終章 ③
信繁が今は亡き、父から聞いた、某超大国に伝わる伝説ではーーーーー
月には『嫦娥』という伝説の女神が住んでいると聞かされていた。
美しい満月の夜。
細かい作法に則り、月にお供え物の団子を捧げると。
『七夕伝説』の様に女神が月から降臨し、地球に住む、彼女の愛しい相手と、なんと再び巡り会ったのだそう。
信繁はーーーー中秋の名月が……
眩しいほどに艶やかに光り輝く 聖なる月の女神に見守られた、2人だけの神聖な「誓いの言葉」を思い出し、急激に物狂おしい気持ちに掻き乱される。
〜あのなぁ……
女性の喜ぶ言葉言葉って男はやたら騒ぐけどさ、言葉って、言われた後から思い出して グッとくるもんだろ?
だったら今お前が1番伝えたい言葉を、きちんと目を見て正直に伝えればそれでいいんじゃないのか?〜
信繁はそんな自分の持論を思い出し、心が熱く震えるほどに急速に胸が詰まり、堪らずに深く大きなため息を吐く。
そうだ、その通り〜 時を経てこそ後から思い出し、切なく甘やかに苦しい。
確かに辛いが反面、同時にこの世の事柄とは思えない程の多幸感に包み込まれ、幸福で温かな気持ちにも満たされるのだ。
わかっているーーーーそれは、なぜならばーーーー
言葉には神聖な言霊が、尊い精霊が人知れずひっそりと宿っているのだから。
「月が綺麗ですね。
私の護衛官として、トールに私と、一緒に来ていただけないでしょうか?」
「フレイヤ王女様は、あの清らかな月のようですね。
今夜はとても素晴らしく、月が綺麗ですね。
……私もそう思います。
この先もしも、この世で本当に貴女が一人ぼっち……
自ら命を絶ちたくなる程に辛く悲しい、耐えられないと感じることがございましたら……」
「私の為に 生きて下さい」
「誓います」
<〜フレイヤ王女編〜 終>




