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番外編2 子龍の学生時代の思い出 (11)


「まぁ……!それはなんて素晴らしい素敵なことでしょう……!」


見るからに初々し過ぎるカップルに周囲は温かく優しく接してくれた。



子龍は「新郎用スーツ」を幾種類かビシッと決め、映像撮影の為、珍しい鮮やかな色彩でドレスアップした玉蘭の側に立つ。


既に背のスッと高い彼は、大人物の衣類が無理なくハマりにはまるのである。


「……その……ぁの子龍君……って……」

「?……」


「……っ……」


手際よく衣装チェンジする度の、子龍をチラッと見ただけで……!


玉蘭は何故か、耳まで真っ赤になってその都度顔を伏せてしまい〜だから撮影は無理せずゆったり、穏やかに進むことになる。


子龍はそのユルユルした時間が全然苦にならず。

寧ろ〜ウキウキと

『もっともっと長く続けばなぁ……』内心とても残念に思う。


ーー自分と玉蘭とーーーーー

2人の真ん中には、軸を伸ばした移動式簡易止まり木にチョコンと神妙で真面目な顔でお澄ましする大人しい桜香が居る。


そんなこんなで、とにかく撮影は物凄く楽しかった。



子龍は時々甘やかに玉蘭を思いを込めて抱き締めたり、キュッとお互いの指を絡めたり……!


〜或いは跪いて、玉蘭の顔を下から見上げ〜


「”プロポーズ” するキメのポーズをしてください♡」


カメラマンの指示通りつけたりし、玉蘭を益々紅く真っ赤に恥ずかしがらせる。



「桜香さんの為に負担のかかりそうなフラッシュは止めましょうね!」との〜


動物に詳しい大変気の利く店主の発案で、たっぷりの自然光を生かしたナチュラルでロマンティックな記念撮影!


子龍だけで無く、玉蘭も店内にある素晴らしいウェディングドレスはもとより、様々なカラードレスに白無垢まで店側のご厚意で沢山着せて貰った。


それぞれのドレスにピッタリ合う華やかなメイクやティアラ等のアクセサリーも毎回丸ごとチェンジ。


玉蘭は次第に撮影が進むにつれ、どんどん眩しい程美しく光り輝いてゆくのだ。


その為に、今度は子龍の方が反対に、目のやり場にオロオロ困ってしまって〜


『ぉいぉいどうしよう……!』 うわうわうわうわ〜と、本気で悩んでしまう。



打ち掛けは重量のある鬘《カツラ》と簪《カンザシ》で病がある頭部に負担がかかりそうで、流石に止めにした



玉蘭はいつも「そんな素敵なドレスを〜〜!」 モジモジイヤイヤと真っ赤になって恥ずかしがったが……


そんな無垢な彼女は可憐で初々しくて……


撮影最後まで、周囲は和やかな幸せで。


二人と一羽の、特別なホログラム記念撮影会は、さんざめく甘い空気に包まれ終了する。


ーーー奇跡の様な幸せすぎる時間だった。





子龍の自宅の帰宅後のーーー広々としたダイニング。

 


大きなテーブルには豪華な誕生日料理の〜残り香。


出張した〜

腕利きの某有名レストランのコック長が腕によりをかけてこしらえ造りあげた、思わず舌が蕩けそうな贅沢な逸品の数々。


子龍の特別注文で、ちょうど撮影会の時間に前もってあらかじめ火入れされてジックリ冷却〜

肉汁が食べごろに落ち着かされ用意されていた、グレービーソースのたっぷりかかった、ピンク色の赤身が美しいローストビーフの残骸。


付け合わせのクリーミーな白いポテト。



季節の色とりどりのフルーツがのせられた、ホール丸ままのカラフルなケーキの、大振りにザクザク贅沢にナイフで切り分けられた跡。



甘いソフトドリンクのグラス

色鮮やかなノンアルコールの祝いのカクテル



アイスクリーム用の透き通った台付のガラスの器

ーーー今は空っぽ。

 

 

2人の過ごした

〜幸せな時間を物語る 美味しいものたち。



 

……微かな声

子龍の広い部屋。


ガランと無機質すぎて凍えるような人気の無さが冷え冷えする最上階〜

殺伐とする子龍の自宅内で


唯一そこだけが柔らかな、人の優しい気配がする温かな空間。





「ーーーー家で、取り扱いが難しすぎて。


繊細な桜香の世話が出来る人はいないのーーー」



「俺がずっと、彼女の生涯の面倒見るから。

お前 つまんない事心配するな、そんなんより 充分体いたわれよ?」



「でもーーー……迷惑じゃーーー…… あっっ……」



「なんで迷惑なんだよ」




子龍と玉蘭は一生分の想いを交わした。

 



思い残すことがないように……


辛い後悔を残さぬように……


相手をーーー忘れないように……



この一瞬 一分一秒が


自分達の永遠〜……に……変換されるように……



「会うのーー……もうやめよう……?


自分の死にゆく変わり果てる姿を


私……子龍くんに〜……あなたに見せたくないの


野生の動物は皆そうだよ?」



『……!! そんなの嫌だ!!』


「ーーーーー決めたのか?」



『ーーーやめてくれっ!

玉蘭、何いってんだ冗談じゃないッ』



「うん……ごめん子龍くん」

「そっか」


 

『イヤだ!

最期までお前の側にいたい!』


「わかった、玉蘭」



子龍は辛うじてグッと堪えた。


玉蘭のプライド、最後の矜持を


愛する彼女の……最期のダンディズムを叶えてやろうと思ったのだ。


子龍はそこまで彼女の心情を、我が事のように深く理解していた。



「ーーーでも少し時間をくれよ」


「いいよ」

 

「ーーーありがとな」

 

「……こっちこそ……子龍くん」


「……ははっ もぅ『くん』は要らないよ……頑張ったな?」


「……優しかったよ?……すごく……」


「今度は、玉蘭の番だな?」

「?……」

 

「男ばっかり楽しむ……ってこういう時不公平だろ?

俺にも尽くさせろよ〜 ”お前” に……」


子龍は腕の中の優しい白い体をギュッと抱き締め、甘い甘い背骨までとろけるキスを贈るのだ。

 


『俺を忘れないで……』 涙の味がした。



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