脱出 ④
「信繁さん! かなり危険です!
実験機、ここまで酷使した事ーーー僕 ありませんよっ!!
本気で今回マズイです!」
「頼む雅、何とか調整してくれ!」
「〜〜〜〜〜ハイ!!」
ヘッドセットを付けた信繁は指示を飛ばす。
睨み付ける眼で、今にも墜落しそうな危険すれすれの状態に耐えながら、樹木や地表との激突を避ける為に集中を切らさず 操縦桿を長時間握りしめ、低空を責めに責め、正確に見事なテクニックで操縦し続けた。
「オイオイ、もうヘリ限界ギリギリだぞ! 機が弾けるぞ テメーッ!」
「大丈夫、まだ辛うじて余力が有る! 兎に角、間に合わせろ!!」
「アッチ到着出来たって現場から脱出、出来なくなるだろ?」
「子龍、今はいい! そんな事は後から考えろ!!」
「へーーーおもしれー
『安全第一』ーーーの優等生のお前が一体全体、どうしちゃったんだよ?!」
子龍は尚もブツブツ怒りながら呆れて呟く。
「・・・・・・・・・」
「ーーーーーっチッ、わかったよ信繁、一点貸しだかんな〜〜〜!
この借りは高いぜチックショーッ!!」
「ーーーーーー」
何も答えなくなった機長に子龍はふぅ〜〜〜と、ヒョイッと肩をすくめる。
実際、彼にしてみれば、自身のバディのここまで切羽詰まった表情を 未だかつて見たことが無かった。
「ーーーーだーーーーー、けどい〜〜〜〜か?信繁ぇ??
実験機堕としたら、天才瑠架様に頭からボリボリ喰われっぞ?わかってんな?」
「〜〜〜すまん」
「いいって、しゃーーーない、丸ごと骨までアイツに喰われちまえーーー!」
こうして信繁は、普段だったら有り得ない超絶テクニックをフルに使いこなし信繁班・班員総力戦。
神経をすり減らすようにして持てる技術の限りを尽くして夕方の夜陰に紛れ〜
一路トワイライトタイムの有視界飛行の危険な状態をものともせず、ハネダ宇宙空港まで強引にヘリを駆り押し立てて、無理やりに飛ばせてきたのである。
武装戦闘艇が特別室防弾ガラスを攻撃直前、ほぼ同時に光学迷彩搭載ヘリ〜「実験機」に搭乗の信繁班もホテル最上階・特別室上空に到着。
迷わず ホテル屋上、ヘリポート制圧に挑んだ。
「子龍!!」
「おうよーーーー任せとけーーーッッ『機長さん』」
他の班員と操縦席副機長役を交代した子龍は、地表上空1000メーター越えの空中、今夜に限って妙に明るい月明かりに照らされ天空の中でニヤッと笑う
チャッッツーー!!
頑丈な特殊繊維製とはいえハーネス〜命綱1本で、子龍は恐れも無くガラリと開け放ったスライドドアから、ヒョイッと軽々暗い空中に身を乗り出すと、ガッシリ愛用の狙撃銃を事も投げに構える。
銃にセットの暗視カメラが 目標を正確に捉える。
「ぁー今夜ちょっと月が明るすぎるな、しゃーねーカメラ機能切るかーーー
ああこっちの方がずっと良しーーーうん良い感じだ!!
ーーー今夜もバッチリ目標物が見えるぜ!!」
「子龍さん、気をつけて下さいね!!」
「おう雅!!
〜後でお前のバッハのシンフォニア、ごほーびで聞かせてくれよ!」
相変わらすの軽口を最後に叩くと、すぅっと自分の世界に入り集中。
スラリとした身体を頑丈な命綱で括っているとはいえ、まさに命懸けの状態。
『God …… bless…… you……』
子龍は狙撃時、必ず唱える決まり文句を口ずさむ。
元々相手のくしゃみの後に唱える表現、気遣いの言葉だが、トリガーを引くタイミングを正確に1、2、3〜で合わせる事と、自身の精神統一に利用している。
子龍の精神がピンと白く研ぎ澄まされ、体全身が巨大な眼に変貌する。
『”お大事に” ……ーーーな?
ーーー神の祝福が、荒くれのお前等にも、あらん事を……』
God bless ーーーー
『 You !! 』
バシッツ! バシッツ! バシッツ!
「ーーー生かしておけよ?」
「はぁ信繁? 俺様を誰だと思ってんだ?」




