〜カリスマ音楽集団五兄弟編〜 第一章 兄弟 ①
ある日、珍しくジャパン政府から、某若者達〜
爽やかすぎる、極めて美しい男性5人組が特殊収容施設に護送されて来た。
青年達はジャパンが管理運営のスペースコロニー「RURIーA」出身者であり、メンバー全て兄弟で結成されている。
彼等はコロニーはおろかジャパン国内、銀河連邦諸惑星でも有数のカリスマ的人気がある音楽集団「瑠璃」である。
「5人組」〜
極めて仲のよい兄弟という結束の強さは若年層の憧れと親しみを掻き立て、またメインボーカルを務める海里の人並外れた特殊能力〜
「瑠璃」リーダーでもある長男の彼は、過去〜現在まで発表した楽曲を、驚くほど細部までメロディーも歌詞も決して間違う事がない。
つまりいわゆる「写真記憶」の体現者で、学生ならば誰しもうっとりと憧れる、凄まじい集中力を土台にした記憶能力の持ち主である事。
〜もしも彼らが犯した事が公になったら、その場合、銀河の若者達に与える影響は計り知れない〜
熱烈に信奉するファン……
彼等の年代ではアーティストという存在はまさしく「神」以上、唯一絶対の崇高な存在なのである。
また彼等に対しての復讐的犯罪、非合法組織による暴力を伴う残忍な報復行為も充分予測考えられ、それらも絶対に道義的に回避せねばならないという事情もある。
ジャパン現行法では2名以上の殺人は極刑〜「死刑」は未だ廃止されていない地球国家である。
「彼らが全員死刑に処されたらどうなるか?」
様々な巨大な矛盾に困り果てたジャパン政府内閣府は、結局良い案が出せずに詰み、自分達では取り扱うことが出来ない、どうしようも無いと白旗を揚げた。
ーーーとどのつまり匙を投げたのだ。
「処置無し」
ーーー超法規的処置発動案件という事で、やむなく今回、城主へ直々に首相より相談を持ちかける運びとなる。
アクセス出来るのは、その国のトップのみ〜という規約になっている以上、仕方がないとため息をつきつき連絡を寄越してきた。
ただし一点のみ、ご褒美とばかりに心弾むこともある。
首相も大臣も官僚も、変わり者の城主の大ファンであるからだ。
相変わらずジャパンJK美少女にしか見えない城主は、フーンと小首を傾げる。
「いいわ」
「……本当に?」
「ええ」
厄介ごとを突如押し付けられたにもかかわらず、豪気な城主はあっさりホットラインで首相に収監を許可。
ーーーだが、ただし条件も当然つけ、中々の交渉上手の手腕も見せる。
「但しタダではありません。
所定の契約料及び経費は頂戴致しますけれど、今回はそれプラス何割かは割増になります。
何故かはご自身の胸に手を当ててよくお考えを。
こちらの立場もご理解くださいな」
「それはもうなんなりと!!ちっともかまいません。
公式発表はこちらにお任せを。
しかしーー……
その後の面倒事や後始末はこちらは一切関知しません」
「ぇえ、わかっています。
いつもの通りこちらで自由に仕切りますから。
ところで『動機』の自供はありましたか?」
「未だ一切ございません」
城主は暫く目を閉じ考え込むにだがーーーーパチリと瞼を開く。
「ふぅん成る程ねぇ……?
そんなに彼等が固く黙秘している以上、調査も含めて暫くこちらで『お預かり』致しましょう。
……状況が変わることも大いにあり得ますし。
実際は彼ら所属のコーポレーションが支払う莫大な税収を、あなた方はこの先一気に失うのが嫌なのでしょ?
ーーー実は無実でしたと冤罪が判明、悪様に取り扱って根に持たれ、彼らに嫌われたら最後、国としても大いにマイナスですしね」
「まぁ、そういうことです、認めたくはありませんが。
ーーー金の無いのは首の無いのと一緒です。
私はこの国の国民を飢えさせるわけには参りません」
「相変わらず正直なお方だこと」
「滞在費は多めにお支払いいたしますので、出来るだけ丁重に、政府に決して恨みを抱かない扱いをどうぞよろしくお願い致します」
「了解いたしました」
城主は政府関係者に一言も言わなかったが、実は彼らについて重大な独自情報が上がっていたのだ。
マスメディアでよく知られた青年らの「裏の秘密」
「ある残忍な事件」を引き起こした主犯・関係者を探しだし、長期間に及ぶ「暗殺」を自分達兄弟の使命としていたのだ
ーーー未だ確定ではないが……!
城は、張り巡らせた自前の情報網で、「その可能性有り」ーーー!
