していたのだ

 

お陰で自分は休みが取れなかったが


「信繁班はキツイ仕事なのに、こういう事はしっかりしてるところが私的に好感が持てますね…」


藤は感心しきりに顎を撫でた「空也君なんて悲惨なものですよ?」


「空也?」

彼は信繁よりも少し年下の若手ヘリパイロットの事で空也は信繁に次ぐ優秀な技量を持つ青年だ


元は警察の航空隊所属だったのだが〜とある気の毒な事情により”城”に配属されて来た背景を持っている


「ふ〜ん」子龍が腕組みする

 

「奴なら部下にもキツイだろな…性格クッソ劣悪だし」



「アイツ〜空也がどうしたんだ?」

 

「えぇ…ーーー彼の扱いは酷くてね、特に班長から。

あんなに優秀で働き者の性格なのに彼、鬼みたいな班長から〜少しも配慮がなされていないんです

 

過労でいつかパイロットとして致命的なミスをしなけりゃいいんですがねぇ…」


藤はヒョイッと肩をすくめた


空也の所属する班の……班長と信繁は上手く行っていない


何かと理由を付けては信繁に対し悪意と敵愾心剥き出しで絡んでくる


「そうですか…」


『気の毒に』信繁は深く溜息をついた


信繁班のメンバーは皆一応は襲撃者に山岳に逃げ込まれた場合を仮定して、そうした場合の攻略法ーーー


要するに高所に対するせめぎ合いの戦術を様々に推定、信繁が組み立てた予測パターンにそって何度も繰り返し繰り返し、きめ細やかに訓練を行っている。


そう、イザとなれば現場が高いビルなど高層階にも充分アレンジ可能。


彼等はだから身体能力的には心配ない。

だがーーー今回のコンピュータールームメンバーはどうだろうか?


確かに体力は申し分ないだろう、だが平地とは違う。

富士の一応の山頂「お鉢」はどこも3,700はゆうにある。


……そこからまた体力限界値で、更に”小高い丘”を登り、漸くジャパンで最も高き山頂に到達した事になる。


これが最も高いとされる剣が峰で、『アレは無いよなぁ……』、ずっと封印してきた気分が突如メラメラ甦ってくる。


『〜〜〜!』あッ……っのクソ親父ッッ!』


信繁はクシャッと前髪をかき上げる。


今はお星様になってしまった父は、奇妙に悪戯好き〜! 

どこか愉快犯で〜「ほら吹き男爵系」のいい年して子どもみたいな側面があったのを思い出すのだ。


そうだ初めて……父に連れられて富士に登頂〜実際に剣が峰を目撃した時ガーンと手ひどく打ちのめされた、あの時の父のニンマリ嬉しげな顔!


酷い!聞いてないっっ! 腹黒大人にマンマと一杯食わされたっっ!


「騙されたっっ!」ーーー本気のそんな気がしたものだ。


『なのに……』あの時……

 

「信繁腹減らないか? 売店でカップラーメンお湯込みで売ってるぞ?

メチャ美味いが……父さんは食いたいがお前その様子じゃ全然無理そうだな?」


「食べるッッッ!」


ふくれっ面でブンむくれの幼い息子はつい食欲には勝てず、哀れカップラーメン一杯でアッサリ攻略されたのである。


「美味しいね美味しいね!」 

敏腕遣り手の父親に、いっちょ上がり、コロッと買収された子ども時代の自分。


『クソッ〜〜〜〜イヤな事を思い出した』 いい加減かわいそうだろオイ……!


ーーだが確かに、あの時の一杯のカップラーメン!

未だ旨さに勝る食い物は、今現在でもそう簡単には思い当たらないのも事実。


何故だか……解らないが。


 

「五臓六腑に染み渡る……だろ?」

「ウンッ!父さん凄い!」

「だろ?」

 

奇跡でミラクルな幸せの味だった。


『全員で食ったらいい思い出になるかもな』

幾らだって奢ってやるしと、信繁は心の中で呟く



『後 他に心配なのは……!』 他でもないーーーヨンの存在だ。


……当たり前だがコロニー都市D-01内部には高い山脈など無い。

ヒトが暮らしやすく穏やかで平坦な構造に決まってる。


『……大丈夫か?』 おそらく今後は彼にとって尋常な体験じゃ無いだろう。


収監者である彼が、時折〜信繁班 ”お預かり” になったのはまだつい最近。


よってーーー

信繁がジャパン連峰の山岳訓練へ連れて行った事はまだ無いから、今回ぶっつけ本番の富士登攀となる。



〜まぁ、山開き中の富士のルートは標識のある登山道一般路だから、バリエーションルートとは違うだろう。


地図とコンパスだけが頼りの、自分で縦走する登攀ルートを考え、予め危険な滑落場所を想定、ありとあらゆる危機に対し柔軟に対応しながら切り開く方法じゃ無いもんな〜


信繁は取りあえず頭の中、今後起こりうるだろうと思われる、様々な危機をイメージしてみた。


『冬山じゃ無いからまぁいいか?』


彼が藤に語っていた、冬期のパーティーを組んだメンバーは全員父の仲間。

山歴も長く、アルパインスタイルでテクニカルルートを山岳を縦走する大ベテラン達ばかりだった


『”ヒヨッコ” は、自分だけだったよなぁ……』


猛烈な、下から上から横から左右からヒューヒューあおり立てる猛烈な強風。


未だかつて経験したことも無い、富士が単独峰故の吹きすさぶ氷点下の温度で死ぬかと思った山業だった。


ーーーが、イカれたクレイジーな大人達は皆「この程度どってことないわ」そんな顔をしていた。


『今なら ”意味がわかる” けどな……』


頼りになるアマチュア登山家の両親が居ない状況で、大人になり……ーー

様々な山岳に個人でチャレンジした信繁は回想するのだ。


ネオアメリカ・アラスカ山脈ーーーー……

北米最高峰 デナリ(旧マッキンリー)


大きな経験は彼を賢くした。




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