番外編2 子龍の学生時代の思い出 (17)
バサァッッ……!
加速度と気流を味方につけ、風力と下降気流に乗り、必殺技を仕掛けた。
勇敢な桜香は、力の限り強靭な両足で熊の頭骨にガッシとしがみつく。
猛禽類の誇り〜鋭い嘴で、生きとし生ける動物最大の「急所」〜
目を標的に狙った最初の1撃を繰り出した。
見事に狙い通り成功!!
「グゥワアアアッッツッ〜〜!!!」
熊は吼えた
怒れる……大地を揺らす断末魔の叫び
絶叫
がーーー桜香の攻撃は獣の怒りに完全に火を付ける
凶悪凶暴な性質にスイッチが入った
片手で潰された目を押さえ 凄まじい右手のパンチを繰り出し、パッと柔らかな青みを帯びる薄墨色の羽毛が飛び散る……!
額を掴んでいた桜香に鋭い爪が僅かにかすったのだ。
「桜香ーー!!」
敏捷で賢いオオタカは、狂気に充ち満ちて振り回される、愚鈍な丸太のような毛むくじゃらの腕をかいくぐりヒラリ離脱する。
クマの最悪の特徴ーーー食に関する異様な程の執念深さとしつこさ、後は獲物に対する異常なレベルの性質的ねちっこさである。
獣は”案の定”、自分を攻撃のオオタカを執念深く嫌らしくつけ狙った
ブンッツ!!
剛毛だらけの太い腕が空を切り、巨体事、ドシッと信じられないパワーの体当たりのアタックが同時にかまされる。
ーーーーー完全に狙いすました攻撃
バッッッ……!
……紙一重、玉蘭の薫陶を受けたハンターとして極めて優秀な桜香は身を翻した
がーーー何とか辛くも攻撃をかわしたが、連続して切れ間無く繰り出された2打目でバランスを崩し、とうとう地面に落ちた
こうなったらもう羽根を持つ彼女に勝ち目は無い
訓練されていないのだ
大きく体勢を整え直し、自らゆっくり時間をかけ自力で飛び立つかーーー
両翼でバランスを取り、ジャンプして惨めにバタバタ地面を逃げ惑うかーーー
桜香にとって絶体絶命の危機が迫る
うぉぉぉぉぉっ〜〜〜!!〜〜〜!!
熊は哀れに両羽を広げ落鳥した新たな獲物、美味そうな忌々しい生贄を、唇から涎を垂らし光る暗い眼で睨みつけ勝ち誇る
……狂気
逞しい巨体
もじゃもじゃの毛で被われた太い2本足でガッシと立ち上がり、嬉しげに
ーーー何処までも大きく深く響き渡る勝利の咆哮を放った
”ダーーーンッッ!!”
子龍は、考えるよりも先に体が無意識に動いた。
考えて居たのは、桜香のこと
大切な友達〜愛する友のこと、ただそれだけだった。
自身の安全に関しては一切 頭から消え失せていた。
子龍は瞬間躊躇いも無く、ガシャッツッッ!!
安全装置を解除したハンドガンを空に向けて発砲ーーーー!!
生まれて初めての銃の発砲、誰もが息をのむ。
子龍の動きはよどみが無く滑らかで、美しく洗練されていた。
まるでーーーーダンサーの、訓練され尽くした演劇的肉体表現を
舞いを、美しい時間を 現在 目にしているかのようだった。
そんな驚く大人達をよそに、子龍はしたたかに動くのだ。
次なる手を 次弾を!
何の反応もないグリズリーの足下に向けて威嚇射撃を発射
『チッ……!』
子龍に怒りが生まれた
『……何故逃げない?!』
ガゥンッッ!
ウッソリ立ち上がり、今だ強気で戦闘態勢を取るグリズリーの心臓目がけて子龍は3発の銃弾、必殺弾を躊躇いも無く冷徹に至近距離で撃ち込む。
距離はほんの数m ーーー外しようもない。
しかし、したがって逆に ”熊に巻き付かれたら”、確実に今度は自分が死ぬという、行ったのはそういうレベルの命がけの近接戦闘だった
ドウッと地響きを立てて倒れた巨大グリズリーに子龍はそのまま俊敏に駆け寄ると、ドゥンッッ!!
子龍はとどめの正確なショット、最期の弾を撃った。
子龍は両脚を軽く拡げ腰を少し落とした上で、適度に腕を上げ、射撃時の反動を上手に逃がすよう合理的な肉体・手指のさばき方をとる。
強く指をしっかり〜
けれど手首を柔軟に脱臼など怪我をせぬように、無理なく両手で握りしめたハンドガンを撃つ。
奇妙な落ち着きと共にピタリと、両目と鼻の交点に叩き込む。
誰が見ても、とてもこれが実質、生まれて初めてとは到底思えない攻撃スタイル
「桜香〜〜ーーーーーー〜〜〜〜〜ッッッ!」
グリズリーの激しい返り血を浴びながらーーー!
子龍は息せき切って地面にヘニャリと翼を拡げ だら〜と「これにて閉店ガラガラ」ーーー
草地に疲れ切ってうつぶせている桜香に全力で駆け寄る。