所長である城主愛用〜
城が誇るマザーシステムと連結された、自慢の人工知能端末。
確率的に99.999%
〜データー入力で、ほぼ間違いないと冷徹に告げている。
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取調室は、殺風景な机と椅子しかない無機質なグレーの部屋だ。
城主は軽装備の防衛陣をグルリと従え入室する。
主犯格である男性ーーーーー……
”グループリーダー”
彼女直々に、兄弟の長男、海里の取り調べを開始した
「随分若い方ですね」
穏やかな甘い柔らかな声で城主に告げる。
それはそうだろうーーーー
城主は一見では、「可愛らしい女子高校生」にしか見えないからだ。
しかしその実、実際は途方も無く長い世紀を生き抜いてきている、銀河有数の長寿の魔女だ。
「恐れ入ります」 城主は可憐な笑みをいつもの様に返す。
『……っったく毎回判で押したように、皆に同じ事を聞かれるのね〜!』
内心そんな事を思ったが、海里の言葉を取り合わず、形式通りにお礼の言葉を返した。
城主の返事に、すっかり言い慣れたテンプレートの匂いを感じとったのか、次は相手からは柔らかな微笑みだけが投げかけられる。
美しい青年は無駄口は叩かない。
流石ねぇ堂にいったものだと、揺るぎない態度を見ていて何だか感動してしまうのだ。
『伊達に観客動員数歴代第一位!
満席のドームコンサートをずっとこなしまくってる訳じゃ無いって事ね!
ーーーーだったら遠慮は要らない、手加減無しで丁度良い。
『ーーーじゃぁさてと……戦闘開始のゴングでいいのかしら?』
城主は真っ直ぐに目の前の男の瞳を見つめる
だが……これだけは、どうしても、精神的に揉める前に言っておきたい。
ただの「人として」
彼等の音楽に感動した聴衆の一人として、素直に正直に伝えたいことがあった。
「貴方のお顔とご活躍は、『電脳ジャーナル』ーーー
私は芸能通信でよくお見かけしておりました。
愛や夢、理想を歌い上げた素晴らしい楽曲ばかりでしたのに
ーーーー誠に遺憾、残念です」
するとふぃっと、青年の澄んだ目の中に浮かぶ何かが動く。
「”電脳ジャーナル” ーーーですか。
ぁあ……懐かしいですね。
思えば〜
……あの初めてのインタビューの日の早朝〜というか?
ーーーー深い眠れない夜。
苦しく辛い永い夜が、全ての始まりでした。
でも決して後悔はしておりません」
「どうしてですか?
『動機』
〜あなた方の犯罪の核心の理由については、ジャパン警察の方でも完全黙秘されていますね??
何故なのか? それについてもお教え願えませんでしょうか?
あなた方は多分ここで、今後一生を暮らすのです。
城は、ある意味死刑よりも過酷な環境です」
「ーーーー……ええ存じております」
「……」
「此処がどんな特殊施設なのか、良く理解しております。
『城』……
私達が連行されたこちらの施設は、この世で最悪、決して脱獄不可能とされし監獄ですよね?
〜全てわかっています、今後の自分達の運命も」
「ふぅん、それはおかしいですね?
何故 ”シロウト” の貴方方が、当該施設……!
世間に決して明らかにされない筈である、秘められた存在を知っているの?
ーーーと言う愚かで野暮な馬鹿馬鹿しい質問は、この際抜きにしましょう。
何事も ”蛇の道は蛇”。
欲する情報は欲する相手の場所に、命知らずの海を越える、群れを成す渡り鳥の如く大量に集まるものですので」
「ーーー」
「質問を変えましょう。
どうしてあえて其方を、実りある華麗な人生の終局、最終地点に選ばれたのですか?
出来うる限り、思いの丈を御聞かせて下さい。
ーーもうこれ以上、人生が悲惨になりようがないので、宜しいかと?」
「わかりました」
男ーーー……
この世の少女達の憧れを一身に受けてきたリーダー海里は、今度もにっこりと爽や過ぎる笑顔で城主に微笑みを投げかける。
既にどこか悟りを感じさせる、清らかで崇高さすら漂わせる邪気の無い澄んだ目の不思議な微笑。
『何だコイツ……!』
何かが普通じゃない、醸し出す雰囲気が尋常じゃない。
今回城主の護衛として軽装備を身につけ、取調室で彼女の後方でじっと控える特殊部隊精鋭「信繁班」班長〜
恐るべき潜在能力を秘める班員を一手に束ねる優秀なリーダー、信繁の視線がすうっと険しく色を変える。
信繁の全身から青白い殺気が立ち上る。
『海里、この男は確信犯だ』
ーーー間違いない、危険人物。
確信する信繁は、奥歯を噛み締め改めて気合を入れた。




