月光 ③
信繁班のメンバーは、てんでに口々に、この意地っ張りの融通が効かない自分達の誇る、自慢の大切なリーダーをこんな風に全力応援する。
「何やってんですか??」
「意地張るのも大概にしないと?」
「ラン背負った、小坊ですかい?」
「ほら行けよ!!」
子龍は さり気なく
ーーーー護衛官達に思惑が読み取られないよう、彼らにひょいと背を向けた。
そして大切な親友の側に寄るとーーーーー
「チャンスの女神にはなぁ、前髪しか無いんだぞ、後は見事にツルッパゲ、一筋も髪はねーーーぜ?
意味わかるな?? オマエだったらーーー」
絶対に信繁にしか聞こえない小声と角度で ボソッと囁く。
「・・・・・・・・・」
班員メンバー達は、全員さり気なく視線をそらせ、ここでも見事なチームプレーが発揮される。
班長と王女だけになれるようーーーーー
基地の他の職員から視界を遮る目隠し、高身長揃いの人垣で実に上手く壁をつくるのだ。
170〜180cm台の鍛え上げられた、しかも嵩張るフル装備の複数の男達がそうすれば
ーーーー普通は視界が遮られる。
彼等はそれを よく知っていた。
「信繁様ーーー」
フレイヤは
ーーーー口に出したらダメだとわかっていても。
お互いの立場を考えると、絶対に叶うはずも無いとーーー
理解出来ていても。
それでも信繁に、心から言わずにいられなかった。
『ツキが明るいわ・・・・・・!』
フレイヤは文学好きの医療スタッフから、地球から観測可能な星々の神話や面白い逸話を聞いていた。
地球を周回する輝く美しい星ーーーー衛星「ツキ」
連邦英語では「ムーン」、あるいは他言語風にお洒落に「ルナ」
この星には様々な、ムーンを巡るロマンティックな逸話がある事を。
ムーンは「月」とジャパンの言語では書き記される。
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「お姫様。
『月が綺麗ですね』という言葉はジャパンでは もう1つ、実は恋人同士の符牒『秘密の意味がある』んですよっっ?」
「〜もぅ、別にそうとは限らないでしょ? やっぱり感覚若いわね、あなた達は」
「?????」
城2人の医療スタッフからフレイヤは、ジャパンの古い「愛の告白」だと教えて貰っていた。
「よくそんな事知ってたわね?古い私の世代ならともかく。
ーーーー貴女の年齢で珍しいわよ?」
「え〜〜〜? 学校の漱石の授業で必ず小話として習いません??」
「そうだっけーーー??」
「うん、そうですよ!絶対。
ぁーーーでもでも、私の中学の国語の先生が単に相当な文学マニアなだけだったかもーーー?
自分の授業で寝る子が居ないように、思い出すといつも工夫してたからー」
「ふーん、いい先生じゃない」
「えぇ!! この話の時、クラス中でキャァキャァ〜大騒ぎでしたよっっつ!
だってーーー!!こう言えば。
五月蠅い親が聞いてもまず意味分かんないから反対しないしー?
『お付き合いしてるの??』とか、言われないのよね〜〜
堂々と、熱愛してつき合ってる彼氏に、自分からも愛してるって言えますし!!
照れ屋の彼氏にもーーー甘く情熱的に溺愛して言ってもらえるし?!
本当に良い事ずくめじゃないですかぁ〜先輩♪」
「〜〜〜〜そうなの??」
「うん。
あーーーーそういえば
『最近やたらうちの子、月が綺麗って、凄くロマンティックな事言うけれど、あのがさつな子が一体全体どうしちゃったのかしら?ホント変よねぇ』
彼氏持ちの子の親達が皆首を傾げ、?て言ってるってのを聞いた時、クラスの皆で大爆笑したの。
やっぱり『知は力』よ、〜〜〜ね♪〜先輩〜♡」
「大人をからかうだなんて、ホントわっるい子達ねぇーーー」
ヤレヤレと苦笑した側と、反対にピッカピカの明るい表情でクスクス笑った側の対比が微笑ましく、今でもフレッシュに鮮烈に記憶に残っている。
〜月が綺麗ですね〜
「なんてロマンティックな言い回しかしら?!」
フレイヤはウットリ、心をときめかしたのだ。
そんな事をフレイヤが思い起こしていれば、白く柔らかく天空にかかる月の光が今にも泣き出しそうな表情を甘やかに静かに照らしている。
だからーーー光輝く衛星、月の女神に勇気をもらった。
モジモジ尻込もうとする恥ずかしがる臆病さを必死に振り払い、ありったけの気力を振り絞って自分からの女性からの告白を信繁に行った。




