番外編2 子龍の学生時代の思い出 (16)
語学堪能の子龍は 兄の通訳に時々かり出された
「すまん この通り〜〜!!」
「いいよ、学校の嫌な奴らとつるむのも馬鹿らしいし。
で、なに? どこのパーティー??」
「〜……いや違う、今度はアウトドアなんだよ。
実はさーーー『是非会いたい』って桜香嬢にもお誘いがあってね……」
「???」
子龍はトールでも学年トップクラスの優等生。
が……それが原因、ただでさえも目立つ容姿と相まって嫌われ、子龍を標的にする、憎む敵も事実また多かったのである。
取り巻く男子特有の陰湿さを心配した哲は、外交官特権を生かし、コネを使って弟に本格的な武術インストラクターを複数名付けたのだ。
彼らはある日〜依頼人の哲と生徒である子龍を ”ハンティング”
トール上流階級のたしなみの一つとされる「鹿狩り」に誘った。
限りある自然を守る鹿による食害コントロールも兼ねており、王族も時々は参加するというこの親睦、華やかな社交の1つの手段である。
「ぁーーー……野ウサギぐらいなら何とかなるか?
なぁ〜ーーー桜香行くかぁ??」
子龍の言葉がわかるのか?
止まり木の上で、ふかふかで綺麗な羽毛の桜香は金の目で、キッキと勇ましく鳴いた。
ーーー当日の天気は上々!!
ジャパン古来の匠の技〜玉蘭仕込みの見事な放鷹術、子龍は華麗なストロークで桜香を絶妙なタイミングで空に放した。
ヒュッツ!
あっという間にトップスピードで彼女は大空に駆け上がる。
「今回獲物は鴨類でないから誤射はないだろう……」
念のため 桜香に高性能発信器を付けている。
お陰で今何処にいるか直ぐ最先端機器モニターで確認出来るから自由に出来るのだ。
猛禽類は「迷子の為」というよりも、個体の高額な取引が付き纏うので、オーナーとしてはどうしても誘拐の心配がつきものなのである。
事実玉蘭の仲間内でも、大切な相棒が忽然と専用小屋の鍵を壊されて連れ去られ、ようやく見つかった時は痩せ衰え全身フンとゴミだらけ。
ーーよく生きていたなという悲惨な状態。
どうやら手に負えず、飽きたのかゲージごと捨てられていたところを運よく捜索隊に発見された事件がある。
桜香はジャパン時代でも玉蘭の優秀なペアとして有名人(鳥)。
もしも転売目的で盗難に遭ったら最後、失ったら再び会えるだなんて調子の良い奇跡は全くないだろう。
「オオーーーッ 素晴らしいテクニックですね!!」
「ミスターにこれほど素晴らしいご兄弟がいらっしゃるとは羨ましい!!」
初めて見る奇跡の技、ジャパンの方式は「様式美」ーーー流麗で独特なのだ。
その場にいた紳士は一斉に響めき、大喜びする。
子龍は常に兄の側にいた。
「持ってなさい」
「……??」
一応銃は「護身用」にと ”扱い方も教えられ”
そこそこの威力の弾薬とそれにあったハンドガンを、取りあえずーーーという形で携帯しろと渡されていた。
偶然、それが功を奏する。
子龍が桜香を腕にのせ、狩り場・開けた場所でハンターの大人達と兄の哲の側についていた時。
ーーー突然うっそうとこんもり茂る、少し離れた場所の雑木の下草がガサガサと大きく揺れ、グリズリー
のっそりと熊が現れたのだ。
ザッッザッッザッッザッッッ!!!!
グリズリーは、凄まじい勢いで高速で集団に迫って来た
「逃げろっ桜香!」
バザバサァッ……ッッツッ!
風雲急を告げる状況に、咄嗟に子龍は急いで勢いをつけて放鳥、桜香を自分の元から逃がす。
すると大型獣グリズリーは突如ーーーー何を思ったのか?
クルリと向きを変更、群れの端〜集団からやや離れた場所の哲と子龍、2人目がけて進行方向を変えたのだ。
どうやら野生獣の勘で「コイツらは弱い」
襲う獲物に丁度良いと見えたのかも知れない。
全速力での肉薄は早く、荒ぶる、狂気に満ちた大型の獣が地をゆらし、無防備な人間に到達したのはほんの一瞬のことだった
あっという間ーーーー瞬きした程の短時間ーーー!
ムッとする嫌な鼻をつく匂い
グゥゥゥゥゥゥウ……ッッ
低く喉を鳴らす恐ろしい唸り声、その場のハンター誰も今まで見たことが無い、恐ろしい程 巨大な野生の獣ーーーー!!
ムッとする嫌な鼻をつく匂い
「……〜……〜……!!」
グリズリーは、震えも忘れ、全身金縛り状態の硬直した人間に大きく前腕を振りかぶった。
「やられる!!」 ーーー誰しもそう思った時
ーーーー思いもかけない事が起こった
空高く舞い上がっていた桜香が、グリズリーの目を狙い、頭部目がけて急降下した。
彼女は子龍と哲を守ろうとしたのだ。
弾丸のような凄まじい直滑降、大気を切り伏せ上空高くから飛来する。




