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番外編3 フレイヤ姫に捧げる富士登攀計画 ③


和歌の舞台は、当時は今の田子の浦の海岸の場所とは少々位置が違い、もう少し西南の海岸と研究者の調査で言われている。



それを踏まえ、雅はこんなふうに思うのだ。

『子龍さんが怒って止める理由、僕知ってるんだよね〜』


雅は昔、好奇心に駆られ ”休む” とは言ったけど後は誰にも何にもーーー行き先告げずに、子龍がフラッとどこかに行ってしまった時。


『何処へ行くんだろう?』

コッソリ彼を尾行した事があった。


その時の顛末ーーーーーキャッキャとお姉様方の盗撮は想定内だったが、よもや

やんちゃなオニイサン達との攻防戦


プラス ”同業者”

国家警察による職務質問


これがマサカのマサカ……!


「あんなにある」とは思っても見なかったのだ。


ソリャ子龍さん、私服は上から下まで漆黒の黒1色!


しかもゴリゴリの〜〜〜〜〜!!


ごっつい、見るからにナニソレ?な、どこの ”ピーーーッ” 屋さん的な、いささかダークすぎる姿だった。


季節は風薫る爽やかなシーズン〜


そんなキラキラした景色にまるでバッと天から舞い降りた巨大鴉(カラス)、じゃなきゃ地獄からの使者、本物の魔王か悪魔みたいなカッコで……何考えてるのさ〜〜?!とは思ったよ!


雅はふぅと溜息をつき、再びこめかみを押さえ目撃情報を思い出す。

 

お巡りさん誰1人〜自分達と同じ ”同業者” と、ぜんっぜんーーーーー!

あの様子じゃこれっぽっちも〜思わなかったよね。


そりゃそうだよ、真面目なあの人達の方が正しいもん。


雅は子龍が自分の彫金製の認識票を憮然と、無言でポケットから、それでも律儀な彼らの仕事ぶりに対して敬意を払ったんだろう。


揉めずに優雅に彼等に取り出して提示した時の事。


……目なんかまんまるで、腰を抜かさんばかりの、事実を知った時の唖然とした蒼白の顔!


子龍の180半ばの威圧感丸出しの高身長、ザッと見下ろし圧迫、ジロッと睥睨するかにしか見えない様子。


しかも饒舌では無かった(当然か?)滅茶苦茶恐い。



〜うん……あの時ーーー大切な……愛用シルバーリング右手人差し指にキラーンと嵌めてたしさ……っ……


……ぶっとい、銀無垢製品ジャラジャラだったけどさ〜


でもって桜香嬢も ”同伴” してたしさ


プロの彼等ーーー”いつも警備中の人を視るプロ” ですら


”何処の非合法組織の構成員?” 武器かなんかヤバイ系を輸送してるって全然疑いもしなかったよね?


だから”あの時”の、瞳孔開いて怯えた顔での子龍さんへの職務質問、プルプル震えての扱い方は凄かったから笑えたよ。

 


言葉は丁寧だけど声が裏がえちゃってもー、プルンプルン〜 ”命がけ” って感じだったもん!


「紛らわしい事しないで下さい!」


巡査達にメッチャ怒られてたよね〜子龍さん、それも ”毎回毎回”!!


雅は思わずついつい当時の様子を思い出しブブブッ〜〜!と反射的に笑いがこみ上げる。


1度なんてーーー彼等


何と! 

メンチ切って子龍にいちゃもんを付けに来た ”オニイサンの方を” 

……血相変えて救出に来た位だ。


〜あの人達〜明らかに間違えていたよね?


今頃あの大騒ぎの騒動の顛末を思い返してみても、凄ーーーく面白い。



だから身長2m近い信繁さんがそりゃ〜〜〜……

目を守る濃い色味のサングラスして、厳つい本格仕様の山歩きのカッコでスタスターーー


平和な町中をたった1人で高速で、そんな競歩みたく歩いてたら!



ーーーどうなる? 何が起こる?



まだ気温が暑い日々だから、山岳用ぶ厚いダウン系は超圧縮してリュックに収納してるにしても


大荷物の見慣れぬ怪しい男登場ーーー不審者感 丸出し。


いつも真面目な信繁さんの事だから、きっと歩きながらも行程を考えて真剣だろうから……

 

ビッシビシ、オーラ出まくり、殺気すらユラ〜リ醸し出す姿に違いない。



ーーーそんなの職質一直線だ。



子龍さんがデモさ、信繁さんに反対する理由なんか言える訳無いしっ!


あの時はどこからどう見ても、どうやらヒミツっぽい ”お出かけ” だったし?


特に信繁さんには、知られたくないですよね?


そうーーーもしもここで自分が余計なことを言ったら最後!


”別の意味合い” の” ーーー血の雨が降るかも知れない。


子龍の方からも!〜である。



さーーーぁどうする自分?

 

どうなの?? 度胸試し。


でも、僕しか言えないよ! 真実を言えるのは。



様々な事を勘案した雅が思い切って 「信繁さん、ぁのぅ……ーーー」


流血言い合いは想定済みで言おうと身構える。


先ずは信繁にーーーファイティーーーーーンッッ カンカンカンカンカン!


