番外編2 子龍の学生時代の思い出 (12)
顔を寄せーーー夜が白みかけるまで沢山の話をした。
幾らでも話せた。
話しても話したりない想い
幸せな記憶
掛け替えのないーーーー 2度と再び無い 時間の共有。
明け方
ーーーー大切な人を
玉蘭の家の車両は既に先に帰してしまって居た為〜
子龍は自家用の完全自動操縦の飛行艇で彼女を送り届けーーーー
空の機内に ”満載”
玉蘭の自宅にて、桜香の細々とした生活全般の装備と備品、餌
後は今までの健康記録〜
貴重な祖父の代から収集して来た猛禽類の研究・学術系論文入りファイルなど
惜しまずーー残らず全てを託された
その後ーーーーーマンション内に帰宅後
フゥッと〜大きく息を吸い、長兄の哲に連絡を入れた。
「こんな朝早くに起こしてごめん」
「でも……なんかあったんだろ? 顔色と〜……声がお前〜変だぞ?」
「うんーーー
『トール』……哲兄の赴任先に、ついていってもいい?……」
「……話を聞こう。
無理せず
……お前のペースで ゆっくりで良いからね?」
子龍と桜香の惑星トール行きが決定した。
「超法規的措置」で、桜香の動物検疫はあっけなく直ぐに通過する。
ーーーーーーーー朝が明け
玉蘭の入院初日の午後。
下校後直接ーーーー
待ちかねたように子龍は見舞いに訪れる。
「へーー! 凄いイイ部屋!!」
「こんな立派な部屋ーーーもう必要ないのに」
子龍は愛しい人のボヤキに ヒョイッと眉を上げた
「ご両親の愛を感じるよ……
だってーーー他の人と同室だったらーーー出来っこないよな?」
ちゅっ♡
優雅に長身を屈め 甘く唇を重ねる。
途端カァァァァッ〜と首筋どころか耳たぶまで紅く染めた玉蘭を、子龍はスルリと隣に腰を寄せ長い腕で優しく体を抱き締める。
病院の介護服に身を包む小さな体はスッポリ腕の中に包まれてしまう。
「……俺が『大人』にしたから
おまえもーーー『俺を』……だろ?
”誕生日おめでとう”
ご両親も含めて、何度でも何回でも、ずっとこの先まで祝おうぜ?
そうだよーー……やり惜しみせずさ〜
なんだったらさ?
来年の分も、再来年のもその先の分も、30歳位まで先取りで、ぜーんぶ祝ってもいいかもな!
毎日スッゲ忙しくて、楽しくなるぜ?
そしたらさ?ーーーンと、プレゼント何がいい?
なんだっていいよ?言ってみ?」
子龍はベッドの端に深く腰掛け直し、大切な人を腕でキュッとくるみながら耳元で甘やかに囁く。
昨夜以降…… 両肩に柔らかく下ろした艶やかな髪を、大切にーーーー
高価なシルクリボンのように 指にクルクル絡める。
玉蘭は子龍の腕の中で、首筋も頬も耳もポーッと紅く染めてジッとしているばかり。
緊張しすぎて体が硬い。
しぅぅぅぅと真っ赤に染まる顔を、とうとう下に向けて俯いてしまう。
「アイシテル」
「・・・・・・」
「俺がどれだけ好きって知らないかも?、愛してるよ玉蘭」
唇でアムッと耳たぶの端を含む
「……〜!!」
「あ〜〜でも同じ言葉で呆れてるか〜……?
んー 何て言ったら喜んでくれるかなァ……?
”コイツつまんない” って〜
鸚鵡みたくおんなじ事ばかり繰り返して言うって、呆れられて〜
『馬鹿だ』ーーーって俺、賢いお前に振られるかもしれない……どうしよう?」
「……」
ちゅ
「どうしよう……? 嫌わないでくれる?俺の事」
「……」
「……〜君だけだよ?玉蘭……
押し倒したいーー……ここに、今すぐ君が欲しい」
「〜……〜……〜……」
「そんな顔で泣くなよ……
そそられちゃって可愛すぎて、ホントにしたくなるだろー?!
