番外編2 子龍の学生時代の思い出 (20)
「そういうところがさぁ、あるんだって?」
それも遠き祖国、ジャパンに。
特殊収容施設、城の存在を偶然噂話で知ったんだーーーとだけ、有能な外交官である哲にハキハキ、奇妙にキッパリした口調で質問したのだ。
「?」
どうしたんだ? 今まで只の一度も私に言わなかったじゃ無いか ?
どこか奇妙な違和感も、べっとり〜心の中になかった訳では無いが、哲はそれについて無視、気にしないことにした。
どうせ変な電脳のディープウェブにでも見たんだろう、弟は好奇心旺盛のお年頃だしなぁ。
「あ〜あそこね……」
子龍は兄から意味深な態度で返された。
「なんでまた?〜興味があるんだい?」
「本当にこの世に有る場所??」
兄は無邪気に明るく聞く弟にクスッと笑う。
「確かに噂では〜 おいたをしでかした子どもを脅かす格好のネタ的『恐怖の館』ではあるなぁ……
あるよ? そこの総責任者とも とある事で面識があるし?」
哲がその様に返すと、子龍はハッと驚いた顔をしていた。
「じゃあさーーーそこに就職出来ない??」
いきなり話が飛んだ。
哲は内心の驚愕を押し殺し、ふーーーーむ〜……と天井を睨む。
「確かに〜……もう大学卒業年度だしなぁ……こっちのトールの軍人になるもの考え物だし。
まぁあれだよ……この世の何処でもない『あそこ』に勤める事になれば。
父さんも子龍にーーー今後、無理難題を突きつける事もないだろうしなぁ〜」
「うん」
「案外〜事情的にお前〜あの極秘収容施設に向いてるかも知れない。
入れば自動的に、一切の干渉を撥ね除けられる。
父さんの絶大な力も及ばない、だから桜香とも生涯無事連れ添うことが出来る。
ーーーー変な言い方だが、あんな『美人』、人間には居ないよなぁ?」
哲は気持ち良さそうにクスクス笑うのだ。
以前巨大グリズリー、恐ろしい身の毛もよだつ野獣に襲われたのを助けて貰って以来、桜香に対する長兄の気持ち、尊敬と敬愛ぶりは実際子龍以上なのである。
「本当?!」
「城には極秘だが……”某生物兵器” がいるんだよ。
彼らに比べたらずっと『小さい』し、世話だって 全然比較にならないだろう。
よし!! お兄ちゃんがっ〜〜! 1人と1羽分まとめて交渉してきてやる。
では楽しみに待ってなさい」
ニコッと元気よく明るく笑った哲だったが、それでも少々〜子龍には話し合いは難航した様子に見えた。
上品で綺麗な容姿に似合わず、様々な重要な条約締結に、陰に陽に辣腕をふるってきた哲にはこれは珍しい事態で〜
「そんなに、大変なことを頼んでしまったんだね? ごめん兄さん」
「まぁ、予想付いていたから大丈夫、気にしなくていいよ?
可愛い子龍のために、お兄ちゃんうーんと頑張るからね!」
いつも優しい兄〜哲 ”心から信頼し愛する” 唯一の兄弟。
子龍は兄の骨折りに、心からの感謝の言葉を述べるのだ。
「ごめん」
「ん? こんな時くらい役に立つ、正々堂々アニキ面させてくれよ?
〜こちらだって、オマエにはいつも沢山世話になってるし??
通訳ありがとう
愛してるよ、お前をお兄ちゃんは!」
優しい長兄は、いつもの癖で、自分よりとっくに背の高くなった末の若い弟の背中を愛情を込めて優しくぽんとたたいたのだった。
「〜……」
子龍は照れくさそうにポッと頬を染めた
久しぶりの長兄と一緒の、ジャパンへの里帰り時にケージに入った桜香。
普段大人しい彼女も、いつも以上に何処か神妙な顔つきに見える。
”2人”と”1羽”そろって、巨大な鎮守の森に覆われる某神社にて就職祈願をした
木々に包まれる神社社殿、聖域特有の静謐なキリッと澄んだ清涼な空気。
とてもここが大都会の一等地にあるだなんて信じられない場所。
〜残念ながら桜香は人でないため、一応の区切りとして聖域には入れない。
ということで、ありがたき祈祷された聖水をいただき、彼女が訪れても大丈夫な場所にて子龍が厳かに振りかけることにする。
子龍と哲が参拝中は、惑星トールから同行中の優秀な護衛官が桜香の面倒、カラスに襲われたりあるいは誘拐されないかの安全面を見ることになっている。
「神様
何とぞ我々の願いをお聞き届け下さい……」
哲は古の手順を踏みお辞儀をし柏手を打ち厳かに唱える。
カミサマを信じていなかった子龍も、兄に倣い見よう見まねで同じ仕草をする。
その後ーーー「お待ちいたしておりました」
神官に最も奥の院、本当の別格の聖域に案内され、御祈祷を受ける流れである。
「ここはね、子龍、『戦いに勝つ』、剣の神様がいらっしゃるんだ」
並んで手を合わせる賢い物知りの長兄は、子龍に朗々と語る。
「……」
その言葉に心引かれたのか、子龍は更に真剣な様子で祈りを捧げるのだった。
そんなこんなの後ーーーー哲が生まれ育った実家「本宅」〜
記憶には全く残っていないが、子龍がほんのまだ赤ちゃん時代に哲にミルクを飲ませてずっと育てて貰ったお屋敷。
漸く豪邸に到着ーーーーーー!