心の中 ゴングを鳴らす


情けない、少し体が震える、ションボリ、自分は小ウサギ並みのメンタルだ。


雅がーーーー諫めるべく口を開けようとしたその瞬間


なんとなんと、思わぬ所から援軍が到来、白馬の騎士登場、颯爽と現れたのだ。




「一言いいですか?信繁さん、宜しいでしょうか?」


「?ーーー何でしょう」


「部外者が突然、嘴挟んで済みませんが、一寸どうなのかなぁ〜と思います」

 

「ーーー……」



圧倒的なパワーでテキパキ……理路整然とサラリ話しきったのは信繁班のメンバーでなくて、今居る部屋の人間中では、最年長


〜現在すっかり ”たまり場” 化しているコンピュータールームを取り仕切る責任者、快く!気前よく、ここを自由に使わせてくれている、恩人の主任男性。


しかも……学歴的にも信繁と近く、彼の出身大学OBである。



その人物、このコンピュータールームの主任は、極めて丁寧な言葉遣いで語りかけ始め、ある意味 馬鹿丁寧に言い出し始めた。



主任は本名?……コードネーム、当然偽名かも知れないが〜

一応は「藤吉郎」という、何だかどこかで聞いた様なひどく立派な名前で通っていた。


だがしかし、親しい関係の人間は彼の名前は、時代がかり長々しいという点と


「ダサっっ」

「ウザイ」

「めんどくさッ!」


コンピュータールーム在籍・2進法大大大好きシビアな部下達は、職業適性的に誰も彼も合理的、性分的に無駄を元々罪悪視、嫌う性格故。


無常にもバーンと上司の名前も思いっきり1文字に圧縮、シンプルに藤(フジ)と呼んでいる。


2音の発声も語呂が良くってイイ! 敬称を付けたらズバリ ”フジサン” だ

〜末広がりでとっても縁起も良いじゃないか?


ちっとも合理的で無い、”運気アップ的非科学的おまじない” を愛するところはどうなんだ?とツッコミが入りそうだが


「運気運勢は、確率論ですっっ!」


ーーーソウイウコトでなのか彼ら的に矛盾は無いらしい。



藤は論理的上品な言葉を駆使し、信繁を袈裟懸にぶった斬る。



「エッとですね、別に ”止めろ”とかーーーそう言う話じゃございません。

 

私は信繁さんでしたら軽々達成すると思います、折角の旅の妨害、そんな差し出がましい事は毛頭思いませんからね」


「じゃ、なんでしょうか?」 怪訝そうな声の信繁。


「危機管理です。

私達は『生きたブラックボックス』……”有機的保管庫”なんです。

 

脳の中にねーーー何でも入ってる。


1度見聞きした事は、生涯忘れない様な特殊訓練をしています。


ここの中には、様々な重要な機密データーを記録媒体にワザと落とさずに保管しているのです。

 

ここまで電脳が進化した時代、サイバー攻撃にて絶対に秘密にしてるだなんて不可能、そんな博打……危なくて仕方が無いですからね」



発言者はトントンと人差し指指先で頭をタップ、男性にしては綺麗に整えられた爪が光る。

 

「我々はデータが『強奪されない様』に、1歩でもこの部屋を出ると、ここ以外は戦闘ドローン付で、常日頃盤石の注意を払い生活しています。

 

それだけの高額なサラリーも当然ーーーー頂戴していますから。


で、思うんです、信繁さんのバックボーンを」


「……」


「彼方は家業の継承を放棄しています……ですね?


ですがーーー彼方にその気がなくても ”そう思わない”


『いつかは戻ってくる、その日が必ずや来るだろう』


切なる願いを持つ、優しいおばさま達とはまた少し違った考えの元、ベクトルの向きが異なる、悪しき排除を考える卑劣漢が居るかもしれません。


自分が活躍出来なくなる、既得権益の消失。


そして、彼方自身の身の潜在価値ーーー


先程のお身内のおばさま方に、子どもの頃からとても愛されているそうですね?

金子など大枚などーーー幾ら使ったって、全く惜しくは無い程に。


ですんで、以上の事から、もしも突如、人海戦術でやられたら?


飛行艇や特殊車両を乗り付けられ、大がかりな作戦で襲われ一気呵成に引きずり込まれたら?


そう、1人の所を狙われて……誘拐されたら? そう思うんですよ。


貴方の生存の為なら、家運が傾き尽きそうな程の莫大な身代金でも躊躇わず支払うんでしょうね、あの方々は。


幾ら信繁さんが武芸者で優秀でお強くとも、たとえばネットを発射する……砲で

投網の様な武器で一瞬にして全身絡め取られれば??


ーーー最早どうにもならず、身動きも叶わずいっかんの終わりです」



「それは否定はしないーーー注意するよ」


「いーえ、それだけでは足りません、万が一という人間の死角、出し抜き〜盲点を突いた攻撃もお考えになるべきかと?


どうでしょう? 現在対策、解決策はお考えですか?」


「ーーーーーー」



「先輩の質問には黙らずにチャンと答えなさい」


まるで当たり前のような叱責、しかし感情を含まないキリッとした声が飛ぶ。



役付き部下持ちの信繁を立てて、語調も滑らかで雰囲気も穏やか。

しかし追求には1歩も引かない有無を言わせぬ圧がある。


「いいえ考えてありません」


あの頑固な信繁でも拒否出来ない程、どうも先輩というものは強いらしいと雅は震える。


『え〜〜?先輩だからってそこまで言わせるの?』


恐っ! 体育会系の絶対的な上下関係!!


ところが実はーーー主任の話はそこからが本番だったのだ。




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