月光 ①
フナバシ シティ~ ナラシノ シティー間に、ジャパン政府の誇る 広大な平和維持の為の防衛施設群が建設されている。
本部はフナバシ側、小規模ながら地球最先端設備が完備されたロケット・シャトル発射施設はナラシノ側である。
小規模といえども、きちんとした手入れの行き届くスペースシャトル発射台を備えたかなり背の高い巨大施設である。
施設は演習地の かなり端に設置されている。
理由は幅広く敷地を隈無く使用する際に、演習時に視界が遮られないよう、事故防止の為、そう地理的にレイアウトされたのである。
「ナラシノのあそこに行けって、通達がありました!」
「わかった 雅」
信繁班のヘリに、本部のあるフナバシから直接、極秘回線から指示が送られてきた。
「当然だな。」
「あぁ、こーも次々に暗殺者が現れたらしょーーーーが無いよなーーー
『知らぬ存ぜぬ』はもう通りっこないし、そりゃー国防も焦るだろう?」
子龍の言に信繁は深く頷くと、再び超低空飛行操縦に集中力を戻すのだ。
間髪を入れず行われた2度にわたる、暗殺未遂という極めて緊迫した状況。
これにより、直ぐにフレイヤ王女様を直接お連れし、ナラシノのスペースシャトル発射施設に出来るだけ素早く、高速飛行で向かうよう伝達があったのだ。
「とにかくフレイヤ王女様のお命とお体ーーー
そして玉体に宿る お子様の生命の無事が最優先とする」
ーーー特例でその様に内閣府で決定したのだ。
「おい?」
「〜なんだ?」
「いいのか?? このままで?」
「ーーーなにが?」
「惚けるなよ〜ッチ、信繁ーーー」
隣のバディの素っ気ない態度に子龍は舌打ちする。
『こぉんの馬鹿っーーーー 一体何考えてるんだよ?
告白も話し合いも、今しか無いぞ? コノヤローーーー!!
惑星トールがドンだけ地球から離れた遠方か、マジで解ってんのかよーーー?
まして王室に入ってしまったらーーーー
一般人は個人的に2度と会えねーんだぞ? オイコラ!!
その事オマエ 知らないはずじゃねーだろっっつ!?』
ーーーーー子龍は心の中で信繁に散々に毒づく。
雅は後方から、そんな2人をハラハラして見つめていたのだが、肝心の敬愛するリーダーはちっともフレイヤ姫に対して自発的に動こうとしないのである。
信繁は、そんなやり取りの中でも変わらず冷静な対応、見事な平常心でヘリを飛ばし、発射台施設に設置されたヘリポートに到着してしまう。
的確な目視でヘリの高度を整え、無意味なグズグズするホバリングをする事無くそれどころか 羽毛の如しにフワリとヘリを地上に降ろすのだ。
綿菓子の上に触れるかの様にピタリと ヘリポートのマーク内部に着地、これもフレイヤの想像以上の抜群な飛行テクニックである。
「今からきっと 国防から経緯の問い合わせがあるだろう。
聞き取り行為は必ず長時間かかる、エンジン切るぞ?」
「だ〜〜〜〜!! けったくそわり〜なぁ! りょーーーーかい、機長さん。」
着陸後、信繁は、ヘリの冷気運転に入る。
これは 着陸後も暫く緩くエンジンを回し、ある1定の温度以下になったら そこでやっとエンジンを停止させる手法である。
メインローターはとにかく重いので別個で専門の停止装置、ローターブレーキをかけるのだ。
勿論、ほおっておいても いつかはヒュンヒュン回るブレードは止まるが、信繁は こういう事ほど基礎基本に忠実に、丁寧に学んだ通りに機を操作していた。
ヘリポートには、国防軍から派遣された少数精鋭の医療班と護衛官達が、既に先に到着、全ての準備を整えた上で待機している。
ヘリポートに着陸した、実験機ーーーーー
特殊ヘリの巨大ローターが滑らかに静かに止まりつつある。
「着きましたよ フレイヤ王女様」
「・・・・・・・・・」
「もう大丈夫ですよ?」
「〜〜〜〜〜〜」
別れを惜しみーーー
どうやら胸がいっぱいらしき、少しも返事をしない相手に対し、それでも奇妙に明るい声色で信繁は語りかける。
『コイツって〜〜〜〜〜!!』
流石に子龍は 親友の本音を隠し偽物の仮面を被った煮え切らない態度に、つい イラッとムカついてしまう。
とにかく信繁率いる、城 特殊部隊所属・信繁班の、フレイヤ王女に対する護衛任務はここまでだった。
月の光が奇妙なまでに煌々と明るい、そんな夜の事である。
眩い月光に照らされて、フレイヤ王女の搭乗手続きや、身体の移動は迅速にテキパキと行われ、全ては滞りなく進行している。
華やかな宇宙空港ではないので無骨一辺倒、煌びやかな華美な装飾、無駄な仕組みは少しもなく、全部がモロ出しで剥き出しのほぼ屋外同然の場所で。
〜もしもの事ーーーーー!!
警備の厳しいジャパン防衛施設内とはいえ 3度目の攻撃、または狙撃の心配が絶対に無いとは言えない為、サッサとーーーー
異様な程に無駄のない作業は当然と言えば当然だった。
「そっちいい?」
「オッケーです!!」
「せーの!!」
揃えたかけ声と共に、医療班がフレイヤ王女を、身籠る肉体への負担が少量の無重力ストレッチャーに乗せ上げ運ぶ。
発射施設に準備された シャトル搭乗の為の防弾エレベーター内に無重力ストレッチャーを搬入
ーーーという グッドタイミング
そんなーーーー今正に!!ーーーだった。
「あのう?」 おずおずと 小さな優しげな声がした。
見るからに若く、しかも「かわゆい系童顔」の彼は、言うまでもなく信繁班の中で、最も年齢が若い、最年少の男の子。
医療班に問いかける小声の主は雅である。