「いらっしゃい〜〜〜〜〜〜!」
今や遅しと帰国(帰宅)を待ち構えていた涙ぐむ喜色満面の母に哲はいきなり抱きつかれ歓待された。
もっとも子龍はそうでも無かったがーーー
記憶の無い頃 ”赤子の時”〜「確かに子龍も居た」…という広大なお屋敷の庭。
「コケーーーーーーッッツ!!」
バッサァーッッ
ドカ〜〜ンッッ!!
それはとびきり珍しい出来事。
庭の茂みに永年住む、ムキムキバキバキの「叩き上げ」〜
夜間は羽ばたき樹上に棲む野良ニワトリに戦いを挑まれ、生まれてこの方 荒い風にも当てられず、大切に完全にお嬢様お姫様育ちのオオタカ嬢、桜香姫。
「キャ〜ナニナニ〜〜!!」
すっかり怯えきりーー…
檻を華麗にドカッとキックし跳び蹴りされたせいで、可哀相に、ブルブル隅に移動し縮こまり怯えている。
グリズリーに戦いを挑んだ勇敢な彼女とて万能では無いのだ。
「……チャボ? スゲー」 子龍は思わず唸る。
「ははは〜違うらしいよ?
だってさ、ほら ”彼”〜 体うんと大きいだろ?
大昔にこの屋敷で養鶏を行っていた事があってね、地域特産の地鶏も多少は扱っていたらしい。
その子孫、ここは『彼等のシマ』なんだ、むしろ闖入者は僕らって訳!
〜〜〜あ〜悪かったね、君、騒がせて悪かった……!!」
哲はフンッと首をそらせてふんぞり返る、足下で両脚を踏ん張り、威嚇し眼をぎょろっと三白眼にする怒れる色彩豊かな雄ニワトリ〜
金色の馬の鬣のような羽毛、ピーコックカラーのゴージャスな尾羽。
軍鶏?な雄々しく勇ましい長い脚を持つ「美男子君」に、ニッコリ微笑み丁寧な声がけの挨拶をした
「コッッ……」
「通い詰める熱心なこの屋敷の見学者も、そう易々とは出会えないっていうキミに。
これはお詫びの印だよ、先程特別に許可をもらい、その上でキミのために某神社で祈祷も施してあるんだ。
これからも神聖なこの聖域を、どうか外敵から守ってくれたまえ」
哲はポケットの中から掌に乗りそうな、樹脂製の小箱から剥いた無農薬のリンゴの皮一筋と、短冊切りをした実を取り出す。
「君これ好物だろ?」
雄ニワトリはたっぷり皮を幾度も咥えたり離したりして充分遊んだ後、それらを嬉しげに突いて食べた。
子龍はそこらじゅうの木の上より視線を感じた。
どう見てもおそらくボスの彼が満足しなければ、他の木陰に潜む配下は手出しが来ない仕組みなんだと子龍は感じた。
「餌付けって大丈夫なの?」
「よくはないよ、彼らにとっても長い目で見たら自活力失わせ迷惑だろうし。
保安責任者である母様の許可も取ってあるからね、今回は本当に特別だよ」
そんなこんなを繰り広げて、とうとう桜香は待ちに待った外気に出してもらう。
敷地には大昔 将軍家お殿様の接待の鷹狩りに使ったと言われる由緒ある立派な裏山〜里山も存在し、哲の頼みにて現在完全に保全整備が完了、猛禽類にとって極楽浄土な素晴らしい居心地良い造りになっていた。
常時〜桜香を視界に入った瞬間より目の敵にし追いかけ回す鴉集団も居ず、しかも丸々とした美味しそうな野鳥は沢山ーーー!!
生まれついての天才ハンター桜香の為 彼等は特別な場所を指定されて近隣にも迷惑をかけずノンビリ安全に住んでいる。
「しばらく遊んでこい〜〜〜」
最新型小型発信器をいつも通り取りつけられ空高く放たれて、桜香姫はようやくご機嫌になったようだった
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さて
子龍の望む就職活動は相当難航した様子ーーー!
しかし欲すれば いつかは叶えられる事もある。
「喜べ!!
取りあえず面接してくれることになった!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
哲の報告に、子龍は拳をぐっと握りしめた
天にも昇る気分だ。
「いいか?? 1つだけ成功させるヒントがある」
「?…… 何?」
「何があっても驚くな」
ちょっと訳がわからなかった
…
ーーー兄の計らいで
一般的事務処理機能を持つ、惑星トールの某領事館の秘密部屋〜
つまり特殊最新式ホログラム通信機器で
ピッタリ指定時刻……!
城〜を統べるという最高責任者「城主」と面会か叶った。
子龍は「城主」の、女子高校生にしか思えない容姿に内心衝撃を受ける。
『これだ!!』
言っていたのはこの事に間違いないと直感したが、それをおくびにも出さず、スマートに面接を終えた。
「こちらから注文があります
航空機関係〜特に回転翼機の惑星間でも通用する国際免許を取得しておく事!
貴方の 『同室者になる人物』の、定期的連絡を私にすること」
「それはーーー回転翼機とは ヘリのことですね?」
「ええそうよ」
「2番目は……『スパイしろ』ーーそういうことですか?」
「ちょっと意味合いが違うわ? 色々と……難しい特殊事情が絡む相手でね。
そういう方面ではなくて、むしろ貴方からのメンタルのサポートを期待したいところだわ?
それが何故なのか、会えば全てが理解できるでしょう」
「わかりました」
「では当施設も貴方と彼女、桜香嬢もまとめて引き受けるからそのつもりで」
子龍の長い「就職活動」はこうして幕を閉じた。
条件と〜提示した「同室者」は、後に子龍自身が「親友」と認めたーーー
”ただ1人の男”
「信繁」のことである。
<終了>