冗談冗談ッ! 添い寝だけ!
……だめ?
病人相手にそれ以上は絶対しないから……」
子龍は小さな体を抱き締めたまま フワッツ……
ゆっくり……出来るだけ優しくベッドに倒れ込む。
真横に体を横たえーーーじぃっと涙が浮かぶ瞳を見つめながら
柔らかに……
さらさらする髪を長い指で撫でて手櫛ですく。
「あいしてる玉蘭」
子龍は愛しい人の切ない泣き声を たっぷり優しく柔らかに唇で吸い取った。
玉蘭の入院中の部屋は、マスコミや有名書道家、鷹匠としての彼女や桜香の熱烈ファンからの美しい花々が沢山飾られたーーー
平和で ゆったりホノボノと、大変居心地のよい個室である。
素晴らしい遠くまで一望にて見晴らせる、見事な眺望が窓一杯に広がっている。
因みに子龍は病院内の全身紫外線照射の、厳重な菌を絶対に持ち込まない特殊装置を毎回通って見舞いにやって来ている。
清潔な部屋には子龍が毎日持参の「各年齢 誕生日プレゼント♪」と幸せな色彩の美しい花のアレンジ〜
ハッピーで華やかな揺れるバルーン等の祝い飾りが、至る所に溢れそうにキラキラフワンフワン飾られている。
当然〜
以前撮影した写真館の幸せタップリの映像も、スライドショーですぐ中空に取り出せるように、平面データがロマンティックなピンク色のフレームに収まっている。
「……でもさ、マズイだろ?
いつも思うけど無菌室でなくっていいのか?」
「うん……
意味がーーーー……無いから。
だってスペースも数も限られているの、ああいう大掛かりな設備は。
少しでも生きる可能性のある他の人にって譲った」
「ふーーん……ん、じゃ〜〜心優しい女の子に
『魔法使い』はーーー
とびきりの魔法をかけました〜〜〜……っとさ!
えいっーーーーーー!!」
子龍は小さな電子機器をピピッと操作。
「うわぁ〜!」
……突如 病室内部〜
ホログラムの、超リアルテイストのライブ中継映像がいきなり出現したのだ。
玉蘭は絶句する。
部屋の中空〜そこには入院以後は、2度とリアルに会えないと思っていたオオタカ桜香の愛おしい、今現在の姿があったのだ。
「ぁのさ…… ”向こう” ーーーー桜香側からも見えるんだ」
「!!」
「桜香も嬉しくって、懐かしいんじゃないかな?
”鳥類の視覚” でも、ホロが有効らしい特殊設定がしてあるんだよ。
なんでも、哲兄の大学の、動物行動心理学の研究のラボにいる後輩〜
友達がさーーー…?
ゼミで『新しく開発』したんだってさ?
だってさーーーーお前の『彼女』連れてこられないだろ?
いっくらなんでも病室にさ……
理由を話したら『そういう事なら……!』って、データ取りと臨床実験もかねて、こんな風に俺達に協力してくれたんだーー♪」
「!!」
「では先取り〜 本日目出度く、二十歳のお誕生日オメデトウ!!玉蘭」
ワンワン激しく泣きじゃくる恋人を抱き締めて、腕の中に閉じ込めトントンと優しく背中をタップ、子龍は甘く優しく囁いた。
映像でも、久し振りに会う信頼する「配偶者」〜玉蘭の姿に。
桜香も懐かしげに幾度も嬉しそうに止まり木をトタトタ行ったり来たりで歩き回り、気分が高まったのか、見事な素晴らしい翼でパタパタ大きく羽ばたきもして見せた。
美しい輝く日々はあっと言う間に過ぎ去り
とうとう、子龍がジャパンを離れ渡航する日が訪れる。




