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信繁との諍い


『僕の方こそーーー好奇心に駆られて、本当は言いたくない辛い事〜


悲しいーーーー……

思い出したく無いに決まってる記憶をほじくり出して無理に言わせてーーー……


無遠慮に亡くなられた大切な妹さんの事と、ご家族のご不幸を急に思い出させて


でもって

勝手にーーーー

情けなく急にパニックになってしまって!


酷い心配をかけてしまって申し訳なかったのに


ーーーーーーごめんなさい


本当に ごめんなさい!!』


慌ててーーーーオロオロ信繁に謝罪した。



「こちらこそ済みませんでした。

〜っっそんなこと気にしないで下さい。


元々 夫として〜王太子として正確な事実を知って、妻の死は厳粛に受け入れなくてはいけない事です」



信繁は小さいが深くフーーーッっと溜息をついた


「失礼します」



そう断りチェアに再び〜〜音を立てずに座ると真正面から、茶色の瞳で彼の顔を見返してきた。


じっーーーっと、心の中まで見抜くような視線だった。


今までとは違う真剣な目の輝き



どこか雰囲気が違う



「ーーー何でしょうか?」



クリストファーは怪訝な声で訪ねた。


強いーーぎらっと眼光を放つ視線に怯みそうになったが何とか耐えた。



「悲しい時はーーーー

悲しいと言った方が後々引きずらない


無理をするな」




クリストファーの目の奥をのぞき込みながら信繁はそうハッキリ言い切った。




「自分達は身分の差こそあれ、最終的には誰かと戦う戦士の立場だ」


 「……」


「その肝心な時に、心がいっちゃってたら持ちこたえられない。


絶対踏ん張らなくてはいけない時に、ポキンと折れてしまう。


だから

ーーー悲しみは

その都度上手に逃がし解消しないと生き残れないぞ」




クリストファーは少し押し黙り、静かな沈黙が2人の間に流れた。


「それは・・・・・どういう意味ですか?」


「言ったとおりの意味です」


「自分にそれをしろと?」


「ええ そうです」


「自分を晒すーーーみっともなさを 他人に明らかにさせろという事ですか?」


「そうですーーーー出来ませんか?」


「それは経験則ですか?」



少しむっとして、あえて挑発的で皮肉な言い方で信繁に聞いた。



信繁は全く表情を変えない。


心理作戦にーーーー ”乗ってこなかった”



つまりーーーー……”言い分”を変えなかった。


そこには鉄の意志が存在した。



妥協を頑として許さない、一歩も引かない


特殊部隊精鋭班を率いる信繁の班長の貌があった




信繁は静かな声で言う


「質問に質問で返すというのはーーー貴方に自信が無いせいですか?」



「……!」


「そうだ

俺は無理を承知で言っている」




思わずカチンと頭にきた。

それはクリティカルヒット、図星だったからだ




「僕はこれでも、様々に努力してきました。


出来の良い貴方にはわからないかも知れませんが?


もうこれ以上 ーーー頑張れません」


 


「それでもです」



信繁の顔は真剣で真面目、”言い分”を自分は固くなまでに変える気がない。


ーーーそんな瞳の色を放っている。



「〜〜!!」


怒れるクリストファーと信繁の視線が激突した。



信繁の声のトーンにも昏い〜強い熱が籠もる。


ーーーー圧倒的な迫力だった


全身から放たれる凄まじい威圧感。




「それでも頑張っていただきます」


 

貴方に…






ーーーーー貴方に何が判る




たった1人




唯1人で



惨めにオメオメと

この世に生き残ってしまった僕の気持ちーーーーーが




多くの人を犠牲にしてここにいる 僕の気持ちが!!



血みどろの

大切な掛け替えのない人々の数多の骸の上に立つしかない今後の人生が!



呪われた一生

 

愛する父もーーーーもう……認めたくは無いけれど

余命幾ばくも無い。

 

僕は知ってる。



皆隠してるけれども……父様はもう、”後半年も持たない”だろうって


よく生きても1年だって〜


王宮の優秀な医師団がーーーーー……泣き崩れる母様に告知したのを


コッソリ……


僕しか知らない秘密の伝令管を操作して、密かに隣部屋で全部聞いていたから間違いが無い。


自分の側に最愛の妻キャシーも


子ども時代のーーー全てを捧げた親友ウィンストンも既にいない。



自分は1人なのだ


味方は誰も居ないのだ。




『貴方に何がわかる』

 


王太子の怒りに燃える薄い菫色の瞳は雄弁だった



「・・・・・・・・・・・・」


信繁は何も言わなかった




がーーーーーーー




ーーー『そうです…か』

 

 



明るいブラウンの瞳はハッキリ彼に返していた



『自分は悪くない!!』



自分は正しい

絶対に!!



ーーーが しかし…




一旦、わかり合えたーー!


「心が通じ合えた」と思えた相手に 拒絶ーーー!




好ましく〜好意を感じた人物の、”先方が無償の気持ちで差し伸べる手を”


ーーー自らハッキリ バッ!と振り払った事で



相手に『失望』されたのが



ガッカリされた事がーーーー


これほど心に突き刺さり、辛いと言う事をクリストファーは この日初めて知った。



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